お別れ


 お別れ


美しく咲けない桜が見ている

剥げた駅舎の静かな二人の背を

赤い屋根

カザミドリが

キーッと回って道を示してる

   

閉じて曇ったその口から

懐かしい声がした気がする

今日から

駆けだすんだね

スズメの歌に耳傾けるふりしている


白々しい嘘と青い声

駅のあの人もどこへ行ったんだろう

銘菓の広告

穴が開いてる

遠くの川が少しだけ見える

春の中に切ないものが少し見えてる


引きずるように開いたドアの音は

拍子抜けするほど軽かった

ホームと

列車の間も

眩暈がするくらい遠く感じる

いつかは

この瞬間を

後悔すんだろな

そう思って手も振れなかった


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る