第3話

「ほらよ、早く。」

「うん、どうぞー。」


あれから1週間が経った。

金髪からのお金を使って過ごしていたが警察が僕を保護しようとしてくるので、この際お金を使い切ってから保護されようと考えたのだ。


ホームレスに有り金と魔法を交換してもらい、今はこうなっている。


『無常仮寝

MP100/105

所持魔法


『体内の血液を増やす魔法』『手で触れた物を保温する魔法』『頭の中で1d100を振る魔法』『滑舌が5分間良くなる魔法』『お互いに同価値だと思っている物と取引を行う魔法』『記録する魔法』『対象の魔法を知ることが出来る魔法』『5分間、人の言った事を繰り返す魔法』『5分間、人の言う事を鵜呑みになり易くなる魔法』『自分を催眠する魔法』『視野が狭くなる魔法』『本を読む速度がほんの少し早くなる魔法』『1㎥の大気を自分の体温と同じにする魔法』『5秒間を正確に測る魔法』『対象の魔法を知ることが出来る魔法を打ち消す魔法』『鼻の穴に空気以外のモノを入れない魔法』『血管に膜を張る魔法』『自分の魔法習得速度を上げる魔法』『爪を磨く魔法』『十分間、目を合わせた相手をビビらせる魔法』『触れた金属の融解温度をほんの少しだけ下げる魔法』』


ほんの少し心配していたMPの問題もどうやら魔法に付随される判定らしい。

この『1㎥の大気を自分の体温と同じにする魔法』があったら寒さに対しても大丈夫だったし、『対象の魔法を知ることが出来る魔法を打ち消す魔法』は通称“詐称”と呼ばれていて、鑑定を受け付けない為に社会的に信用性が低い人が使っている印象から、持っているだけで差別されやすい魔法だ。このおっさんもそうだったんだろう。


「おじさんはこれからどうするの?」

「ああー?どうするって…魔法はもう。つか、餓鬼。お前そんな呪いのような魔法持って大丈夫なのか?」

「まぁ、うん。多分、大丈夫。」


あの時に、たとえ神様にそっぽ向かれてもめちゃくちゃにして自由になってやるって心の底から思ったんだ。

たかだか、差別されるような要因の1つや2つ。どうって事はない。


それから交番に行き、保護してもらった。

名前はそのままで言ったが、どうやら僕の戸籍はないらしい。あのクソ院長め…


「頑張ったね!もう大丈夫だよ!」

「チョコ食べる?美味しいよ?」

あ、美味しそう。いただきます。


警察官たちの人柄もよく、暖かいご飯も美味しかった。孤児院じゃいつも冷めた弁当だもん。

けど、そこからが問題だった。

まず、“詐称”もそうだが戸籍もなく、他人から見たら僕は得体の知れない何かに見えると言う。ほんと、失礼だな。まぁ否定はしない。


僕は、結局13歳まであっちに行ったりこっちに行ったりとしながら生きてきた。


もちろん、良いこともあった。

子供相手だったから価値観も幼く、お菓子やまじでいらない魔法と交換してあげたりして沢山魔法を手に入れた。

あ、そうそう。最近わかったことなんだけど、どうやら同じ魔法を手に入れると魔法そのものが成長するらしい。

現に僕の『十分間、目を合わせた相手をビビらせる魔法』は『五分間、目を合わせた相手をビビらせる魔法』になったし、『手で触れた物を保温する魔法』は『手で触れた物を10℃操作する事ができる魔法』になった。

もちろん、保温もできる。


そんなこんなで将来人に刺されそうだなぁと思いながら中学に入ろうとした時だった。


僕がだいぶ前にいた孤児院で魔法を持たない子がいると話題になっていると耳にした。

そこからはすぐに行動に移した。

まず、隠していた金髪の身分証で限度額まで借金をしてすぐさま孤児院を抜け出した。

すまんな金髪と子供たち。僕は魔法と金が大好きなんだ!


そうして僕は旅に出たのだった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る