東京パル子

ナリタヒロトモ

第1話

新宿区歌舞伎町のゴミ置き場、そこでハルコは死にかけていた。

 真夏の暑さで生ごみはひどいにおいを出していたが、それは春子も同じだった。下着もつけてないので、膣と肛肛門から昨夜相手にした男たちの体液が漏れた。

ハルコはいつかアメリカに行きたいと思っていたが、この町すらほとんど出たことがなかった。本当なら高校に通う年齢だが、中学校も1日も行ったことがなかった。

生理が始まる前に義父の慰みものとなり、それからはそれを生業として生きてきた。ヤクザから買ったクスリで体はボロボロとなり、内臓と脳が致命的にやられていた。

走馬灯というのかしら?ハルコは昔のころを思いだした。それは境遇からなのだけど、一度も本当のことを言ったことがなかった。ハルコの言葉はすべて嘘で、子供の頃から嫌われ者だった。

(何も良いことのない人生だった。そして最期はゴミと一緒に捨てられてしまった。)

まとわりつくハエは気にならなかったが、8月の太陽が眩しくて、目を閉じたかったのだけど、もうそれも出来なかった。

(ああ、私はこのごみ溜めで死ぬんだ)とハルコは思った。

しかし物語はここから始まるのだった。


1.新宿

 その後、ごみ回収に来たパッカー車にハルコが投げ込まれた。一糸まとわぬ裸で、しかもハルコは小柄で痩せこけていたので、作業員がセクシードールとでも思ったのだった。

 「ぎゃっ」とハルコは短く叫んだ。

 回転するローダーにハルコが巻き込まれたのだった。でもその声で作業員が気付くところとなった。中国福建省から日本に夢を描いてきていた作業員はその日から一睡も眠れなくなった。

 だが闇金ウシジマくん(*)ではそのまま生ごみとして回収されていたのでハルコはラッキーであったとも言えた。 

 *日本の漫画家である真鍋昌平による漫画。読むと不眠症になる。


 ハルコはそこで両腕を失った。作業員たちが必死になってバラバラになった両腕を回収したが、生ごみにまみれてしまい、とてもつなげる状態ではなかった。そのためハルコはヴァイオレット・エヴァーガーデン(*)のように義手となった。

*暁佳奈による日本の小説。および、それを原作とするアニメーション作品。イラストは高瀬亜貴子が手掛けている。傑作。


 両腕を失ったハルコは救急車で帝国大学病院に運ばれたが、そこで死を確認されただけだった。

 またハルコは無戸籍者として遺体はそのまま献体として大学病院へ残された。帝国大学医学部、第3病棟、第11死体安置室、そこにハルコはいた。

 そこに医師2人が現れる。

 1人は帝国大学医学部教授お茶の水ユースケ、60歳、ハーバード大学の客員教授であり、宮内庁の嘱託医師として皇族方も診られる、日本最高峰の医師である。

 もう1人は駿河台エージ博士。お茶の水ユースケ博士よりも20歳も若い、40歳であった。ケンブリッジ大学の客員教授であり、彫が深く、趣味が筋トレという童貞であった。さらに常に肛門にきゅうりを入れている変態でもあった。

 二人はホモセクシャルな関係にあり、それぞれ「ハニー」、「ダーリン」と呼び合っていた。また若いころショッカー(*)と呼ばれる秘密組織に誘拐され、そこで改造手術の訓練を受けていた。

 *『仮面ライダー』に登場した、世界征服を企む謎の国際的秘密組織(Wikipedia)。


 ごみ溜めに捨てられてパッカー車で両腕を失ったハルコは次亜塩素酸とアルコールで洗浄された後で手術台に置かれていた。

「じゃあ、始めよう。ダーリン」

 「ええ、ハニー」

 こうして72時間に及ぶ改造手術は始まったのである。


 ハルコは手術後も24時間は昏睡状態にあり、さらに24時間後に新宿大ガード東のロータリーで解放された。夏に合わせた白いワンピースに大きなプリムのついたやはり白い帽子をかぶっていた。靴は赤いパンプスであった。背の低いハルコのためにハイヒールも提案されたが、ヒールがハルコの戦闘能力を抑えてしまうのを懸念して、組織はパンプスを選んだのだった。

 ハルコはぼやけた頭のままに、東へ向かう靖国通りを北へ抜けると、短かったその人生のほとんどを過ごした歌舞伎町へと歩いて行った。


 そこは巨大財閥であるアテネ地所所有である歌舞伎町アテネビルだった。総ガラス張りの40階建てビルの16階から22階までが広域ヤクザ龍神組の事務所になっていた。もう何年もハルコが寝泊まりした場所であり、ごみ溜めに捨てられる前の夜に客を取らされた場所でもあった。

 だが誰もそれを知らない。ハルコはビジネスマンたちに交じって22階に行く。

 22階に着いた。ハルコは習ったことのない空手で武装したガードマン2人を倒すと、工場と呼ばれるロビーに入って行った。

そこはすべての窓が完全遮光され、完全防音も施されたフロアだった。薬品の匂いがして、怪しげなガラス蒸留装置で薬が作られていた。床には何人かの少女たちがほとんど裸で寝転がっていた。それは捨てられる前のハルコだった。クスリで頭をやられて、眠っているが目を閉じることも出来なかった。

クスリを打たれていたころのハルコには分からなかったが、今は分かった。

売春は無知な少女たちにとっても恐怖は伴い、躊躇する。しかしそれをうながすのがクスリだ。クスリによる売春、クスリによる盗難、クスリによる強盗、クスリによる殺人。常に犯罪とクスリはセットになっている。

ハルコが皮下注射されたガソリンの匂いがする、そのクスリはデソモルヒネだった。


ロシアでは1998年にデソモルヒネが違法な鎮静薬に指定されている。しかし2010年頃から密造された粗悪なデソモルヒネの蔓延が問題になりはじめている。ロシアではコデインを含む鎮静薬が2012年6月まで処方箋なしで購入可能であり、使用者は100万人を超えていたと推定されている。

わずか100ルーブル程度(数百円)のコデインを含む市販のせき止め薬を材料として、素人でも自宅で簡単に合成できる製造方法がインターネット上で広まったことが蔓延の原因として挙げられている。コデイン、ヨウ素、リンから密造されることは、プソイドエフェドリンからメタンフェタミンを密造する過程に似ているが、密造されたデソモルヒネはさらにガソリンを使用するなど劣悪な環境で製造されるため、毒物及び腐食性がある不純物を含んでいる。

*参考文献 Savchuk, S. A.; Barsegyan, S. S.; Barsegyan, I. B.; Kolesov, G. M. (2011). “Chromatographic study of expert and biological samples containing desomorphine”. Journal of Analytical Chemistry 63 (4): 361–70


参考:インターネットに公開されているデソモルヒネ合成方法


ロシアでは密造されたデソモルヒネは「クロコダイル」と呼ばれているが、これは乱用で皮膚がびらんして黒や緑に変色し、ワニの皮のような外観を示すことからその名前が付いたとも言う。「クロコダイル」を常習的に使用すると、注射部位の血管が破壊され、血流が停止して周囲の筋肉・細胞組織の壊死をもたらす。長期に使用すれば注射していた部位の壊疽を引き起こして骨が露出し、凄惨な症状を示すため「flesh eater drug(生身を喰いあらす薬物)」、「cannibal drug(人食い薬物)」の異名を持つ。高確率で死亡にいたる致命的な結果を招き、常習者の平均余命は2-3年を下回るといい、回復しても四肢の切断など、重大な後遺症をもたらす。

密造デソモルヒネの乱用は、2002年にシベリア東部で報告されたが、以来ロシアと旧ソビエト連邦地域で汚染が広がっている。2011年10月には、「クロコダイル」の乱用がドイツにも広がっていることが判明し、いくつかの報道機関によると、すでに多くの死者が出ているとの主張もある(*)。

*出展 Wikipedia


人の幸福とは幸せな事象、例えば結婚、出世、子供の誕生とかで脳内にアドレナリンと呼ばれる化学物質が生成されると感情として引き起こされる。クスリはそのような事象なしに幸福を化学物質で再現する。その直接的で強力な信号は脳に直接働きかけ、人を偽りの幸福へといざなう。

 クスリを打たれた少女たちは皆ハルコと呼ばれていた。それは使い捨ての備品の名前だった。

エヴァンゲリオンの綾波レイ(*)よりも悲しい運命の少女たちだった。

 *エヴァンゲリオンヒロインの1人。エヴァンゲリオン零号機パイロット。髪型は水色のショートカットである。(Wikipedia)


