第2話 第二章のヒーロー

「何処も怪我をしてないか?」


 物凄いイケメンが私のことを心配してくれる。

 キラキラ眩しくて目が開けられなくなりそうなほど。

 この人は、竜人の王【ジェイデン・デュ・アストリア】


 名前だけは第二章の初期設定のスチルに書いていたので覚えている。


 その相手のヒロインが第一章の悪役令嬢だとは思わなかったけれど……。


「ありがとうございます。私はアリスティアです。貴方様に助けていただいたお陰で無傷です」



「……良かった。我がつがいに何かあれば私は生きていけない……」


 ———そんな綺麗な顔でそんなセリフ言われたら頭がどうにかなりそう。もちろん今まで生きてきてそんな事誰からも言われた事ないし、私は恥ずかしくて倒れそうです。



「もっと早くに助けていたら。怖い思いをさせてゴメンね? アリスティア」


 そう話しながら綺麗な顔が近づいてくる。

 あわっ、近いです! 距離感がおかしいです。


「あっあの! 私は大丈夫です。ありがとうございます。

 あの……私は本当に貴方の番なのですか?」


 竜王様はビックリし、物凄く切ない目で私を見つめ返す。


「——すみません。私には番がわかりません」


「人族のアリスティアには分からないのだな。この切なく愛おしい気持ちを……共有したいがムリなんだな?」 


 恥ずかしいセリフを真顔で言わないで! 顔が赤くなっているのが分かる。


「すみません……」


 申し訳なくて頭を下げて謝ると、眉尻を下げ少し困ったように笑う竜王様。


「どうであれ、俺はアリスティアが愛おしい。この気持ちは覚えいてくれ」

「はぅ……」


 ……まだ言いますか。

 これ以上私の顔を熱くさせないでください。

 何か話を変えないと。この甘さに耐えられない。


「あの……どうやって私を見つけたんですか?」


「ああそれはね、俺はこの森近くの街に宿泊していたんだ。すると突然急に胸が高鳴り、何故か森が凄く気になって仕方ない! どうしても胸の動悸が治らないので、気になる森の方がくに来てみると、胸を締め付ける様な芳香がする」


 芳香……? 何かフェロモン的な匂いが出ているのかな?


「香りの強い方に行くと、アリスティアが魔物に襲われていて……! 見た瞬間は心臓が止まるかと思ったよ」


 ジェイデン様は言い終えると、愛おしそうに私の髪を人束とりキスを落とす。


 はうっ、何このカッコ良い仕草! イケメンにしか似合わないよ。こんなの。


「アリスティア、俺のことはジェイデンと呼んでくれ」

「はい……ジェイデン様」


 私が名前を呼ぶと、お日様のような顔で微笑むジェイデン様。

 眩しいです。


「それにしても……何でアリスティアはこんな姿で森に1人でいるんだ?危険過ぎる!」


「実は……」


 私はもう……ストレスをぶち撒けるように、今まであった話を乙女ゲームのストーリーをジェイデン様に話した。


「————其方の国はアホウばかりなのか? 何故その様に一人の少女の話を全て信じ、ろくに調べもせずにアリスティアをこんな酷い目に……? わからぬ」


 信じられない! っとジェイデン様は怒ってくれ、私の悶々とした怒りが少しおちついた。


「アリスティア? 良かったら我が国に来ないか?」

「えっ? 良いのですか?」

「俺は愛しい番ともう離れる気はない。アリスティアには番の愛おしさが分からないのだろう? 俺は強要したくない。だから……俺の事を一緒にいて沢山知ってくれ、そして同じ気持ちになってくれたのなら……先の付き合いを考えてくれないか?」


 何て優しいんだろう。こんな優しくてカッコいい人がいるなんて!


 この人に出会えてなかったら、私は魔物に食べられて終わりだったのだから……!





 ★★★


 主人公リリアside



 あーーっ!


 やっと邪魔な女、【アリスティア】を断罪出来たわ。


 乙女ゲームの世界に転生したって気づいた時はビックリしたけど、私ってば主人公リリアじゃん!

 ふふっ、最高。


【深緑の乙女と魔法使い】


 このゲームはイケメンが多すぎて選べないんだよね!

 もちろんハーレムルート選ぶよね。


 クスッ


 ———ゲームの裏技とか知り尽くしてるんだから! もち全員攻略!!


 そんな強強な気持ちでいたんだけど。


 あれ? 何で? 世界観はゲームそのものなのに……?

 皆がゲームみたいに行動しない。


 やはりここは現実世界……。


 ゲームとは違う⁉︎


 悪役令嬢アリスティアも何もしてこない。

 強いて言えば皇子に寄って行くと、作法だの淑女としてのなんだのとか注意してくるレベル。


 こんなんじゃハーレムルートどころか、一番攻略しやすい筈の皇子様だって攻略出来ないよ!


 とか考えてたら、やっぱり主人公チートあるじゃん!


 私、魅了魔法が使えるようになった!

 あー……ココからは楽勝ルートだったわぁ。

 ふふっ、皆が思う様に動いてくれる……。


 アリスティアの奴ったら、悪役令嬢のくせに、見た目が主人公の私より美人って設定だったからさ!

 主人公は私なのに!

 むかつくわ。


 それに何故かゲームとは違い、皇子や宰相の息子、更にはアリスティアの弟と……。

 攻略対象全員がアリスティアと良い関係だったのよね。


 ————まぁ?


 魅了魔法を使える様になった私には、もう関係ない話だけどね!


 アリスティアを国外追放したけど……。


 私はこのゲームの二章知ってるのよ。

 ここから主人公アリスティア編スタートするからね!

 アリスティアが人気だったから、二章の主人公になったのよね。

 だけど? 誰があんなイケメン竜王様と会わすもんか、貴方は森で死んでね?


 国外追放する時に、アリスティアを連れて行く警備隊達に魅了魔法かけて森に捨てて貰った。


「ふふっ」


 番を失い悲しみを背負った竜王様も、その内私が貰ってあげるからね?


 ああっ!!


 世界が自分中心に回ってるって……何て楽しいの!

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