常連になるまでの話

 一応近所の喫茶店で俺は常連になっているらしい。いや、勘違いじゃないって。というか常連の条件てなんだろう。定期的に来る客で店主に顔を覚えられているということが条件なら、まさに俺は常連だろう。具体的には、毎週月曜の朝その喫茶店でモーニングを貪りながら、ジャンプを読むことが習慣化している。


 この情報だけじゃ、お前顔覚えられてるか分からねえだろ!と思ったそこのあなた!安心してほしい。当然顔を覚えられているエピソードがあるのだ。ジャンプはその店のジャンプなので、当然先客が先に読んでいるケースもある。だが、最近は先客が読み終わったジャンプを俺の元に店主自ら持ってきてくれるのである。これはもう店主の中で俺がジャンプの人になり覚えられたことが間違いないエピソードだろ!


 もう店主は「毎週アイツ、ジャンプ読みに来んだよな。」とか思ってるに違いない。でもたまにランチとかで同僚とかも連れてくるので、これからもジャンプを読ませてくれると嬉しい。もちろん俺はジャンプだけでその店に居ついてるわけではないので!当然、モーニングがうまいとか!安いとか!コーヒーが美味いとか!いろいろあるんですよ!あと気取り過ぎてないところが良いよね。おしゃれすぎると入る方も緊張するじゃんか。いや別にダサいとか言ってるわけじゃなくて、素朴で良い店だからみんな行ってくれ!どこかは身バレするから言わねえけど!


 でもさすがに、ジャンプ持ってきてくれた時は恐縮したよね。ああ、こんなバカにそんなお手間を…みたいな気分にはなるじゃん。で周りの視線がね。「あの男、ジャンプマンだ。」「ジャンプマンね。」みたいな!幻覚だけど!冷たい視線を感じて死にたくなった心をモーニングのコーヒーであっためたりするわけだよね。


 割と行動パターンが決まりがちだから、他にも一応常連の店があってさ。出るときとか、「いつもありがとうございます。」とか言ってくれんの。特に何かメリットがあるわけじゃないんだけど嬉しくない?向こうからすると、毎回来る食い扶持がいるってだけの話なんだろうけど!いっつもまかない丼の大盛しか頼まないやつとか思ってるんだろうけど!


 でも苦手な人もいるじゃん。顔覚えられた…もう行けない…みたいな!それもね、正直分かる。だから結局相性な気がするし、もう変装するかチェーン店行くしかないんだろうな。顔覚えられたくない店には。


 

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