 その先の四谷ジョージと呼ばれる幹部がいた。灰色のアルマーニに身を包んだ帝国大学卒のエリートだった。

 四谷ジョージはガードマンたちの悲鳴を聞いてただならぬ事態を理解した。そして手下たちに右手を上げて合図をするとコルトの安全装置を外させると、その指先を白いワンピースを着たハルコに向けて、一斉射撃を指示した。

 毎月一定の訓練を受けている手下たちは正確にハルコを狙った。その何発かはハルコにあたった。

「ぎゃっ」とハルコは短く叫んだ。

ハルコは白いワンピースを脱ぎ胸元を見た。そして漆黒の乳首の周りに多くの赤くなった痣を確認した。それは銃創であったが、弾は皮膚にめり込み、出血はあるものの内臓には達していなかった。

すべて跳ね返されており、ハルコ自身は1滴の血も流していなかった。

 ハルコは頭蓋骨内に設置された電子頭脳で(だがこのままでは連中が近づくことで弾の威力がまし、やられる)と計算した。

 まだ口径は日本の警官と同じ38(9.7mmφ)であったが、四谷ジョージの胸のふくらみは口径50(12.7mmφ)を隠していることを意味していた。

 (早く片付けないとやられる)

 ハルコは対処方法を計算した。

 そして「ロケットパーンチ」(*)と叫んだ。

 *『マジンガーZ』に登場する人型ロボット・マジンガーZが装備する武器の1つ。(Wikipedia)

 ハルコの両腕の義手から手首から先が離れ、ジェット噴射で飛んで行った。

 そして右と左から四谷ジョージ率いるヤクザ軍団に襲い掛かるとその左胸を貫通し、ちょうど真ん中にいた四谷ジョージのところで爆発した。

 流血とうつろな意識の中で四谷ジョージは自分を殺しにきたその女を見上げるのだけど、どうしてもそれが他の売春婦たちと区別出来なかった。不幸で薄汚れた売春婦のひよっこ(*)だった。

 *映画『タクシードライバー』(原題: Taxi Driver)でジョディフォスター演じる少女売春婦をマフィアが呼んだ言い回し。


四谷ジョージは考えた。何日か前、ふらふらと出かけてゴミ捨て場で倒れていると手下に聞いた女に似ている気もしたが、それがどんな娘だったかは全く思い出せなかった。

 胸もとのマグナムをだそうにも両腕はもげてしまい、それも出来なかった。

 だから、渾身の気持ちを込めて、「助けてくれ」と言った。

 近づいたハルコはその声を聞き、その内容を理解したのだけど、思ったのは(お腹が空いた)というだけだった。

 ジャンキーのハルコは今まで食欲がわいたことはなく痩せこけていたのだけど、もう何年かぶりに空腹を感じた。

 それはエネルギーを消費したからではなかった。これくらいの運動量はハルコ体内の原子炉で十分供給できるものであった。それよりも再び失った両腕の再生と出血を補うための素材としてのタンパク質が必要だったのだ。

 四谷ジョージたちがついていたテーブルの上には世界三大料理と呼ばれる中華料理、フランス料理、トルコ料理をはじめ、世界中の贅沢が並んでいた。しかしハルコはそれを食べたいと思わなかった。

 ハルコは両腕を失っていたので屈むと、犬のような姿勢で四谷ジョージの内臓を食べた。四谷ジョージのタンパク質はハルコの体内でアミノ酸に一度分解され、その後再びハルコに必要なタンパク質に合成された。

 その間、四谷ジョージはずっと「助けてくれ」と言っていたのだけど、ハルコが全く聞く気がないのを分かると、  

 「せめて殺してから食ってくれ」と言った。

 ハルコはヤクザ10人をすべて食べた。ヤクザたちはクスリどころか酒もタバコも飲まないストイックな連中であったので、ハルコは良質なタンパク質と骨質、血液を取り入れることが出来た。タンパク質はハルコの胃袋の工場でアミノ酸に分解され、ハルコの遺伝子を構成するタンパク質へと再構成された。その工程はハルコの内臓に位置する工場で通常の人間の数万倍の速さで行われた。何人かを食べ終わる前にハルコは失った両腕が戻っているのに気付いた。

 ハルコは連中を食べ終わると彼らのスマートフォンを食べ、パソコンを食べ、情報処理に必要な部品を取り入れた。さらに拳銃を食べ、鉄と火薬を体内に入手した。ハルコの歯はダイヤモンドからなるグラインダーで出来ており、胃袋で王水(*)によりすべては分解された後で元素別に分類された。そして鉄は肝臓に位置する溶鉱炉で必要な部品へと加工された。

*濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積比 で混合してできる橙赤色の液体である。全ての金属ではないが、金や白金といった貴金属を始めとして多くの金属を溶解できることから、錬金術師によってこのように命名された。(Wikipedia)


ようやく空腹を満たしたハルコはクスリ製造の薬品の1つであるヘキサン一斗缶を飲み干した。ヘキサンとはすなわちガソリンのことである。

ハルコは軽くゲップをしたのだけど、その息に火が付き、わずかに息のあったヤクザたちも火だるまになった。

殺戮と飽食の後、ようやくハルコは横たわるクスリ漬けの少女たちに気がついた。それはハルコだった。捨てられて、流されて、懸命に生きようとしたのだけど、最期はハエにたかられる身の上となったハルコだった。

うつろな瞳、言葉にならない声、目を開いたまま、眠る少女たち、

(殺して・・)、わずかに動く唇でその遺志をハルコは読み取ったが、何もできなかった。

小学校もろくに出なかったハルコだが、電脳のおかげで、ここで何があったかを理解した


多くの文明国の場合、法的には直接的に売買されるのは、"契約"や"契約相手である権利"、"契約金や密入国費用という貸した金の権利"なのである。これが契約内容による不自由さや無知、その他の環境によって一般社会の法的に保護された状態から外れた環境に置かれることで、人間自体を売買し拘束できるかのような状態が作られる。このような種類の契約や実態を(非難の意味を込めて)人身売買という。当人側がこのような不利な苦労と危険をある程度は覚悟して了承し、契約をすることを身売りという。このような状態に置かれた人を(非難の意味を込めて、実質的な)奴隷と表現することもある。現代の中・先進国で人身売買の奴隷と表現される人の多くはこの状態のことであり、借金か一定期間の拘束契約がその実質的な拘束力の中心をなしている(合法という意味ではない)。低中進国では契約より慣習の力が強いこともある。

文明国では、大抵は一般の労働契約との延長線上にある面があり、その実際上の拘束や搾取レベルが一定を越えたところで法的保護によって防止・救済されるべきものでもある。このレベルは時代によって異なる面がある。

現在、多くの国では、日本の労働基準法及び職業安定法に相当する法律によって違法な労働や契約を強行法規的に禁止しており、違法レベルの条件で結ばれた契約は法的に無効である(Wikipedia)。


少女たちの中には外国人もいた。


国境を越えて人を移動させ大きな利益を貪る犯罪者集団があとをたたない。犠牲者の多くは性関連産業に送り込まれる女性や子どもであり、アジアでは過去30年足らずの間に3000万人もの女性や子どもが犠牲となったと言われている。

 2000年末に国際組織犯罪禁止条約及び同条約を補完する「人身売買、特に女性と子どもの人身売買の防止・禁止・処罰に関する議定書」が採択された(日本は未署名)。同議定書は、「人身売買とは力の行使又はその威嚇、その他の形態の強制、誘拐、詐欺、欺瞞、権力濫用、弱みにつけ込むこと、またはある者に対して支配力を持つ人物の同意を得るための金銭や利益の授受などを手段として、搾取を目的として、人の募集、搬送、移送、住居提供、受け取りを行うことを意味する。搾取には、少なくとも他人の売春からの搾取、その他の形態の性的搾取...が含まれる」と定義する。対等でない力関係を利用した搾取であり、問題の根底には国家間の経済格差、送出国・受入国双方における女性差別、民族差別等とともに、この差別構造を支える立法・司法・行政のあり方がある。

 日本は人身売買で売られる女性達の主要な受け入れ国の1つである。1980年代の前半にフィリピン、台湾、韓国等から多くの女性が日本に送り込まれ、後半からはタイ人女性が増加した。10兆円産業と言われる日本の性関連産業は「買い手」がいるからこそ成立するが、多くの日本人男性が女性達を買い、周囲の人間は(女性も含め)、見て見ぬ振りをする。たまに女性達の悲惨な状況が報道されても、「金儲けのために承知で来ているのだから、多少過酷であっても自業自得」としか考えない。(*)

*Wikipedia 

参考:日本への人身売買の実態と法的課題 吉田 容子(よしだ ようこ)

