六日目、『心の故郷うどんと釣りフィーバー』


 Q.更新が途絶えてましたよね?その間何をしていたんですか?

 A.釣りにどハマリして沼ってました。

 

                  ◆

 

 そんな訳で6日目。1月2日の朝。

 私達は遅くに目覚める。いつもの事である。

 

「今日はYoutubeで予習した奈多なた漁港に釣りに行こう」

「んだべな」今日は珍しく予定をすり合わせてくる友人。私達は箱崎ふ頭への2日間の釣行ちょうこうですっかりヤられてしまったのである。坊主が2日続くと何が何でも釣りたくなってくる。まるでパチンコなんかのギャンブルのようだ。

 

 私達は朝食を早々に済ますと。最寄りの駅から鹿児島本線に乗り。一路香椎かしいへ。

 その間に千早ちはや駅に寄って、釣具屋でウキ仕掛けを買い。

 そして香椎で香椎線に乗り換え。ローカルな支線に乗り換えれば街の雰囲気も変わってくる。

 

 到着するは奈多駅。近くに海を臨む団地の真ん中の駅である。

 私達が奈多に着いたのは11時半。そろそろ昼飯をキメたくなる時間帯である。

 

 奈多駅の周辺には。なんと。あの福岡県民の心の故郷、『牧のうどん』の奈多店があるのだ。

 『牧のうどん』。福岡を中心に展開するローカルチェーン。そこのうどんはヤワヤワで、別名『増えるうどん』と呼ばれる。

 

 福岡県民のイメージとして。豚骨ラーメンばかり食べていると想像されがちだが。実態はうどんばかり食べている。

 それはローカルなうどん屋チェーンが多い事に裏付けられる。

 『牧のうどん』、『資さんうどん』、『ウエスト』…九州民以外は馴染みがないだろう。

 

 『牧のうどん』奈多店。県道沿いに店を構える。

 その店の外観は。そこそこボロっちい。失礼な言い方だが。

 しかし。店の前には正月なのに人が溜まっており。かなり繁盛しているようだ。

 

 少し列に並ぶ。5分ぐらい待たされて入店。

 入ってすぐがカウンター席と厨房、そして奥には座敷がある。

 私達は座敷席に通される。

 

「ああ〜俺が来たかったのは、こんな店やってん」友人は言う。

「あ?今までの店、気にいらんかったと?」

「いやあ。なんつうか観光客向けの小綺麗な店ばかりやったやん。ここは地元の人が通って来てる感がバリバリある。福岡来てから初めて福岡来たかん感じるわ」

「あそう」なんて私は言うが。確かにこの店はローカル臭が半端ない。そして少し年季が入った店内の座敷席。ばあちゃんの家に来た感が凄い。

 

 私達はひとしきり店の雰囲気を楽しむと。注文をする。席に置かれた注文紙に赤鉛筆で書き込むシステム。

 

 私はごぼ天うどんとかしわ飯を頼み。

 友人は肉うどんとちらし寿司を頼む。

 

 注文が来るまでは店内を見渡す。

 本当に人が絶えない。そして居る人々は地元っぽい人が中心であり。

 生活の中にある店だなあ、と感じる。 

 

 友人が注文したちらし寿司が先に到着。

 私は先に食べるように促す。

「ぬあ〜関西と違う味付け。甘いなあ。福岡感がすげえ。うめぇ!!」今まで連れて行った店の中で一番のリアクション。なんだか頑張って店を選定した私が馬鹿らしくなるが。楽しんでくれるのは嬉しい。

 

 ちらし寿司に感動している友人を眺めていると。

 ごぼ天うどん、かしわ飯、肉うどんが到着。

 やってきたうどんには薬缶入りの出汁が付属している。それはヤワヤワうどんが死ぬほど汁を吸うからである。そしてそれが『増えるうどん』の別名の由来であり。 

 

