第7話 ギャルはラインでオッサンをからかいたい①
勢いとはいえ、会ったばかりの女の子にアンスコ※をプレゼントしてしまった。何やってんだ、俺は……。
自宅の湯船に口まで浸かってブクブクと泡を立てる。
(※アンダースコートの略。チアリーダーやテニス女子のスカートの中からチラリと見えるアレ。コスプレ用のもある)
あんな可愛い子のエッチなパンティをあの子と同じクラスの男子どもは日常的に拝めてるって思ったら、居ても立っても居られなかったというか……あの子のパンティを護りたかったというか。
「別にあの子の彼氏でも何でもないのにな……」
なんなら、名前や連絡先すら知らないし。
「はぁ……」
湯船に浸かりながら天井を見上げて何度目かも分からない溜め息をつく。
まあ、喜んでくれたのは喜んでくれたけど。
『ヤバっ!? フリフリで超カワイイんだけどおー!!』
持ってないって言われたから2枚もプレゼントしちゃったよ。フリルのついたコスプレ用のアンスコ。
『あんがとね、オッサン! あーし、大切にするね!』
なんて、とびっきりの笑顔でお礼を言われたから、俺もつい気分が良くなって連絡先を聞き忘れるっていうね。気づいた時には彼女の乗った電車はすでに走り出していた。
「マジでミスった……」
例え付き合えないとしても、せめて繋がりは持っておきたかったと、あの子を見送ってからずっと後悔している。
ゴリゴリのギャルだけど性格が合ってるっていうか、一緒にいてすごく楽しかったっていうか。
――あんなにいい子、2度と出会える気がしない。
「はぁ……酒でも飲んで忘れよう……」
俺は最後に大きな溜め息をついてから風呂場を出る。ちなみに、ギャルと密着しすぎたせいで股間はずっとギンギンである。あとで処理しなきゃな。動画ジャンルはもちろん、制服ギャルとエッチするヤツだ!
俺は冷蔵庫から缶チューハイを取り出してプルタブをプシュッと立てる。風呂上がりの一杯がたまらねーんだ。
クーラーの風に当たりながらキンキンに冷えた酒を風呂上がりの体に流し込んでいると、ラインの通知が入っているのに気づく。
ロック画面に表示されているのは知らない女性の名前だった。
【ミサキ】
【アンスコ①】
「ん? 業者か? げと、アンスコって……」
小さく表示されているアイコンにも見覚えがあった。あの子にプレゼントしたピンク色のビーズストラップだ。
そんなハズはないと思いつつも、俺は画面をタップする。
「ブウウウウ――――ッ!?!?」
トークルームに表示されたショート動画を見て、俺は飲みかけのチューハイを吹き出してしまう。
画面に現れたのは紛れもなく彼女だった。姿見の前で自撮りしながら制服のミニスカートをたくし上げ、少しモジモジしつつフリルの白アンスコを丸見えにさせている。
「え、やばっ……」
しかも、指で控えめなハートマークを書くというオマケ付きである。え? 相思相愛?
俺はすぐさまメッセージに目を通す。
ミサキ
【今日はあんがとね♩】
【楽しかったから、そのお礼】
【パンツの自撮りなんて初体験だし!笑】
【アンスコ①】
なにこれ、嬉しすぎるだろ! 早く返信しないと。
俺
【こちらこそ、ありがとうございました。俺もすごく楽しかったです】
【動画ビックリしました。すいません。無理させちゃったみたいで……】
すぐに返事が返ってくる。
ミサキ
【大丈夫!】
【ちょっと恥ずかしかったけど】
【オッサンが喜んでくれると思って頑張ってみたし!】
【嬉しい?】
俺
【はい、とっても】
ミサキ
【外で見ちゃダメだよ?笑】
俺
【見ませんよ笑】
にしても、アンスコって意外とエロいんだな。これはこれでアリだ!