京都YWCA・APT、弁護士


 何もできないハルコは少女たちの合間を抜けると階下へ降りていった。

 8月のギラギラした太陽の下をハルコは歩いていく。

 真っ白だったワンピースは今や赤く染まっていた。

 パンプスの中はハルコの血とヤクザたちの返り血でびしゃびしゃに濡れていた。

 ハルコは初めて感情をもった。それは悲しみであり、怒りであった。

 GPSがハルコを誘導する。ハルコは新宿17番地のビルの前を過ぎるとJR新宿駅に向かって歩いていく。


 2.池袋

 改札は手をかざすだけで内部の回路が作用し、通ることができた。

 電脳が教えてくれた。龍神組の大きな事務所が上野にある。することのないハルコの唯一の生きる目的は龍神組の殲滅である。 

 そこでハルコは山手線で上野へと向かう。

  その刹那、急激な便意に襲われ、ハルコは池袋で下車した。

新宿から池袋の間には新大久保、高田馬場、目白があるが、その間はまだ大丈夫と思ったのでハルコはそのまま通りすぎた。しかし池袋では緊急事態となり、下車したのである。

 池袋駅は全体の1日平均の利用者数は約264万人(年間に直すと約9億6420万人)であり、新宿駅、渋谷駅に次いで世界第3位の利用者数となっている。(*)

 *Wikipedia

 このような大きな駅は多くのトイレを有しているが往々にしてそのトイレは使用者で塞がっている。そのため二日酔いでお腹がゆるくなったサラリーマンたちは毎朝大変な思いをする。

 ハルコは電脳でトイレの池袋駅及び近隣のトイレ配置図を呼び出し、回るが、どこも空いていない。ハルコの電脳はトイレの位置を正確に示してくれるが、そこに人がいるかは、行ってみないと分からないのだ。今、スマートフォンで最も求められる機能は空いている便器の情報だとハルコは思った。

 ハルコは発熱し、額で脂汗がにじんだ。実際のところ、ショーツも少しにじんだ。

 せっかく復活したハルコであるがもう少しで1回目よりも悲惨な昇天をとげるとこであった。

 ハルコは池袋駅西口にある東武デパート6階の家具売り場まで行って、ようやく用をたした。

 「ふう」、ようやく息をつくハルコ。新宿の戦いでも無表情であったのに、目からは大粒の涙がこぼれた。

 

 ハルコは10回も排便したが、1回ごとの量が多いので、10回水に流す必要があった。ひどいにおいがして、隣の個室にいたOLがハンカチで口を抑えながら出て行くのが分かった。

ハルコの排泄物は例えば水銀、ヒ素、鉛のような人体にとっても、工業機械にとっても害があり役に立たないものであった。有機化された重金属の固まりは下水管を構成する金属とアマルガムを形成し溶かし、デパート内を侵食していった。それは下水管の詰まりと言う形でまず現れたが、本質的には鉄骨の破壊を意味した。

 実際に1962年に開店し、売上高997億円を誇る老舗デパートはそのために建て替えをすることとなる。表向きの理由は耐震強度の補強であったが実際には建物を侵食したハルコの便が発した強烈な臭いのためであった。

 そして後に高レベルの放射線が確認されると東武デパートは細かく砕かれるとコンクリートで固められて高レベル放射性廃棄物として処分されることとなった。その後処分地の応募を募り、高知県安芸郡東洋町が応募を行ったが、町長が町議会に諮らずに行った応募を巡って賛成派と反対派で町内を二分する議論となり、その後行われた町長選によって、応募した町長が落選し、反対派の新町長が応募を撤回し、計画は白紙となった。そのため晴海の

物流倉庫で半永久的に保管されることとなる。(*)

*一部、Wikipedia

 命からがら個室から出てきたハルコはまず下着を買った。次に、気に入ったのか、同じ白いワンピースを買ったが、サイズは前よりも2段階大きいものとなった。ハルコは背が伸び、胸も大きくなったいた。

 また支払いは改札と同じく、手をかざすだけで済んだ。


 ハルコは池袋を後にする。

池袋は、新宿・渋谷と並ぶ山の手の3大副都心の一つ。池袋駅を中心に駅の東口及び西口には大規模な繁華街が広がり、巨大な百貨店や専門店、飲食店などが局在する。北口および東口サンシャイン通り裏手、同明治通北側一帯には大規模な歓楽街が広がり、サンシャイン60(サンシャインシティ)や豊島区役所などの超高層ビルが建ち並んでいる。東口にはビックカメラ池袋本店やヤマダデンキLABI1日本総本店池袋が位置し、家電量販店の激戦区になっている。他にもラーメン激戦区・書店激戦区としても知られる。2020年7月には旧豊島区役所跡地周辺に超高層ビルのHareza Tower と東京建物Brillia HALL をはじめ8つの劇場を含む文化にぎわい拠点「ハレザ池袋」が開業した。また池袋駅西口では三菱地所による「池袋駅西口地区再開発事業」が計画されており、超高層ビル3棟が駅前に建設される予定となっている。

東口方面には西武池袋本店、池袋パルコ(本店)、サンシャインシティ(サンシャイン60)、豊島区役所等、西口方面には東武百貨店池袋店(本店)、ルミネ池袋(旧称メトロポリタンプラザ)、東京芸術劇場、池袋西口公園等がある。(*)

まだハルコが目覚める前であったのでこれらのビルは被害を免れたのだった。


 3.上野

 池袋から上野の間には大塚、巣鴨、馬込、田端、西日暮里、日暮里、鶯谷があるが、これらの町は大したものではないのでハルコはそのまま通りすぎた。

 上野とはどのような町であったか?

 電脳がハルコに教えてくれる。

 上野(うえの)は、東京都台東区の町名。また、上野駅を中心とした副都心。現行行政地名は上野一丁目から上野七丁目。郵便番号は110-0005。(*)

 *Wikipedia

 更に調べると次のことが分かる。

 広域地名としては浅草とともに上野・浅草副都心を形成する、上野駅を中心とする一帯の地域を指す。ここでいう上野エリアは、台東区上野、北上野、東上野、上野公園などからなり、日本最初の公園である上野恩賜公園(上野公園)や、デパートや飲食店などが集まる繁華街、喫茶店発祥の地を地域内に持つ。山手線の繁華街の中でも下町的な雰囲気を残す。上野駅は東京でも屈指のターミナル駅であり、かつては北関東や東北地方などの列車や新幹線の起点として、「北の玄関口」の機能を果たしていた。

上野公園は東京国立博物館や国立西洋美術館、東京都美術館などの博物館や美術館が日本で最も集積した地域であり、また東京大学や東京芸術大学も近くにあるため「文化・芸術・学問」の街としての性格をもつ。他にも上野公園内には日本最古の動物園である上野動物園が位置しており、国内外から多くの観光客を集める。(Wikipedia)


 だがハルコの知っている上野はそんなものではない。東京で生まれ育ったハルコは上野を見て来た。

 もうずっと上野は浮浪者の町だった。

 浮浪とは何か?もともとは戦災孤児だった子供をさした言葉だった。

 戦後の戦災孤児は、「国児」としての戦争被害者から一転して「浮浪」している反社会的存在と見られるようになり、取り締まりの対象になった。全国の自治体へは、警察と協力し「浮浪児」を発見、保護者に引き渡すか、児童保護施設へ収容することの徹底が指示された。(*)

 *Wikipedia、参考「戦争孤児問題の制度・法律の変遷」


 1990年代、上野駅は浮浪者であふれていた。それをなくしたいという市民の要望があり、上野にいついた浮浪者たちは行政によって強制退去させられた。その受け皿として生活保護を支給し、ホームレスの自活をうながす政策がなされたが、それでも路上生活にもどる自堕落な連中もおり、結果としてその対策を行政が反社会的勢力であるヤクザに下請けに出すという最悪の結果を招いた。

 生活保護ビジネスである。

生活保護ビジネスとは、ホームレスなどに生活保護を受給させて無料低額宿泊所に住まわせ、入所者に支給された保護費の大半を搾取する、貧困ビジネスの一形態である。近畿地方では囲い屋とも俗称され、2010年以降に大阪府は全国初の貧困ビジネス規制条例を制定し、規制対象としている(Wikipedia)。


