七杯目 デートのお誘い

「レドさん、せっかくだし食べちゃいましょう?」


「そうだな…その前に、食器がいる。とってきてもらってもいいか?」


「はい!ただいま持ってきますね~。」


厨房から食器を持ってきて、いざ食事タイム。

誰もいないので、貸し切った様な雰囲気。


一口ケーキを食べると、二人は顔を合わせ…


「レ…レドさん…これ…」


「とんでもなく美味い…!」


「ですよね!店長…いいもの買ってきてくれてありがとうございます…!」


あまりの美味しさに、二人は一度も手を止めずに、ケーキを食べきってしまった。


「いやぁ…もう一個…とは言わず、三個食べたいです…」


「サヤさん、欲張りすぎ…まぁ、俺も同じだが。」


「うふふ…一緒ですね~。ところでレドさん、お願いがあるんですけど…」


レドの方へ顔を近づけ、こう囁いた。


「明日、私とデートしてくれませんか…?」


「冗談ですよね?」


「本気ですよ。どこで、何しても構いません。あっ…えっちなことは駄目ですからね!?」


レドの頭はパニックである。

なぜ自分と?また男たらしが発動中?でも顔が少し赤いような…

しかし、彼はまた自分の内側を隠してしまう。


「サヤさん、男性で遊ぶのもほどほどにした方がいいぞ?また痛い目に…」


「本気なんです…」


ボソッと、本音を呟いた。


「え?今なんて…」


「何でもないです…!そ・れ・よ・り、デートはどうですか?予定があるなら諦めますけど…」


「明日は空いてるよ。君さえよかったら、行ってくれないかい?」


「私が誘ったんですよ?いいに決まってるじゃないですか!明日、このカフェに六時半集合でお願いします。では、お客様がいらっしゃったので…」


お客が入ってきたので、サヤは接客に戻っていった。

レドは頭を抱える。


(くそっ…男の遊び方がうますぎる…!わかっているのに、ドキドキするのが悔しいな…こっちもドキドキさせてやりたいもんだ。)


もう十分させているぞ…?鈍感とは恐ろしいものだ。


「サヤちゃん、そろそろデート行こうよ~?」


「私、デートまでは行きませんよ。本命の人以外は!」


わざと、レドに聞こえるよう大きめの声で言った。


「えー、そんなこと言わずにさぁ…接客だと思って!」


「サヤさん、ブラックコーヒーおかわり。」


「あ、レドさん!ただいまお持ちいたします~!」


レドが助け船を出してくれたため、その客からは逃れられた。


(レドさん…本当かっこいいな…いつも紳士に助けてくれる、優しい人…惚れてる女の子、いっぱいいるんだろうな…)


そんなことを考えながらコーヒーを煎れて、レドの元へ持っていった。


「レドさん、さっきはありがとうございました。ちょっと絡んでくる人なので、困ってたんです。悪い人じゃないんですけどね…」


「俺はおかわりを頼んだ。それだけだよ。」


またも、レドは紳士的に対応してくれた。

胸がぽかぽかと暖かくなる感覚を覚え…


「えへへ…」


自然と笑顔になってしまった。

それは、レドもつられて笑ってしまうほどいい笑顔だった。


「その顔を見せるのは初めてだ。なんだか…安心したような顔。」


「レドさんといるからじゃないですか?レドさんと一緒だと、胸が暖かい感覚になって…元気が出るんですよ!」


「…俺も同じだよ、サヤさん…」


お互いが初めて本音を出せた瞬間だった。

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