第4話 ドキドキ言葉責め

 ヒ…………ヒーン!


 (え? もう来たの? リスト見てないよ……)


 エクスタシーを感じさせる、馬車馬のいななきが脳裏を駆け巡る中、最後の殿方はやって来ました。


 ガチャ


 「ヤッピー! なんて、失礼致しました。はじめましてアルシンド様」


 「…………」

 (神様……)


 「すみません。貴方が緊張してるだろうと思い、ついはっちゃけてしまいました。これがほんとの暴れはっちゃく!無理すんな!」


 タマゴッチ家

 パパラッチ公爵


 以下は、見とけば良かったと後々後悔する事になるプロフィール。


 趣味:チョメチョメ 占い

 好きなオカズ:秘密の花園

 印象的な言葉:亭主元気で留守がいい

 得意技:言葉責め


 「アルシンド様、実は私は手の平のシワで運命を占う事が出来ます。見せて頂けませんか?」


 「え? 手の平で?」


 「はい。手相と言うのですが、人間の持つ家族愛、情熱、才能、運命、人気、金運が手の平の線を読み解く事でわかるのです。太陽線、財運線、知能線、生命線、運命線、結婚線、感情線など、長さではなく線の濃さや形で占います」


 「そ、そうなんですね」

 (良くわからないけど、なんか興味あるかも!)


 「どれどれ? なんて柔らかい手なんだ。丸見えだ……隠さないでおくれ。じっくり見てあげよう」


 「あの……」


 「アルシンド様はいけない娘だ……こんなにおっぴろげて……」


 「ただの手の平なんですが?」


 「どうしたんだい? 恥ずかしいのかい?」


 「いや、だから……手の平……」


 「これが生命線だ。なぞってあげよう。僕の指を感じるかい?」


 「くすぐったいだけなんですが?」


 「この運命線をどうして欲しいんだい? 指かい? 舐めるかい?」


 「いや、手の平を舐めるのはちょっと……」


 「声を出してもいいんだよ?」


 「はい?」


 「声を出さないとやめちゃうよ?」


 「いつでもやめて構わないですが?」


 「イク時は言っていいんだよ?」


 「…………」

 (なんなの? この男は? キモいよ)


 その後、髪の毛占いと言う提案を私は華麗にスルーして、再び話題転換。


 「あの……パパラッチ公爵は趣味はおありでしょうか?」


 「趣味は秘密の花園巡りです」


 「花園? なんですか?」


 「花の蜜がトロトロと……」


 「あーハイハイ。わかりました。とりあえず髪の毛占いで構いませんので、お願いします」


 その後の記憶はありません。

 ただ、無駄に流れる時間と気持ち悪い言葉責めの数々を、祖母が亡くなった時の気持ちを思いだす事で、やり過ごしました。そして、最高の薄ら笑いでお見送り。


 (あいつ、出入禁止にしなきゃね)






 




 


 

 

 



 


 


 

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