 パルコの電脳は話しかける。

「個室寮完備」「3食付」「日払い相談可」と募集広告を出し、このような求人に募集してきた困窮者へ、実は求人の仕事は無いと生活保護を斡旋するように、求人広告で生活保護ビジネスのための人集めをしているケースもある。不当に搾取、着服された生活保護費の返納を求め、囲い屋など貧困ビジネス側へ訴訟を起こすケースも起きている。2010年の大阪府に始まり、一部自治体では首長が音頭を取り、保護受給者の自己決定権を明確化や生活保護ビジネス規制条例の制定などの動きも起こっている。2009年10月時点にも支援者を装った一部の任意団体などが、ホームレスを集めて生活保護を申請させ、無料低額宿泊所に入居させていたことで世論の批判が起きた。この貧困ビジネス批判報道の発端となったのは、千葉県の施設である。ここは入所者に無断で銀行口座開設&生活保護費を徴収・管理、生活保護費の大半を「施設利用料や食費等」の名目で徴収し、、高額の利用料で劣悪な施設の質、施設の賃料の総計原価が、生活保護費支給された住宅扶助費を下回ることなどの問題が指摘された。全国最多の保護受給者を抱える大阪市を中心に大阪府内で貧困ビジネス業者が横行している。2010年5月には大阪市から「囲い屋」とされるNPO幹部や大手不動産仲介会社の社員らが相次いで大阪府警に生活保護搾取等で逮捕された。2009年にも元派遣男性を軟禁し、保護費の多くを「経費」と称してピンハネしていた事件など各都道府県における生活保護ビジネスが報道されている。

無料低額宿泊所は、板敷きに布団1枚といった環境や、薄いベニヤ板で仕切りを設けただけの狭い箱部屋のようなものも多い。また受給者の預金通帳を預かると称して取り上げていた事例もあった。無料低額宿泊所は、2009年時点で全国に439箇所あり、1万4,000人が宿泊しており、うち170箇所、4,700人が東京都で、千葉、埼玉、神奈川を含めた1都3県で全体の8割を占めるといわれる。(*)

*Wikipedia

パルコはホームレスも嫌いだったがヤクザはもっと嫌いだった。

ホームレスは意気地のない嘘つきばかりなのをずっと見て来た。ハルコ自身ホームレスであったこともあった。

ホームレスになるような弱った人、間違った人、つまずいた人、愚かな人は世の中には絶対にいる。そしてヤクザはそうした人を狙う吸血鬼のようなものだった。

貧困ビジネスは龍神組にとって今や大きな収入源の1つであり、その本拠地である上野はその本社でもあった。クスリ漬けの少女に売春をさせる新宿支店よりも一回り大きく、江東区下谷二長町十一から三十五までの町そのものが龍神組であった。その中には12のビル、3つの兵器工場、1つの高層ビルが含まれていた。龍神組本社勤務4913人、世界12か国に関連会社157社を有し、グループ企業では社員18780人を数える。


新宿支店の惨劇は上野本社にも伝わっていた。新宿をパルコが出たところからドローンで追跡されていた。何故か、池袋で途中下車したが、予想通り上野へとやってきた。

ハルコは電脳に導かれ下谷二長町二十一丁目に来た。

新宿から池袋を抜けて、上野に来るまでにハルコの身長は20cmも伸び、胸のふくらみ、唇も厚くなっていた。年齢とは出生からの経過年数を言うのだから、急激に年を取ったというのは矛盾だけど、ハルコの体は23歳成人女性のそれとなっていた。

ハルコは白いワンピースに身をまとい、赤いパンプスを履いているが、素手であった。正確にはマルイ上野横のとおりで受け取った風俗店勤務案内のティッシュペーパーを持っていた。今やそんな気持ちはないのだけど、ティッシュも持たないのは成人女性として心許なかった。

対する龍神組は一個師団(*)を用意していた。

*師団(しだん、仏・英: Division)は、軍隊の部隊編制単位の一つ。旅団・団より大きく、軍団・軍より小さい。師団は、主たる作戦単位であるとともに、地域的または期間的に独立して、一正面の作戦を遂行する能力を保有する最小の戦略単位とされることが多い。多くの陸軍では、いくつかの旅団・団または連隊を含み、いくつかの師団が集まって軍団・軍等を構成する。(*)

(Wikipedia)

師団長は組長であるが、龍神組の組則施行令第31条(補職の特例)により若頭を充てることができるとされている。

そのため指揮は龍神組若頭四谷ヒロシが務めた。新宿支店長四谷ジョージの兄であった。

ビルに囲まれ、完全閉鎖された約4.7ha(東京ドーム1つ分)の空間で、龍神組2000人とハルコ1人が対峙した。

まずは龍神組構成員たち数百人がハルコに襲い掛かる。多くは若者で、振り込め詐欺(特殊詐欺)要員として雇われた連中だ。全員が出し子のような野球帽に黒いサングラスをかけていた。それは龍神組から支給されたものであったが、武器であるナイフ、こん棒、金属バットは持参であった。ハルコ自身も出し子をしたことがあった。だから彼らはハルコのもう一つの姿と言えた。新宿のごみ溜めで死んだハルコだった。

だがハルコは容赦しなかった。自分を殺そうとして向かってくるものは殺しても良いという、スポーツマンシップとは似てそうで全く違う感情が芽生えていた。

ハルコ自身、彼らが自分の姿だと気がついていた。しかしハルコは自分を愛してはいなかったのである。

指先にわずかに力をこめると弾丸が発射された。新宿で食べて取り入れた銃器がハルコの体内で分解、再構成されて、指先に銃口が現れたのだ。同時に10発、ジャイアントロボ(*)の指先ミサイルのように連続して撃つことができた。

*横山光輝作のSFロボット漫画作品、それを基とした特撮テレビ番組。およびそれに登場する架空の巨大ロボットの名前。(Wikipedia)


弾丸にはクスリの毒が塗布されており、効率よく男たちを死に至らしめた。しかしそれは龍神組の狙いでもあった。かつて徳川家康が大坂の陣(*)で乱世後の世を見据え、味方も含め武人たちの消耗を狙っていたのと似ている。女であれば金になるが、何も出来ない男ほど要らないものはなかった。龍神組がリストラ(口減らし)を図ったのだ。

*大坂の陣(おおさかのじん)は、江戸幕府と豊臣家(羽柴宗家)との間で行われた合戦。大阪の陣とも表記する。慶長19年(1614年)の大坂冬の陣(おおさかふゆのじん)と、慶長20年(1615年)の大坂夏の陣(おおさかなつのじん)から成る。Wikipedia

犠牲者は両軍合わせて約2万人とされる。


見捨てられたチンピラ、愚連隊、ホームレスたちが断末魔の先には龍神組エリート組員からなる精鋭部隊がいる。数はわずか10人であるが、機関銃を有していた。彼らはロボットのような防弾鎧を身に着けていた。顔面も宇宙飛行士のように硬質ガラスでおおわれていた。

そして銃器を持っていた。すなわち龍神組として消耗させるのではなく、ハルコ打倒用に用意されたのであった。

銃器部隊の戦闘指揮は龍神組広報部部長四谷ジンノスケが務めた。

死体を踏み越えて進むハルコに一斉射撃された。

AK-47を中心とする7.6 mmφの弾が600発/分×820人=約50万発がハルコに向けられ、その20%、即ち10万発がハルコに当たった。

ハルコも9.7mmφで迎撃するが盾を貫通することはできない。

ハルコの皮膚はガラス繊維で強化された66ナイロンで保護されているが、1秒間に10発以上連続して打ち込まれる弾丸が徐々にめり込んでいった。そしてある瞬間から皮膚が破けすべて体内に入ってしまった。骨は剥き出しになり、右腕は肩から千切れそうになった。左手でポケットからティッシュを取り出し、あてようとするのだけど、左指ごと吹き飛ばされてしまった。

右腕は皮一枚でつながっているだけの状態となった。肩からは血が噴き出るがハルコはそれを抑える気力すらなかった。体がバラバラされる苦痛の中でパルコはゴミのように消えゆく自分の人生を思い、空を見上げた。

「ぎゃっ」とハルコは短く叫んだ。

ハルコの右の鼻の穴に弾丸が入ってしまったのだ。ハルコの頭部に入った弾丸は脳内を3周回り、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、小脳、脳幹、そのすべてを貫通すると左の眼球と一緒に飛び出た。

その時、本人があきらめたのにハルコの体内の工場はフル稼働で危機に立ち向かった。体内にめり込んだ弾は体内で12.7mmφ弾に再構成され火薬が補填された後に咽喉に運ばれた発射口から、残った右目で照準を定めると正確に発射された。

 ハルコの空けた口から発射された弾は精鋭部隊3人の顔面を守る強化ガラスを射抜いた。彼らはヘルメットを赤く染めると倒れた。

 引きちぎれた右腕も再生を図られた。独立した右手内の工場で急速に細胞が作られ、傷をふさぎ、指の再生と本体への復帰を試みた。すなわち引きちぎれた部分から血管がハルコの右肩に延び、かろうじてつながった。やがて血管を構成する細胞は骨に代わり、結びつきはより強固になった。

