魔法と学歴と金と旅

第16話

夜。


夜行バスの細かな振動に身を傾けながら先程していた会話を思い出していた。


..

.



「だから、なんでですか?」

『そんなの、私が警察の人間だからに決まっているじゃないですか。』


ガラケー片手にネオン街を歩いていく。

内心にため息をつきながら。


『そもそも、貴方は今年で14歳で本来なら中学2年生ですよね?とりあえず学校と経歴はこちらで用意するので行ってください。』

「え〜この前変な事件解決したばっかりじゃないですか…」

この前の事件なんて変な事件だった。


麻薬系の事件かと思って捜査を依頼されたら、実は虐められた過去を持つ“田中”という男が『自分の魔法を血に刻む魔法』と『ランダムで頭の一部に10円ハゲを作る魔法』を使って包装前の育毛剤1万人分に混入していた。発送前に回収、破壊できて“田中”を捕まえる事が出来たものの、変な事件だったと覚えている。


『それはそれ。これはこれです。それに学校に行ってからも依頼はあります。もちろん契約通り、受けるかどうかは貴方次第ですが。』

「依頼?」

学校での依頼?

薬物関連だろうか?


『都市伝説の蒐集です。』

「…は?」


いや、それって……


「マジですか?」

『マジです。』


いや、なんで?


『世の中における事件は人の手に依るもの以外でも起こる事件はあります。現に“魔道具”や“聖遺物”の一部はそういった伝説や噂でできる物もあります。』


それに、と土御門は続ける。


『今回入学する場所は例年、そういった物が多く溢れる場所なんです。』


..

.


回想を終わらせてガラケーを開く。

資料には学校の内容と、今までに回収した都市伝説関連の物品が載っていた。


学校の名前は魔法実技中高等専門学校。

なんと、日本で唯一の実用的な魔法を持っている人しか入学出来ない高校らしい。もちろん、受験もあり、そこそこの偏差値なんだとか。

しかも、中高一貫。高専の類って本当は中学を卒業してからなんだけど、人材育成の観点から中学からにしたらしい。


そんな学校だからこそ、曰くつきな都市伝説も沢山生まれるんだという。


例えば、誰も触っていないのに音が流れるピアノ。

目が動く絵画やゴーレムと化した二宮金次郎など様々な物が出てきて、警察の例外課に回収され、保管されているんだとか。


どっかの財団かな?


(高専って事は中学含めても7年…そして場合によっては2年もいないといけない…月々50万程のお金が入るって事になってるけど…嫌だなぁ…)


1年くらい遊んで暮らせる程のお金はある。

けどたった1年だし…どうしたものか…

…とりあえず、入学してから考えるとしよう。そうしよう。














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る