NTR復縁モノ用テンプレABC

あんぜ

パターンA

 それは本当に偶然だった。夏休み、用があって学校まで来ていた所をクラスの女の子に手伝いを頼まれ、通りかかった屋外の体育用具室。体育館にある屋内の用具室と違って人の出入りは少ないし、生徒もあまり通りかからないような場所にあるので一緒に来た女の子もちょっと怖いのか、黙ったまま。


 ガタガタ――音がした。用具室の方から。


 彼女は気付いていないのか、あるいは気に留めないようにしているのか何食わぬ顔。

 耳を澄ますとくぐもった女の子の声が聞こえてきた。


 ――これって。


 小さな声だけど、男と女の会話も聞こえた気がした。

 用具室は狭い上に暗い。そんな場所で何をしているのか……。

 見つかったら停学じゃ済まないぞ……。


「うわっ、こんな場所でさかってるとか最悪……」


 俺は警告の意味も含めて、おそらくギリ聞こえるだろうくらいの声で呟いた。

 用具室からの音は止み、静まり返る。

 俺は厄介事に巻き込まれないよう早足でその場を去ろうとすると、一緒に居たクラスの女の子は慌ててついてきた。


「どうしたの? 突然」



 ◇◇◇◇◇



 ――俺には幼馴染が居る。その子の名前は一条 綾乃いちじょう あやの


 綾乃はお隣に住んでいて、小さい頃から兄妹のように仲が良かった。いつも俺にくっついて男の友達と遊ぶ時も一緒になって駆けまわっていた。近所に女の子の友達が居なかったこともあってか、運動大好きでいくらか男の子っぽい性格に育ってしまった。小学校の高学年になるくらいには俺と同じくらいの背もあった。


 中学に入るくらいになると、俺は綾乃と一緒に居るのが少し恥ずかしくなった。男友達と遊ぶようになり、俺が避けていたこともあって綾乃はいくらか機嫌が悪いことが続いた。


 ただ、中学一年の冬、綾乃が軟式テニスの部活の先輩から告白をされたと聞いた。返答を保留しているような話も聞いた俺は、その日一日を悶々として過ごした。そして夜、綾乃の部屋に明かりが灯るのを確認すると、抑えきれない衝動と共に彼女の家を訪ねた。


 俺は綾乃に告白をした。避けていたことを謝り、彼女を好きな気持ちが恥ずかしかったことも打ち明けた。彼女は――よかった――と一言返した。


 綾乃は人気のある先輩から告白されて困っていたらしい。周りの部員が一緒になって盛り上げていたのもあり、振るに振れなく、おまけに俺が避けていたものだから自分からの告白も諦めていたそうだ。綾乃との付き合いはその時からになる――。



 ◇◇◇◇◇



「どうしたのって――」


 ――今の、聞こえてなかったのか?――とは聞かなかった。女の子と話すような内容でも無かったし、彼女が聞こえていない振りをしてるならそれでもいい。


 彼女の手伝いを終えた俺は昇降口まで戻ろうとする。


「あの、里見さとみくん、よかったらお礼に飲み物でも奢らせてくれない?」


「いや、一条を待つまでの間、ちょっと暇だっただけだし。新田さんも部活があるでしょ?」


「うん、まあ、そうだね。……うん、ありがと」


 クラスの女の子――新田さんと別れて教室まで戻る。

 二十分程して教室にやってきたのは綾乃、それから同じテニス部の山名さん。

 二人ともセーラー服に着替えてきたみたいだけど前髪が少し濡れている。


「おまたせ新太あらた! ごめんね、最近練習で忙しくてなかなか会えなくて」


「いや、いいよ。それより暑いんだから無理するなよ。お昼はどうする? 今日は二人で居られるんだよね?」


 そう言って彼女の隣の山名さんに目をやると、山名さんは俺から目を逸らす。


「山ちゃんはその、ちょっと用があって一緒に教室まで来ただけだから。――その、お昼なんだけど、どこかで簡単なもの買ってうちでデートしない?」


「いいけど」


 何も言わない山名さんは取って付けたように自分の机に向かい、机の中を漁る。


 僕たちにとっては久しぶりのデートだったけれど、彼女の家へ行くことになった。これなら家で待っていても同じかなとも思うが、綾乃は部活後も部の友達を断り切れなくて遊ぶことが多いから学校で待ち合わせていたわけだ。山名さんとは昇降口で別れた。



