十一杯目 意外な好み

「じゃあ、レドさんの分は買わなくて大丈夫ですね!お気遣いしてもらっちゃってすみません。」


「いいんだよ…それより、他の好きな作家さんを教えてくれないか?」


「えーと…他には…アリス・メイソンさんとか?最近だとライトノベルとかも読んでます!誰がお気に入りっていうよりもジャンルが好きですね!」


意外にも、サヤはライトノベルが好きらしい。

レドにとっては未知の分野である。


「そうなのか…!ライトノベルって読んだことないな…やっぱり流行りの長文タイトル系?」


「長文タイトルも読みますね!最近は色々なものが書籍化されてるので、読むのが大変ですよ~。」


「サヤ…は自分で書いたりしないのか?」


「え…えと…私は文法とか何も勉強してこなかったので、書いたことは…って感じです。興味はあるんですけど…」


俺が教えるよ。そう言いたかったが、さすがに踏み込みすぎかと思いやめてしまった。


(レドさんに教えてもらいたいな…そうしたら楽しいし、ご褒美だし…)


(教えるよ。は気持ち悪いよな…俺にとっては楽しい時間でも、サヤさんからしたら違うだろうし…)


少し無言が続き、気まずい空気…

そこでレドは腕時計を確認し、今の時刻を確認。よくあるやり口だ。


「あの…そろそろお昼にしないか?今は11時…12時はピークになるし、早めに食べてもいいと思うんだが…」


「そうですね!どこで食べますか?」


「少し、人通りが少ない方へ行くか。ここだとどこの店もいっぱいだろうし…どこかいい店知ってないか?」


「いつものカフェにしませんか?あそこなら落ち着きますし!まだピーク前ですから、ちょうどいいですよ~。」


サヤは店員のため、あの店についてはかなり詳しいだろう。

レドもそれに賛同して、いつものカフェに行くことになった。


「こういうとき、店員やってるといいですよね!空いてる時間帯とかわかるので、いっぱい楽しめます!」


「そうだな…改めて、いつもありがとう。美味しいコーヒーを煎れてくれて。執筆活動も捗る、魔法の飲み物だ。」


「えへへ…なんか照れますね…こちらこそ、いつも来てくださってありがとうございます!」


二人でほっこりしていると、すぐにカフェへ着いてしまった。

少し名残惜しかったが、中へ入ると…


「サヤちゃん…何でそいつと…!?」


ちょっと迷惑な常連客と鉢合わせてしまった。


「あ…今一緒にお出かけしてて!本屋とか一緒に行ってもらったんです!いい作家さんとか教えてもらって…」


「それってデート…だよね…?」


かなりショックなご様子。どちらが落とすかという話をしたぐらいだ。

サヤに本気だったのだろう…


「そっか…でも、ファンは辞めないからね!それに、お前も…サヤちゃん幸せにしてやれよ!くぅっ…」


そう言うと、常連の男は店をあとにした…

二人はちょっと…いや、かなり気まずい。これでは、付き合ってません。なんて言えない。


「と…とりあえず座りましょう!あの方の話は後で…」


「そ…そうだな…いつもの席、空いてるか?」


「あ、空いてますよ~!座りましょうか。」


二人は席に座って、メニューに目を通す。

といっても、サヤはメニューを覚えているが…


「あ、このボロネーゼおすすめですよ~。うちのシェフ、すごいので!」


「そうなのか。なら俺はこれにする。サヤはどうする?」


「私はパンケーキって決めてるので!ここの使ってるクリーム美味しいんですよ~…」


ということで注文を済ませ、待ち時間になった。


(何話そうかな…やっぱりレベッカ・ドレイクさんの話したいな!)


「あの、レドさん。ドレイクさんってどんな方ですか?」


「えーと…ドレイクは遊び人だな。悪い意味じゃないが…1つのことに夢中になると、それしか考えないタイプだ。好きな人ができたら、その人のことしか考えないような奴だよ…」


本人にどんな人か聞いても、返答に困るだけ。

なんとか言葉を絞りだしたが、苦しい状況。

そこへ…


「お待たせいたしました、ボロネーゼとパンケーキです~。」


「ありがとうございます。では、いただきます!」


「俺も、いただきます…」


二人は食事を始めた…

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