 一方でハルコ本体からは右腕を再製造するプロジェクトが進行しており、千切れた肩から指先→手のひら→手首の順番に出て来た。

 ハルコ本人はこの情報齟齬による大間違いを止めようと思ったが新しい右腕はすでに体内の工場で出来ており、おやしらずのように右わきの下から生えてきてしまった。

 まるでクモのように右腕だけ2本になってしまった。ハルコは左腕でどちらでも良いから右腕の1本を引き抜こうと思ったが、出来なかった。かえって左腕が痛くなったきた。右腕の方が古いので弱いのである。

(まるで怪物ね)

ハルコはやり場のない怒りを覚えると残った7人の兵隊の3人の股間に集中砲火を食らわせた。右の陰嚢、左の陰嚢、陰茎を破壊した。3人は殺戮の中、生き残ったのだけど、彼らはあのとき死んでおけばと思うこととなるのだ。

戦える4人の龍神組精鋭は態勢を立て直すと対戦車砲RPG-7(*)を持ち出した。これも先の自動小銃AK-47と同じくロシア(旧ソ連)製である。冷戦後、西側諸国のみならず新興国にも後塵を拝する旧ロシアであるが通常兵器の世界では圧倒的なシェアを占めていた。ヤクザだけでなく世界中の紛争地帯で大きなシェアを占めていた。それは安価なだけでなく、性能の信頼性、何よりも耐久性にあった。戦場での粗雑な取り扱い、風雨に耐えるタフさがあった。


*(ロシア語: РПГ-7)は、ソ連の開発した携帯対戦車擲弾発射器。ベトナム戦争から使用され対戦車兵器としては旧式化しつつある一方で、火力支援など多目的に使用できるため多くの国で使用され続けている。さらに安価、簡便であるため、途上国の軍隊や武装勢力、民兵が好んで使用し、世界各地の武力紛争において広く用いられている。

無反動砲の原理で射出される。このため、弾丸の飛翔速度は同口径の他の直射火器と比較して低速であるため、運動エネルギーだけでは戦車の装甲に対して十分な貫徹力を有さない。しかし、成形炸薬弾(HEAT)と組み合わせることにより有効な対戦車兵器となった。

Wikipedia


ハルコは飛び出した左眼球を拾うと目にはめようとした。しかしまぶたの下は固いエナメル質の蓋に覆われていて、入れることができなかった。仕方なくハルコはその眼球を飲み込んだ。かつてハルコの目を構成していた細胞は一度遺伝子レベルまで分解されるとハルコを構成するタンパク質の一部となった。

(お腹がすいた。)

大量の出血と急激な細胞増殖によって構成物質を失ったハルコは再び強烈な空腹に襲われた。

その刹那である。

対戦車砲RPG-7からロケット砲が発射され、ハルコに命中した。

「ぎゃっ」とハルコは短く叫んだ。

発射と同時に砲身後方からのガス噴射で反動は相殺されるクルップ式無反動砲であったため、狙撃者は直ちに次のミサイルを充填し、続けて発射した。

しかし最初の1発で十分なダメージをハルコに与えることができた。ミサイル正確にハルコのへそのあたりに命中し、炸裂した。そのためハルコの胃、十二指腸、小腸、大腸等、肝臓、胆嚢、膵臓が吹き飛んだ。さらにはハルコの女性を形成する臓器である子宮、卵管、卵巣も吹き飛ばされ、床に散らばった。

ちょうど肋骨に下に大きな穴があいたようなものだった。穴は完全に貫通していたため続けて撃たれた2発目、3発目のミサイルはその穴を潜り抜けてしまった。

わずかに残った脇腹の筋肉だけでは支えきれず、ハルコは折れ曲がるようにして前屈し、倒れ込んだ。

ハルコの電脳はこの緊急事態に際し、細胞増殖による復活をあきらめ、体内工場で製鉄した鉄骨による対応を試みた。穴はシャッターで塞がれ内部ではアルミとステンレス鋼により背骨が組まれた。

腹部は炭素繊維とウレタンで再生され、真ん中のみ凹み、へそが形成された。

ハルコは這いつくばりながら、3本の目で上半身を起こすと、自分に向けて必殺の一撃が用意されているのを見た。今、攻撃を受けたら頭部からすべてが吹っ飛び、2度と再構成できないことが予想された。

その時、ハルコの失われた左目が光った。

レーザービームではない。光では質量がないためどうしてもエネルギーとしては小さく、敵を殲滅させることが出来ないのだ。現に機動戦士ガンダムではソーラ・レイ(*)はエネルギー充填に非常に時間がかかっている。

*密閉型スペースコロニーを改造して、それ自体を巨大なレーザーの照射装置としたもの、もしくはそれに類する大量破壊兵器である。ガンダム世界においては他に類を見ない長射程と破壊力を持つが、いずれも大量の電力を必要とし、連続しての使用は困難と描写される。


そのため電脳はハルコ体内の原子炉から核分裂を起こしているプルトニウムそのものをハルコの左目より噴出した。その質量変化はわずか0.0001gであったが、連中を蒸発させるには十分な量であった(*)。

*質量0.0001gはエネルギー89.9M Jに相当し、1000kgの人体(比熱を水と同じと仮定)を2万度に加熱できる量である。

原子炉から眼窩につなげられた配管も過熱しハルコの血の半分も沸騰し、蒸発した。

復活したハルコは立ち上がると口から蒸気化した血液を吐いた。

「げえっぷ」

血液は胃酸を含んでいたため、ハルコ自身の肌も焼き、ひどい口内炎を引き起こし、床を溶かした。

それはかろうじて生き残った龍神組兵士にとっては世界の終わりを告げるラッパのようであった(*)。

*黙示録のラッパ吹き(もくしろくのラッパふき)は、『ヨハネの黙示録』に登場する災害の前触れとなる7つのラッパを吹く7人の天使達。神のみ前に立つ7人の天使達にラッパがそれぞれ与えられ、計7つのラッパが順々に吹かれる。それらのラッパの合図とともに、あらゆる災害が地上で起こる。

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ハルコは男たちを2本の右腕で拾い上げると蛇のようにほとんど噛まずに飲み込んだ。ハルコは新鮮さを求めたため、ほとんどの兵隊は生きたまま飲み込まれた。中には自分の不幸な生い立ちを説明し、命乞いをする者もいたが、ハルコは2本の右腕で男の舌を引き抜くと、ある意味平等に飲み込み、消化した。

それはハルコ自身、泣いて懇願しても男たちに何の容赦されなかったためである。

ハルコは龍神組が用意した対戦車砲RPG-7も飲み込んだ。

対戦車弾以外にもスモーク弾、化学弾、焼夷弾が用意されていたが、ハルコはそれらのすべてを飲み込んだ。

ハルコは失われた臓器、胃、十二指腸、小腸、大腸等、肝臓、胆嚢、膵臓、そして子宮、卵管、卵巣を探したが、戦闘で踏みつけられて床の染みになっていた。ハルコは這いつくばり、長い舌で舐めとろうとするのだけど、スプーン1杯ほどの砂を含んだだけであった。あいまいな意識の中でハルコは自分が人間としての機能を失っていくのを感じた。

この時点でハルコの圧勝は確定していた。ハルコはチタン合金で覆われた腹部にへそが再生されたのを指先の触感で確認したが、もう何度も死んだ身の上だったので、復活をまるで他人事のように感じた。

満腹になったハルコは死体を踏み越えて進み、江東区下谷二長町二十四に位置する龍神組本社ビル、建築規模:高さ300m、延床面積21万2,000m2、地上60階・地下5階(SRC・S造)へと入って入った。

ビルには龍神組社員4913人がいたが、ハルコは皆殺しにした。

そして最後に最上階にいる四谷テンメイの元へと行った。

四谷テンメイはかつて大阪で旧陸軍の工場から鉄くずを掘り起こす仕事をしていたが、その後貸金業で財をなし1代で龍神組ホールディングスを起こした起業家であった。

日本人を騙し、犯し、脅し、時には殺して、金を巻き上げて祖国へと送っていた。徳川一族のオットセイと呼ばれる徳川家斉と同じく53人の子をなしたがその孤独は埋まることはなかった。齢100歳を超え、祖国を失ったものの悲しみは深いしわとして刻まれていた。

そしてその53人の子供はすべて今日、ハルコが殺したのだった。53人はすべて男で龍神組コーポレーションを支えるエリート組員であった。すなわち、四谷ジョージ(新宿支店支店長)、四谷ジョージ(新宿支店支店長)、



四谷テンメイは今まで一度も満足したことはなく、常に不機嫌でまわりに当たり散らしてきたが、全てを失ってみて、初めて自分が幸福であったことを知った。

明日にでも53人の子供たちを殺し合わせて残った1人を跡継ぎにしようとしていたのに、すべては泡と消えたのだった。

子供たちの臓器を移植し、脳以外を全て入れ替えて、永遠の命を手に入れるのも、もはや夢のまた夢であった(*)。

*豊臣秀吉辞世の句


戦前から昭和、平成、令和を生きて来た怪物は目の前の化け物の姿に自分の死期を悟った。階下から聞こえる悲鳴と轟音が徐々に近づく中で、四谷テンメイは全身をプラスチック爆弾で覆い、ハルコと刺し違える用意をした。