 私はごぼ天うどんの天ぷらを一口かじる。

 衣が厚い野暮ったい天ぷら。だが、アゴ出汁の優しいつゆを纏いやすくなっている。

 そしてうどんをすする。ぶっちゃけ私は福岡のヤワヤワうどんが嫌いだったのだが。数年ぶりに食べると良さが分かる。ヤワヤワ麺とアゴ出汁のシナジー。案外に効くのである。

 

 しかし。うどんが啜っても啜っても減らない。これはかしわ飯を食ってる場合じゃない。

 後。暖かいアゴ出汁を吸った麺は案外に熱い。体がポカポカと温まる。こりゃあ冬向きの食べ物である。

 

 私は着ていたパーカーを脱ぎ。本気でごぼ天うどんと向かい合い。

 なんとか完食する。この時点で腹がいっぱいだが。かしわ飯が残っている。

 私はかしわ飯を食べる。甘い九州醤油で味付けされたかしわ飯は甘い。だが、それが良い。

 この実家で出てきそうなかしわ飯。最高にローカルな雰囲気。いやあ。これを求めて福岡民はこの店に通うのだ。 

 

 私と友人は時間をかけて完食する。お互いすっかり満足であり。

 幸せな顔をして退店。 

 

                  ◆

 

 うどんを食べ終えた我々は。

 一路海を目指す。住宅街の中の狭い道路を通り続け。

 1キロ程歩いたところで到着。

 

 奈多漁港。福岡市東区の海っぺたの漁港。福岡市内だと言うのに海が綺麗だ。

 私達はそんな風景を眺めながら、堤防に歩いていく。

 堤防に着けば。Youtubeで紹介されているだけあって座を広げた釣り人がたくさん居る。

 

 私達は釣り人の間に座を構えて。

 釣りを開始する。

 私はウキ仕掛けに下カゴサビキをセッティングして、釣りを始めたが。あっという間に根がかりさせてしまい。あっという間に手持ちの仕掛けを使い切る。

 

 その頃友人は。ウキ仕掛けの上カゴサビキ釣りをしていた。

 最初の頃は釣果がなかったが、エサに魔法の粉―集魚剤―を混ぜると、あっという間に釣れるようになる。

 

 私はそんな友人の手伝いをしながらウキ仕掛けの上カゴサビキ釣りの仕方を勉強。

 私が勉強している間に友人はガンガン釣る。釣れる魚はコノシロが中心。

 コノシロ。地域名はサッパ、ママカリ。小骨が多いが食べれて旨い魚である。

 

 夕方までにバケツ一杯にコノシロを釣る。ついでにアジも釣れる。

 いやあ。福岡の釣りで初めてのまともな釣果。嬉しいモノである。ま。贅沢を言えば私が釣りたかったが。

 

                  ◆

 

 私達は日没と共に奈多漁港を後にして。真っ暗な道を歩いて奈多駅まで戻り。

 奈多駅から最寄りの駅に帰る。

 そして最寄り駅でスーパーに寄る。釣った魚を調理するためである。

 とりあえず。私達はコノシロを唐揚げに。アジはアジフライにする事に決める。

 

 私達は家に帰ると。タバコを吸って、酒を呑んで。

 調理を開始する。魚をさばく担当が私で、調理が友人。

 私は以前、スーパーの鮮魚コーナーで働いており。そこそこ魚には詳しいからだ。まあ、捌くのは初めてだけど。

 

 私達は半分酔いながら、コノシロの唐揚げとアジフライを作り。

 気づけば21時である。

 

 コノシロの唐揚げとアジフライは抜群に美味かった。

 コノシロの天ぷらは淡い白身の旨味が唐揚げの味付けとマッチがよろしい。

 アジフライは説明不要。臭みもなく、タルタルソースとよく合う。

 

 私達はいつもの呑み会に自分たちで釣った魚をさかなとして添えた。

 私達二人の共同作業。中々悪くない。

 上機嫌で酒をしこたま呑んで。私達はいつしか眠る。

 

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