予言のおっさん
消毒マンドリル
本文
これは俺が小学生の頃の話です。
当時この時の俺は地大変な悪ガキでした。自分で言うのもどうかと思うんですがね。
いつも2人の友人…仮にAとBって呼びますが、そいつらと一緒に悪さとかイタズラの類はしまくってまして、普通の人が思いつくような事のことはやったと思います。そのたびに先生や親にゲンコツ貰ってましたね。
そんな悪ガキ3匹が遊び場の1つにしていたのが近所にある外人街でしてね、ウチの地域は外国から様々な出稼ぎ労働者だとか移民の人達が多く住み着くようになってちょっとした街ができちゃってるんですよ。
今はそんなんでもないんですが、あの時の外人街はあちこち汚いし人もガラの悪いのがウロチョロしてまして自分の地元の人たちは全く寄り付きませんでしたね。
俺とAとBはそんな恐ろしい所に面白そうだからって理由でよく遊びに行っていました。
それで、いつも通り外人街に遊びに行って屋台で飯でも買って食べようという事になって俺とAとBでホットドッグだがケバブの屋台に行って3人分頼もうとしたら横から変な男の人が入ってきて俺達の分の飯をおごってくれたんです。「知らない人から食べ物を貰わないようにしましょう」ですとか「子供のうちはおごったりおごられたりする事はダメ」とはよく言われてますが、当時の俺達はよっしゃーラッキーみたいな感じで大喜びで食ってましたよ。Aの奴なんて図々しくその男の人におかわりなんて頼んでましたし全く警戒してませんでした。
そこから俺達はあの男の人と仲良くなってよく遊ぶようになりました。彼が俺達の遊び仲間になってから毎日がウンと楽しくなったのは覚えてますよ。
クワって目を開いて目ん玉飛び出させる顔芸してくれたり、外国の変わったオヤツ持ってきてくれたり、さらには一緒に携帯ゲームで遊んでくれたりもしましたね。
中でも当時の俺とAとBは毎日男の人が話す「予言」を楽しみにしていました。
その内容というのは「夜、おまえんちウンコ人間が来る」だとか「明日、学校ゴリラ出る」みたいな本当にくだらなくてしょーもない内容でして、当然ふざけ半分で話す内容なんで当然当たらないんですよね。
それで、予言が当たらなかったことをからかうと彼は「おれやっつけた」って言って黄ばんだガタガタの歯を見せて笑うんです。
これが俺とAとBからすれば面白くて、男の人も合わせて4人でゲラゲラ笑ってました。
あまりにウケたもんでこの「予言」は俺達と彼の毎日の日課みたいになってましたね。この事から男の人は俺達から「予言のおっさん」と呼ばれるようになりました。一応彼、そこそこ若い感じの人だったんですが髭もモジャモジャで肌もくすんだ茶色をしていた所から老けて見えたんでそう呼ばれていました。多分インドだがイスラム圏の人間だったのかもしれません。
一旦話は逸れますが、この後から彼は「予言のおっさん」と呼ぶことにします。
そんなある日、俺達はいつも通り外人街に行って予言のおっさんから予言を聞こうとしたらなぜか彼が外人街につく前に俺達の前に出てきたんです。しかもなぜか様子が少々おかしくて、険しい顔をして立ってました。
それでも、俺達はアホだったので気にしないでいつも通り予言のおっさんに接してしまいました。
まずBが「おっさん、今日の予言は?」って調子の良い声ではやし立てるように言うと、予言のおっさんは少し間を置いた後低い声で「今日、ここ、やばい。」と答えました。
いつもとは違うおっさんの様子に、俺達は一瞬怯んでしましたがそれでもおっさんが冗談を言ってるもんだと思っていたんです。
それを聞いたAがその時流行ってたバトル漫画のセリフを真似して「待てよ!俺達も一緒に戦うぜ!」って茶化すと予言のおっさんはさらに怖い顔になって「お前、無理。」と言い、さらに続けて「でていけ」とだけ言って後はただ口をつぐみ俺達を睨みつけてきました。
あの時の彼は正直かなり怖かったです。毎日周りの大人に怒られるので大人の怖さというのには慣れているつもりでしたが、予言のおっさんの放つソレは冷たく、鋭く、そして重くこれまでのどんな大人よりも恐ろしいモノで、そんなモノを向けられた俺達はひとたまりもなく逃げ出してしまいました。
逃げる途中、「予言のおっさんに何か悪い事してしまったのかな」と思っていましたがしばらくして家に帰ると母が泣いて俺を抱きしめてきたのです。
普段からガミガミうるさい母が「良かった…!良かった……!」と震える声で俺にすがりついてきた事には思わず困惑を覚えてしまいましたが、その後に理由を知る事となりました。
後日、朝食を食べている際にテレビのニュースを見ているとあの外人街でギャングのボスが別のギャングの構成員に襲撃された事による抗争が起き多数の死傷者が出たとの発表があったのです。
俺は背筋が凍りました。もし、あの時外人街に行っていたら俺達は死んでいたかもしれない。そう思うと予言のおっさんのお陰でそうならずにすんだ…と思ったその直後にさらにまた衝撃的な発表がありました。
マフィアのボスを襲撃した構成員達の犯人達の似顔絵に「予言のおっさん」がいたのです。
彼が犯罪者だったというショックは深かったのですが、今思えばもしかしたらこの予言のおっさんは友達である俺達を抗争に巻き込ませない為にあんな態度を取ったのかもしれないと思うと何とも言えない気持ちになります。
予言のおっさん 消毒マンドリル @ETEKOUBABOON
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。予言のおっさんの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます