三日目、四日目『俺達はとりあえず海に行く』

 3日目の朝を迎える。

 相変わらず友人の起床は遅い。

 起きたのは9時。日もすっかり昇ってしまっている。

 

「今日は車を運転したい」起きた友人はこうのたまった。

 今日の予定は福岡の臨海部を回る予定だったのだが…どうにも気に入らないらしい。

「はいはい」私はこたえる。どうせ、私の立てた計画など最初から気に入ってないことは分かっているのだ。

 

 車を運転することに決めてしまうと。

 友人の溜まった洗濯物をしにコインランドリーに行き。

 洗濯をしている間に今日の行き先を決める。

「近場の糸島でよかっちゃない?」私は言う。慣れない地を友人に運転してもらうのだから、近場を提案してみたのだ。

「他県に行きたい」友人は言う。

「遠かやん。片道、車で2時間は見とかんと」

「それでええねん」

「んじゃあ…佐賀の呼子よぶこかなあ。海辺に近いし。イカが美味い」

「それ魅力。よし。レンタカー屋に行こう」

 

 友人の洗濯物を済ませると。

 私の家の近所のレンタカー屋に行く。新幹線の高架下のこじんまりとした店である。

 レンタカーの店は。なんだか少し怖かった。やからみたいな兄ちゃんに案内してもらい。

 

 私達は車、軽自動車をレンタルし。

 下道を迷いながら走った後に高速に乗ってしまう。

 

 西九州道。私達はひた走る。

 友人は慣れない道ながらも軽快に運転し。

 呼子を目指す。とりあえずは昼飯をどうするかだが―

「呼子のイカと言えば『萬坊まんぼう』たい」

「…そこで良いんじゃね?目的地にセッティング」

「あいあいさー」

 年末年始の西九州道はあまり混雑はしていなかった。

 

 1時間半後。

 私と友人は呼子に到着し。海中に浮かぶ店の『萬坊』に到着したのだが。

 いやあ。まさかの2時間待ちである。今は13時。15時まで待たされれば昼飯ではなくなり、早めの晩飯になる…ま。いいのだが。

 

 『萬坊』は湾の近くの海中に浮かんでいるのだが。

 そこの海水は綺麗なモノで。釣り好きの友人はテンションが上がっている。

 桟橋から見える海には魚が泳いでおり。

「ここで釣りしてぇ〜」としきりに言っている。

「サビキでも釣れるかいな」

「爆食いですよ」

 

 私と友人は。2時間待ちを車を運転して過ごす。

 『萬坊』の近くから繋がっている離島へと車を走らせ。

 そこで島の長閑のどかな風景を眺め。ここは本当に日本だろうかと思う。

 

 2時間はあっという間に過ぎ。

 私と友人は海中席に案内される。海に浮かんでいる店の地下階。

 その席には。窓が付いており。そこから海中が見渡せる。

「綺麗な海や、まったく」友人はうっとりしながら言っている。

 

 私達は。イカのコースを注文した。イカのシュウマイと活造り、後造りの天ぷらが食べられるコースである。

 

 注文してしばらく待つと。

 前菜とイカのシュウマイが来る。ここはイカのシュウマイが名物。

 私は早速舌鼓を打つ。いやあ。このイカのすり身入りのシュウマイがたまらん。

 

 シュウマイを食べ終えると。

 メインであるイカのお造りが登場。

 まだ生きているのかゲソの辺りがウネウネしている。

 使われていたイカはアオリイカ。少し白身がかった色をしていた。

 イカの刺身に舌鼓を打つ。

 イカの柔らかな身にはほのかな旨味が伴い、醤油とよく合う。

 イカのお造りを食べてしまえば、後は後造りの天ぷらである。

 天ぷらにする為に店員さんがイカを回収していく。その際イカはゲソを使って皿に張り付いていた。まだ生きていたのか。いやあ。新鮮だな。

 

 後造りの天ぷら。イカのゲソ。

 天つゆに浸して食べる。刺身とは違い、コリコリとした弾力の中に旨味がほんのり。

 これならいくらでも白飯が進む。

 

 コースが終わった。ぱっと見は少ない量かなと思っていたが、案外腹にたまる。

 デザートの大福を食べ。私達はほうじ茶を啜りながら、席にある窓を眺めていた。

 そこには魚が泳いでる。自由に。

「釣りてぇ〜」友人はまだまだ釣りがしたいらしい。

 

 『萬坊』を後にする私達。なんやかんや16時を回っていた。

 レンタカーの返却は20時。今は年末だから何が起こるか予想は出来ない。なので早々に帰る事にした。 

 

 私達は来た道を戻って。

 19時にはレンタカー屋に車を返却し。

 私の家に帰った。当然、また家呑みである。

 この日は日本酒を開けてしまい。私達は悪酔いをする。

 本当は『萬坊』でイカを食いながら呑みたかったな…日本酒。

 

                  ◆

 

 4日目。

 二日酔いの朝を迎える。私達はそろって寝坊し。

 起きたのは10時である。

 実は。昨日、日本酒を呑んでから記憶がない。事前に睡眠薬を飲んだのがまずかった。

 

「おはよ…今日はどうするよお」

「何しようかね」

「俺さ、昨日でカネがヤバイ」私の財布は。ここ2、3日で急激に目減りし。ちょっと危険水域に入っている。

「んじゃあ…釣りで良いかなあ」

「んだね。箱崎ふ頭に行くかあ」

 

 私達はかわりばんこで風呂に入ってしまうと。

 早々に家を出る。とりあえずは博多に向かう。百均で釣り道具を補充しなければならない。

 

 今日は12月31日。大晦日であり。

 博多の街、博多の駅は大混雑をしていた。

 私達はデカイ百均があるバスターミナルへ行き。

 そこで釣り道具を補充してしまうと、上層階に行き昼飯を食べる事にする。

「…白米が食いたい」友人はそう宣い。

「んじゃあ。定食屋行くかね」

 

 バスターミナルの上層階。そこの『しらすくじら』に店を定める。

 時刻は11時半。まだ混雑しておらず。友人が来てから初めて並ばずに飯が食える。

 私達は胡麻鯖定食を注文する。一応、福岡名物を攻めた訳だ。

 

 5分もすると定食が到着。

 胡麻鯖―鯖の刺身を甘辛いタレに漬けて胡麻をふりかけたモノ―と塩サバ焼きの定食。

 久々にごはんモノを食べた気がしないではない。

 胡麻鯖は。淡白な鯖の旨味と甘辛いタレがベストマッチだった。

 

 私達は昼飯を食べ終えると。

 地下鉄の駅を目指す。地下鉄で貝塚まで出てそこから箱崎ふ頭まで歩いていくカタチだ。

 

 長い長い道を歩いて行けば、ふ頭に到着する。いい加減この長い道にも慣れてきた。

 だが。今日の海は荒れていた。もともと風が強いなとは思っていたが。

 予想以上の荒れ方である。これじゃあキャストしても流されてしまう。

 私達は波が収まるのを待ち。10数分後に釣りを開始する。

 今回はぶらくり釣りである。重りの付いた針にイソメの疑似餌を付けて釣る釣り方。

 私は今回はキャスティングの練習。友人はぶらくりの他にも色々釣り方を試すらしい。

 

 私達は13時から17時まで延々と釣りを続けてみたが。

 強風吹き荒れる中、釣りをするのは中々辛い。マジで寒い。最後の方は手がかじかんで仕掛けを付けるのも一苦労だった。

 

 17時になると私達はギブアップ。釣果は坊主。この荒れた海では釣れる訳がない。今回竿が引いたのは3回の根がかりだけ。

 

 寒い中私達は歩いて帰る。

 帰り道に晩飯を食うため『スシロー』に寄る。

 『スシロー』は大晦日だというのに混んでいた。

 私達は寿司を食べながら、今日の釣りの反省会。箱崎ふ頭は中々渋い海だという事で意見が合致する。

 

 寿司を食べ終えると。私達はスーパーに寄って酒を買う。

 そしてスーパーの近くの筥崎宮の参道を覗いて帰る。大晦日の夜なのに出店が出ていたのだ。

 参道を覗いたついでに。筥崎宮をもうでておく。

 今年最後のご挨拶。とりあえず仕事に就けるようにお祈りしといた。

 

               (続く?)


 

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