「……って、あれ? そういえば」
あの子とこうして普通にやり取りしてるけど、連絡先の交換なんてした覚えはない。聞いてみるか。
俺
【連絡先の交換なんかしましたっけ?】
ミサキ
【したじゃん! ベッドの上で!】
「ブウウウウ――――ッ!?!?」
俺は再びチューハイを吹き出してしまう。床がアルコールまみれだ。
ミサキ
【冗談だって!笑】
【ほんとはね、ストラップつけてるときに勝手にした】
【怒ってる?】
「ああ、あの時か」
確かに、ちょっとおかしいとは思ったんだ。特に通知なんか入ってなかったのに、一瞬だけスマホを返されたから。
俺
【怒ってないですよ】
【むしろ嬉しいです】
【連絡先を交換できたらなと思っていたので】
【それにしても、まんまとやられました】
【まさか個人情報を盗まれていたとは笑】
ミサキ
【あーし、こう見えてスパイだし!笑】
「ぷっ」
ギャルとのライン、めっちゃ楽しいい!
ミサキ
【もう1個アンスコの動画あるけど見たい?】
俺
【見たいです】
ミサキ
【即答かよ笑】
【じゃあ、あーしとお揃いのストラップつけてるスマホの写真送って】
「……」
――なにいいいいいいいッ!?
俺は慌ててテーブルへと向かう。今現在、俺のスマホにストラップなどついていない。家に帰って来て速攻で外したからな。
だってお花のビーズストラップなんてつけたまま出社してみろ? 同僚にイジり倒されるに決まってる!
俺は一度取り外したストラップを付け直す。
「くっ、くそおおおおおおっ!?」
焦って紐が上手く通せない。
「よし! できた!」
俺は手元だけ鏡に映した自撮り写真を彼女へすぐさま送る。
俺
【写真】
ミサキ
【ぜってー、外してたよなあ?】
あ……バレとる。
俺
【すみません】
ミサキ
【あーしがいいよって言うまで絶対外さないって誓う?】
【そしたらアンスコ見せたげる】
ぐぬぬ……。いやしかし、激かわギャルのパンツのためだ。ここは致し方ない。
俺
【誓います】
ミサキ
【アンスコ②】
「うおっ!」
思わず声が出た。先ほどとは違い、振り向きながら自撮りショット。スカートの後ろをたくし上げ、フリルがセクシーな黒アンスコのお尻を強調しながら、フリフリと振っている。最後は色っぽく投げキッスだ。
「やばっ」
俺
【ありがとうございます】
ミサキ
【シコっていいよ笑】
俺
【シコりませんって笑】
中学生じゃあるまいし。いくら素材がいいからって、さすがにアンスコのショート動画じゃ勃たな――
ムスコはギンギンだった。俺、相当溜まってるな。
時刻を確認すると23時30分だった。
俺
【そろそろ寝る時間ですよ】
ミサキ
【ギャルだからまだ大丈夫!】
謎のギャル理論。
俺
【寝てください】
【何時に起きてるんですか?】
ミサキ
【7時】
俺
【じゃあ、その時間におはようのライン送ります】
ミサキ
【マジ? 音量マックスだし!】
【毎朝してちょ♡】
俺
【わかりました】
【これから毎日、起きるのが楽しみになりそうです】
ミサキ
【あーしも】
【最後にお願いがあるんだけど、いい?】
俺
【はい、なんですか?】
ミサキ
【明日から、名前で呼んでほしいかも】
名前って……確か『ミサキ』だったよな。というか『明日』って書いてあるな。
俺
【明日も会うんですか?】
ミサキ
【ダメなの?】
俺
【構いませんけど。放課後はお友達と遊ばなくてもいいのかなと……】
ミサキ
【毎日学校で会ってるから大丈夫だって】
【オッサンと遊びたい】
嬉しいことを言ってくれるじゃあないか。
俺
【わかりました】
【明日も今日と同じぐらいの時間に行けると思います】
ミサキ
【りょ。待ち合わせは今日と同じ場所でいい?】
俺
【はい。よろしくお願いします】
ミサキ
【オッサン、かてーし笑】
【ビジネスかよ!笑】
俺
【おやすみなさい、
ミサキ
【……オッサン、ズルいし】
【おやすみぃ♡】
【(* ˘ ³˘)チュッ】
最後にキスのスタンプが送られてきた。これはもう相思相愛なのでは?
俺は幸せな余韻に浸りながらラインを閉じる。明日もあの子と会えると思うと、今から楽しみで仕方がない。
「よし。やるか」
とりあえずティッシュとスマホを手にベッドへ向かう俺だった。
翌日。この行為をズバリ言い当てられてしまうなど、この時の俺は夢にも思っていない――
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