 ◇◇◇◇◇



 流石に高校生ともなると俺の方が背も高くなったが、綾乃は背の高いのもあって目立つ上、長い髪をいつもポニーテールにしているので視線を集めやすい。スタイルもいいし、一緒に歩いていると他所の高校の男なんかが割とガン見してくる。


 それからハンバーガーを買って彼女の家に。


「先、シャワー浴びてくるね。食べてていいから」


 帰るなりそう言って、お風呂場に向かう綾乃。

 俺は彼女の分も荷物を持って、二階の彼女の部屋へ。

 まあ、今更と言うくらい見知った部屋だった。


 クーラーを付け、冷風に身体を晒して涼む。

 テーブルの前に座り、ハンバーガーの紙袋には手を付けず、ジンジャーエールだけ出して少し口をつける。部屋を見渡すが、夏休み前とあまり変わった様子はない。前に読みかけてた漫画の続きでも読むか――と本棚を漁っていると、早々に階下でお風呂場の引き戸の音が。


 出しかけていた漫画を戻すと同時に階段を上がってきた綾乃が戸を開けた。


「あ、綾乃!?」


 綾乃はバスタオル一枚を体に巻いただけの格好で現れた。

 そのまま彼女は俺に抱きついてくる。そんなことをされると当然こちらも反応して……。


「ね……しよ?」


「しよ……って、いいのか?」


「お願い」


「あ……ああ」


 実のところ、綾乃とのエッチはそんなに進んでいなかった。

 初めては中学の頃、付き合い始めてすぐ。俺が――どうしても――と我慢できなくて行為に至った。ただそのとき、綾乃が物凄く痛がって結構な量の血も出てしまった。他にもちょっと色々と怒られて、2回目はかなり慎重を期した。俺はできるだけゆっくり、そしてできるだけ動かないようにしていた。俺としてはそれでも十分だったわけだけど、綾乃が――よかった――と言ってくれたのは一年以上あと。何回か体を重ねたあとだった。その後もそこまで回数を重ねていないし、ほとんど動けないこともあって俺も体力を有り余らせていた。


「ちょっ、いきなり大丈夫なのか?」


 綾乃はどちらかというとスロースターターだった。

 それなのに、もう準備ができていたのかキスをしながら始めてしまった。

 それも普段は下になってじっとしているのに、俺を押し倒すようにして上に。


「ん…………」


 綾乃はまともに返事をすることもなく、そのままキスで俺の口を塞ぎ、体を動かしていた。

 俺にはまるで彼女が別人かのように見えた。



 ◇◇◇◇◇



 すっかりふやけてバンズの表面に皺が寄ってしまったバーガー。

 とりあえず下着とシャツだけ着て、買ってきたファストフードに手を付けていた。


「どうしたんだ今日は?」


「ん、なんでも」


 綾乃は表面に汗をかいた容器を手に取りストローを挿すと、氷が解けた葡萄のソーダを飲む。


「なんでもってことは無いだろ?」


「うん…………私も成長したのかも」


 綾乃もバーガーの包みを開けて食べ始める。


「――ふにゃふにゃだね。先に食べればよかった」


 そう言って笑う綾乃。


「持ち帰った時点でそんなに変わりない。味は一緒だよ」


 その後はゲームをしたり映画を観たりしながら、親が帰って来る時間まで綾乃といちゃついていた。



 ◇◇◇◇◇







--

 幼馴染メイン+サブヒロインにも使える2名です。伏線・分岐多めにできるよう組んでありますが、このあと夏休みの登校日で間男っぽいキャラ登場とか? でしょうか? それともソフトに行かずにもっと最初から飛ばしてる方がいいんですかね?


 すみませんこんな実験作に評価・応援頂きましてありがとうございます。


 改稿履歴

 23. 12. 30 主人公の名前の定義を忘れてたので追加


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