最上階である60階にハルコはエレベーターで現れた。すでに身長は2メートル近くあり、服はすべて破れ、全身は犠牲者たちの血で赤く染まっていた。乳首はビンビンに立ち、もっさりした陰毛は漫画版デビルマン(*)のようであり、強い臭いを放ちながらしとどに濡れていた。

*1972年から1973年にかけて発表された永井豪原作の日本のメディアミックス作品。この場合は漫画版を言う。Wikipedia

右腕は2本あり、左目は瞳孔がなく、口から滴る血はガソリンの臭いがした。

四谷テンメイは100歳をとうに過ぎていたが、ようやく死を覚悟した。

四谷テンメイは胃瘻による栄養補給、人口心臓による血液の循環、連続した心室除細動を受けていた。血液は常に透析され、毎日10リットルの輸血と劣化した血液の排泄が行われていた。

しかし四谷テンメイはどうしても自爆スイッチを押せないでいた。

やがてハルコが近づき、四谷テンメイを抱き上げた。しかしその時でも四谷テンメイは死を選ぶことが出来なかった。今まで何人、何十人、何百人、何千人も殺してきたにかかわらず、死が怖かったのだ。

四谷テンメイは海外23か所に隠している財産のありかを言うことと引き換えにハルコに命乞いをした。

「私はまだ生きたいんだ。あと100歳だけで良い。」

ハルコはバタバタとミツバチにように死んでいった龍神組組員のことを思い出し、その不思議な対称性が頭をよぎったが、急激にかわるホルモンバランスのため、深くは考えることが出来なかった。

ハルコは両腕で四谷テンメイを優しく抱き上げるとキスをした。そして胃酸を含む唾液が四谷テンメイの入れ歯を溶かした。

四谷テンメイはその恐怖で危うく死ぬところであったが、それよりも前にハルコはもう1本の右腕で四谷テンメイから取り上げた自爆スイッチを押したので、四谷テンメイは生きたままバラバラに爆発して死んだのだった。塵より生まれたその生涯は今や塵へとかえって行き、もはや輪廻への復活も不可能となった。

*可塑性を持つ混合爆薬のこと。日本国の法律に基づく名称では「可塑性爆薬」と呼称する。C-4やセムテックスなどがある。爆薬単体は安定で鈍感であるため、温度・引火・振動で爆発することはない。火をつけると緩やかに燃焼する。爆発させるためには、電気の通電による起爆が必要となる。

Wikipedia


プラスチック爆弾は四谷テンメイを無機物と水蒸気へと昇華させたがハルコにはかすり傷さえ負わせることは出来なかった。爆発の威力をハルコは皮膚を振動させるエネルギーとして吸収し、肝臓のリチウムイオン電池がフルにチャージされただけだった。

裸を隠すため、カーテンを外すとハルコは古代ギリシャ人(*1)またはエヴァンゲリオン2号機(*2)のように覆い、身を隠した。

*1 古代ギリシアで最も中心的な衣服の材料はウールであった。男女の服装に大きな違いはなく、共に一枚布を体に巻きつけ、時にはピンや帯を使って着付けるものであった。比較的温暖な地域であったため、体にぴったりとした衣服は身につけなかったが、一枚布でできている外套は身分を問わず使用された

*2 アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する架空の兵器、EVAシリーズのうちの一つ。EVAの量産を前提として作られたいわば先行量産機。赤い機体色と四眼が特徴。Pixiv百科事典


宿敵をすべて殺し、ひとりぼっちのハルコはエレベーターで1階へ降りてゆく。

 誰もほめてくれない、誰も感謝しない、孤独な帰途であった。

 ハルコ自身、何故小便臭い老人を粉々になるまでして殺したのか、すっかり忘れてしまっていた。爽快感とは程遠い、陰鬱な思いが胸を満たした。

 ハルコの体は今や最新鋭の人工知能が管理しており、その計算によれば、(ハルコは無敵)であった。

 ハルコが出るとビルは音を立てて崩れた。

 すでに身長は2mに達し、履ける靴もなかった。孤独なハルコは上野コンコースへと歩いていく。


 4.秋葉原

上野から秋葉原の間には御徒町があるが、大した待ちではないのでハルコはそのまま通りすぎる。

そこでまだ便意に襲われハルコは秋葉原で降りることした。急激な福通に襲われ慌てて降りようとしたため、降りるさいに、ハルコが頭部をぶつけドアが閉まらなくなった。そのため山の手線外回りは6時間運休した。

 かつて電気街と呼ばれ、小さな露店のような店であめ玉のような色とりどりの発光ダイオードを売っていた町はいまやアニメの聖地となっていた。

 ハルコが最初に便意に襲われた池袋も今やアニメの聖地と呼ばれている(*)が、電脳が計算したところ、ハルコの便意とは関係なく、偶然と判明した。

 *第二次世界大戦後の日本において、秋葉原は闇市として発展した。その後、高度経済成長とともに多様な電子機器や部品(ハードウェア)およびソフトウェアを取り扱う店舗などが建ち並ぶ日本一の電気街として発展した。その後、バブル崩壊や、大型家電量販店、ディスカウントストアの台頭などによる家電市場の衰退で、電器店は主力商品をパソコンに移していく。これにより、パソコンを好むマニアが集中し、秋葉原は一転、オタクの街として変貌を遂げた。2004年の『電車男』により、オタクの街としてのイメージは全国的に定着し、世界的な観光地としても注目された。Wikipedia


 JR秋葉原駅は他の首都圏JR駅に比べて通路がホールのように広く、イベント会場として使われるほどだった。しかもトイレも多い。そのためハルコが構内を走り回り、3軒目でようやく空いている女子トイレを見つけたのは幸いであった。もし間に合わなければ上野以上の災害となったのは必至であった。

 トイレに裸足で入ることに抵抗があったが、そんなことは言ってられなかった。先ほどの戦闘では少しも出なかった汗が吹き出し、涙も少し出た。

 ハルコは(はーっ)と大きく息をつくと、排便した。

 何故ハルコはこれほど排便を繰り返すのか、それは食べたからである。体内に取り入れられた物質はハルコを構成する材料となるが多分に要らないものができる。それは当然すべての生き物で起きるのである。また工業のような産業においても産業廃棄物は発生し、100%リサイクル使用は不可なのである。

 ハルコ体内の原子炉は常に中心に向けて爆発を繰り返し、密閉された球形のコアでは地上の100倍以上の重力場を形成していた。そこでは各原子は電子と原子核の距離が短くなることでかさが減り、収納することができたが密度が上がるのでハルコの体重は身長2mちょっとで体重は2tを越えていた。

 そのためハルコはたくさん出した。

 出すたびに流すのだが臭いは流すことが出来ない。そのため臭いは充満し、隣の個室で30分以上尻を出してスマホを見ながら用をたしていた女性は思わず、「げーっ」と言ったのであった。

 その声は当然常人の100倍以上の聴力を持つハルコには聞こえたし、今や飛び交う電子情報も読み取れるハルコは隣席の白金ユキコ(29歳、アテネ商事勤務、現在3股交際中)のつぶやきも読むことができた。

 即ち、(なにこれ?ちょっと、ちょっと、生ごみ?生ごみなの?臭い、臭すぎる、動物でもいるの?何なの?私、死んじゃうの?)

