北野武の「首」

蘭野 裕

映画「首」を観ました

 昨日、北野武監督主演映画「首」を観ました。

 命懸けの絆と非情な裏切りが併存する、人の命が軽い時代を、美化は控えめ、乾いたユーモアマシマシで描いた映画です。

 こんなにも上司になってほしくない信長は初めて観た!

 でも面白かった!


 ただ、人の顔を覚えるのが苦手なせいか、何が起こっているのかよく分からない場面も時々ありました。

 俳優は有名人揃い、主要人物には初登場時には名前が表示される親切設計なので、一般的には大丈夫なのではないでしょうか。


 ・登場人物が多い

 ・敵味方関係は不安定

 ・皆が皆を出し抜こうとしている

 ・変装や成りすましも多々ある

 ・主要人物が大人の男性ばかり


 これが「人の顔覚えるの苦手だと混乱しやすい理由」ですが、でもそういう話だと承知で、観たかったのです!

 だから満足。

 観たい作品、面白い作品は、自分に理解しやすい作品とは限りません!

(もしかしたら、私のような者は先に小説版を読んだほうが良かったのかも)


 とくに印象に残っているのは、農民出身の茂助。「敵の首を獲り、秀吉のように出世する」という夢に取り憑かれて人生を狂わせます。

 殺してしまった幼馴染の幻を時々見る純朴さがありながら、首を獲る機会を与えられたらどんな危険も冒す。しかし何の後ろ盾もなく武家社会の処世術を知らないので、良いように使われるばかり。

 こんな哀れな生き方がありますか!

 でも不思議に、戦場を駆け回っているときは凄く楽しそうでした。

 

 まるで聖杯のように、手に入れたら奇跡が起こりそうな「何か」を纏わされた「敵将の首」。褒美は出世か財産か……天下か。

 しかし、出世すればするほど褒美をくれる上役はいなくなる、と信長や秀吉を見ている観客は気づいてしまう。


 アッと驚く終わり方をしますが、あれが誰だったのかは私にも分かりましたよ。




(了)




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北野武の「首」 蘭野 裕 @yuu_caprice

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