 ハルコは本当に殺してやろうかと思い、ドアノブに手をかけたが、その刹那、(ぷーっ)と1分も続く放屁をしてしまい、結果としてそのとおりになった。

 個室にとどまっていたため、ただ一人逃げ遅れた白金ユキコはその後救急車で運ばれたのだけど、脳のダメージは大きく、10歳以降の記憶をすべて失ってしまっていた。

 その後ハルコは核廃棄物を排泄した。体内の再生工場でウラン・プルトニウムの分離抽出の過程で発生した廃棄物である。まだ核分裂を起こしており、温度は1000℃を越えていた。そのためハルコは臀部にやけどを負った。

 排泄された核廃棄物はトイレの配管を突き破ると地下34mに位置するつくばエクスプレス秋葉原駅のコンコース屋根からホームへと落下した。放射線量はそれほどでもなかったが、その臭いのため、2005年から開業したつくばエクスプレスは1年ほど休業し、さらに20m地下へもぐることとなった。

 秋葉原の街について、もう少し触れておく。

秋葉(あきば)・アキバ・AKIBAの略称で呼ばれる。2010年代以降はECサイトの普及と地価上昇などでオタク向けの小売店が軒並み閉店し、代わって大資本によるコンセプトカフェが進出した。また、2000年代に東京都が秋葉原地区開発計画(土地区画整理事業)による再開発事業「秋葉原クロスフィールド」を推し進めて秋葉原UDXや秋葉原ダイビル等の超高層ビルが建設され、一般的なオフィス街になりつつある。(Wikipedia)


用を足したハルコはウオッシュレットで肛門を冷やし、ついでの小用も足した。その後、獣臭のするその部分をビデで念入りに洗うと秋葉原を後にした。

しかし山の手線外回りは運休中のため、ハルコは改札をでた。すでに身長は3m近くになり、ハルコは改札ゲートをまたいで外へでた。

カーテンで身をまとい、3mもあるハルコは秋葉原に生息するオタクたちの格好の被写対象であった。

そこで無断でシャッターをきる連中、3人ほどをハルコは飲み込んだ。

どこに行けば良いのだろう?カーテンをまとったハルコは総武線沿いを西に向かって歩き、左に折れると万世橋を渡り、東京へと向かった。

どこに行くのか?ハルコ自身分からなかった。


 5.桜田門(取り調べ1)

 新宿で起きた大量殺人、そして池袋でのトイレ詰まり事故、さらに上野での大量殺人とビルの崩壊、さらに秋葉原でのトイレ詰まりと3人の行方不明、こうした事象は受けて、警視庁は、同一犯である少女Hに非常に関係が深いと目される帝国大学医学部教授お茶の水ユースケ、助教授駿河台エージを緊急連行した。

 罪状は不明確のため逮捕には至っていないが、2人がこの一連の惨事に関わっている疑いは濃厚であった。

 八重洲セイジは警視庁に高卒で入ったノンキャリアであったものの、実務に関しては多大な信頼を得ており、今回重大参考人である駿河台エージの聴取を行うこととなった。

 取り調べ室に入る前に駿河台エージは入念な身体検査を受け、肛門に隠し持っていたキュウリを徴収された。しかしそれは武器には相当しないので、あくまで生粋のホモセクシャルである参考人の趣味であると思われた。

 八重洲セイジは新宿の惨劇の写真を見せて、

 「あなたは容疑者ハルコに施した手術はこの結果を意図したものでしょうか?」と聞いた。 

 言葉は丁寧であったが帝国大学医学部を卒業し、ケンブリッジ大学の客員教授でありながら童貞のホモセクシャルである容疑者を、結局のところ社会の不適合者として馬鹿にしていた。

 駿河台エージは答える。

 「お茶の水博士と私は、一番早く到着した献体(*)を使用した実験を請け負っていたのです。あなたの言う手術という言葉は生きている人間に対して使用するものであり、今回のケースには当てはまらない気がします。」


*献体(けんたい)とは、医学および歯学の発展のため、また、力量の高い医師・歯科医師を社会へ送りだすために、死後に自分の肉体(遺体)を解剖学の実習用教材となる事を約し、遺族が故人の意思に沿って大学病院の解剖学教室などに提供することである。


 取り調べ官八重洲セイジは駿河台エージに対してホモセクシャルにも寛容な笑みを浮かべていたので、駿河台エージは続けた。もちろん八重洲セイジの笑みが職業警官のものであり、自供を引き出すための手腕であることは理解していたが、それでも沈黙はホモセクシャルにとっては耐えられない苦痛でったのである。

 「ハルコと呼ばれる女性が大学に運ばれてきたが、そのときは確実に死んでいたのですよ。両腕がゴミ回収のパッカー車に取られて、ひどい臭いがしていました。年は16歳から20歳前半でしょうか?児童虐待の子供よろしく、背は低いが実際に年齢は少しいっていた気がします。胸のふくらみは小さく幼女のそれでした。でも性器は売春婦の持ち物そのもので、ひどく損傷し、思いつくすべての性病に罹患していました。体は性的が虐待を受けた結果による傷がいくつかありました。でも一番損傷が大きかったのは脳でした。クスリの影響で収縮し、頭蓋骨の中にはリンゴよりも小さな脳髄しかありませんでした。」

 八重洲セイジは黙って聞いている。

 駿河台エージは少し迷ったあと続けた。

 「計画では献体者の人格はすべてリセットされて、今回のヤクザ襲撃のような襲撃は起きないはずでした。予想したよりも献体者の遺志が大きかったと思います。良いですか?献体は死亡を厳重に確認したのです。そのため、イシとは人の「意思」ではなく、故人の「遺志」だったのですよ。即ち、我々はご遺体に対して実験を行ったのです。」

 八重洲セイジはお茶の水ユースケ、駿河台エージが行った生体性の確認のデータを見ていた。その上で聞いたのだが、やがて話題を代えた。

 「ハルコと呼ばれる少女たちが受けたという性的虐待、即ちクスリによる売春の強要、これらは日本では非常に起きにくいと思われます。そもそも日本では売春自体禁止されています。」

 駿河台エージは答える。

 「そんな事件は日本中どこでも起きていますよ。麻薬を使った少女への売春強要事件記事が何年か前にありました。犯人は素人でつかまっています(*)。ヤクザならもっと徹底的にやって捕まってもいないでしょうね。」


*新聞記事 少女たちは地獄に引きずり込まれた…シャブ漬け→売春、監視役も少女の「近年まれにみる悪質な売春事件」

未来ある少女を食い物にする悪質な事件が、また起きた。兵庫県警は7月23日、売春防止法違反容疑などで、16~39歳の男女4人を逮捕、送検したと発表した。4人はネット上で募った客に少女を派遣する「援デリ」(援助交際デリバリー)を運営。出会い系サイトなどで「簡単なアルバイトがある」と嘘を書き込んで少女をホテルの一室に誘い込み、覚醒剤を吸引させて判断力を鈍らせて売春させていたという「近年まれにみる悪質性の高い売春事件」(捜査関係者)だった。さらに、犯行グループのメンバーだった少女も中心的な役割を果たしていたといい、被害少女らの監視役も務めていたという。

 産経新聞 2014/8/15


駿河台エージは更に続ける。

「更に言えば、海外では買春は当たり前ということです。最近のヨーロッパでも事件はありました(*1)。ソビエト連邦崩壊後の東欧はもっとひどかった。そして現在のアフリカ、南米でも目も当てられない状況は続いている(*2)。ニワトリがタマゴを提供するように、貧しさから自分の子供を差し出す親もいる。そんな不幸な少女たちを買春する政治家もいる(*3)。」


*1 ロザラム児童性的搾取事件 1997年〜2013年にわたって、イギリスのサウス・ヨークシャー州にあるロザラム及びロザラム近郊都市圏において発生した、広範に組織化された児童性的虐待事件である。

*2 オリンピックの裏には、児童買春がある リオでは少女たちが62円で性奴隷に「彼女たちの母も売春婦でした。祖母も売春婦でした」

Louise Ridley— The Huffington Post UK 2016年08月26日

*3 埼玉県議会議員公費買春事件 2003年11月に6人の埼玉県議会議員(自民党5人、無所属1人)が公費を使用し、視察の名目でタイまで買春へ行っていたことが発覚した事件。同事件は2003年12月13日に放送された日本テレビの『報道特捜プロジェクト』によって周知のものとなり、放送後には埼玉県庁へ抗議が殺到し、各新聞にも取り上げられた。Wikipedia


「日本だって今や、7人に1人が貧困状態にあるのにね(*)。

厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」による。日本の相対的貧困率は15.6%である。相対的貧困率の15.6%のうちの半数がひとり親世帯であ。

「今や政府は『異次元の少子化対策として課題に一体的に取り組む』(*)としているが、経済と結びついてるから難しいよね。人間も雑菌と一緒だよ。栄養豊富な状態にあれば自然に増えていくもんだからね。」

*2023年内閣府「選択する未来」委員会報告


八重洲セイジは口を開いた。

「今回、容疑者ハルコが龍神会を皆殺しにしましたが、あなたがハルコを使ってそのように仕掛けたのですか?」

 駿河台エージは答える。 

「反社会勢力を壊滅するためにハルコを改造したのではありません。龍神会の話は先ほど聞いたのですが寝耳に水でした。せめて相手がヤクザで良かったです。」

「ではハルコの意思で龍神会を殲滅したと?」

 その問いに駿河台エージはすぐに答えることが出来ない。

「あの子のご遺体を実験に使ったのだけど、クスリでボロボロでした。実は使えるところはそんなになかったんですよ。ひどいもんだった。・・・特に脳がひどくてね。ほとんど使わずに捨ててしまったんです。すっかり萎縮して、腐ってましたからね。わずかに移植した脳細胞にそれほどの記憶が残っていたとは思えませんね。」

 八重洲セイジは黙って聞いてる。駿河台エージは続ける。

「あまり非科学的なことは言いたくないのだけど、魂とか、エクトプラズム(*)とか呼ばれるものがあったのかもしれない。」

*シャルル・ロベール・リシェ(1913年にノーベル生理学・医学賞を受賞する)が1893年にギリシア語の「エクトス」(外の)と「プラズマ」(物質)を組み合わせてつくりだした造語。この造語は心霊主義で用いられるようになり、霊能者などが「霊の姿を物質化、視覚化させたりする際に関与するとされる半物質、または、ある種のエネルギー状態のもの」を指して用いられる。


 更に駿河台エージは続ける。

「今ハルコは秋葉原で降りて東京駅に向かっていると聞きました。これはプログラムが順調に作動したことを示しています。残像のような死ぬ前の意識はすっかり消えたことでしょう。これからハルコは予定して行動に入るはずです。」

 八重洲セイジは机の上にある駿河台エージから提出された書類を見ている。

 ハルコ改造に関わる技術と資金は戦前のアテネ財閥の流れを汲む企業グループ、即ちアテネグループから拠出されており、総額は2兆円を超えていた。

アテネグループを構成する企業群、アテネE&Sホールディングス、アテネ海洋開発、アテネ化学、アテネトウペロ、アテネ共同建設コンサルタント、アテネ金属鉱業、アテネ情報、アテネ住建道路、アテネ海上火災保険、アテネ海上プライマリー生命保険、アテネ建設、アテネトラストHD、アテネ信託銀行、アテネトラスト・カード、アテネFG、アテネ銀行、アテネファイナンス&リース、アテネカード、アテネ証券、アテネコンサルティング、アテネファイナンスサービス、アテネ情報システム、アテネ総合研究所、アテネ精機工業、アテネ製糖、アテネ石油開発、アテネ倉庫ホールディングス、

アテネ倉庫ロジスティクス、アテネデザインテック、アテネ農林、アテネ物産、アテネ食品、アテネ不動産、アテネ不動産レジデンシャルサービス、アテネ不動産レジデンシャルリース、アテネ不動産リアルティ、アテネ不動産ビルマネジメント、アテネ不動産レジデンシャル、アテネ不動産ファシリティーズ、アテネ不動産商業マネジメント、アテネ不動産ホテルマネジメント、アテネホーム、アテネスパルタ産業、アテネスパルタ製作所が技術と資金を拠出した先は内閣府であった。

そして総理大臣名で帝国大学医学部を通じ、お茶の水ユースケ博士と駿河台エージ博士にハルコの改造を発注したのだ。

 これから起こる悲劇を知っている駿河台エージはもう外には出れないと覚悟していた。それでも愛しいお茶の水ユースケ博士を思うとホモセクシャル菜心が痛み、きゅうりを抜かれた肛門にさみしさを感じた。

 取り調べは常に2人の取り調べ官で行われる。記録をとっていた神楽坂ヨシヲは画面を八重洲セイジに見せた。八重洲セイジはうなずくと、駿河台エージに、

 「お疲れ様」と言い、神楽坂ヨシヲに駿河台エージ容疑者を連行させた。

 3人はそれぞれ廊下から窓の外を見る。

 8月の太陽が正午にかかり、さんさんと照っており、見ているだけで汗がにじみ出てきた。

 


6.東京

秋葉原から東京の間には神田があるが、大した町ではないのでハルコはそのまま通りすぎる。万世橋を渡り、山の手線をくぐって(*)、日本橋三越方向に行くが、新常盤橋をくぐり、右に折れて、東京駅丸の内方面へと行く。

*正確には、京浜東北線に加えて、宇都宮線、高崎線、常磐線の上野東京ライン、さらに東北新幹線、秋田新幹線上越新幹線、北陸新幹線が走っている。


神田南口のガード下を通るとき、ハルコは額をまともにぶつけ、プロレスラーなみに出血してしまった。それで龍神会最上階で奪ったカーテンで血を拭いたのだけど、すでにカーテンは上下を隠すにはちいさくなっていた。

そのときハルコの身長は5メートルを超えていた。さらに東京駅八重洲側から丸の内へ抜ける○○ガード下をくぐるときには7メートルを超えており、ガード下をくぐるには四つん這いにならなければならなかった。

しかしその姿勢では後ろからお大事な部分が見えてしまう。ハルコは考えた結果、20メートルほど下がると跳躍して6本の線路を越えようとした。

だが開脚することで隠そうとした部分が大きく開かれるのに気が付き、途中慌てて股間を手で隠すのだけど、姿勢をくずして通りかかった山の手線内回りを蹴飛ばしてしまった。これで山手線は外回り、内回りとも運休となった。蹴つまづいて前に倒れ込んだハルコは○○ビルを半壊して止まった。

すでに身長は10メートルに達していた。

カーテンがすでにどこも隠せないのを知ると、ハルコは顔を覆ってみたが、それでは何の解決にならないと分かり、両の腕で乳房をもう一つの右手で股間を隠すことにした。自分のところとは言え、素手でずっと抑えているのは抵抗があったので股間にはカーテンをあてることとした。だが時間が立つとその酸性の液体とその蒸気のためにカーテンを形成する繊維はボロボロとなり、手のひらでは隠し切れない陰毛をハルコは直に抑えることとなった。

左目は相変わらず見えなかった。指で触るとガラスが埋め込まれているようだった。2本ある右手は次第に個々に動かせるようになっていた。

恐竜は10メートルを超えた時点で体をつかさどるために腰のあたりに2つ目の脳(性格には経節)が必要であったがハルコの体は光ファイバー網で情報を送っていたため、それが要らなかった。体重は12tを越え、骨はカルシウムではなく、カーボンナノファイバーで組まれた。皮膚はガラスきょう強化されたポリウレタン樹脂、頭髪と陰毛は強化ナイロンであった。

かろうじて人の形は保っているがますます人間ばなれしていくハルコであるがその気持ちは殺されたときの、少女のままであった。

龍神会の売春部屋で一緒にいたロシア人の少女を思い出した。日本のアニメが好きで、アニメーターになるはずが騙されて、クスリを打たれて、売春婦になってしまったのだ。まだ幼くて、仕事のないときにはスマートフォンでアニメばかり見ていた。

確か昨日の夜も放送をやっていたはずだ。

ハルコは東京駅丸の内北側円形ドームに腰を下ろすと電脳でインターネットに接続し、その番組を見てみた。

東京駅とは、明治41年(1908年)3月に着工し、大正3年(1914年)12月に開業した日本の玄関口、東京駅。丸の内駅舎は日本の近代化を担う首都東京に誕生した中央駅として、数々の歴史の場面を眺めながら、日本を代表するビジネス街とともに発展してきた。平成24年(2012年)、国指定重要文化財である丸の内駅舎は創建当時の姿に復原された。歴史と未来、日本と世界が対話する街、Tokyo Station Cityとしてますます発展していく(*)。

*東京駅及び周辺エリアの情報サイト


ハルコは言われた番組を見る。なかなか良かった。神回ではなかったろうか?高校どころか中学にも行ったことのないハルコであったが、学園ドラマの楽しさは分かった。中学生の幼さと狡猾さ、純粋さと残酷さが良く出ていた。

尻がやけるように熱かったが、体内のヒートポンプでハルコ自身は平気だった。しかしハルコの股間から漏れる体液で天然スレートぶきのドーム天井が溶けてしまい、そこを見上げ、ハルコの隠そうとした部分をもろに見てしまった。2人の中学生男子は、トラウマで、一生女性に触れられない身の上となった。感無量のハルコは北ドームの屋根も焼いてしまい、それを見上げた女子中学生2人は、おそるべき女性に真実に触れ、その一生を2人で添い遂げることとなった。このような事例があり、更にハルコによって死に至らしめられた数万の人があって、それでも実は翌年の日本の人口は増加した。それはドーム型天井に空いた空隙から覗くハルコの巨大な陰部が発する強烈なフェロモンとも呼ばれる臭い物質によるものであった。2019年1.39まで落ち込んだ日本の出生率は翌年数十年ぶりに2.0を超えた。

ハルコの体液の発するフェロモンはサザンオールスターズが言うところの、「男は立てよ、行けよ、女の元へ」(*)と奮い立たせ、結果として死んだ人間以上の数の出生を促したのだった。

*「思い過ごしも恋のうち」 サザンオールスターズ


その年、捨て猫、捨て犬は異常発生し、さらに赤ちゃんポスト(*)に代表される乳幼児保護施設に投函される人数も急増するのであった。これは人間が結局のところ、環境とホルモンによって行動が決定される動物の一種のであることが確認されたのであった。

*諸事情のために育てることのできない赤ちゃん(新生児や子ども)を親が匿名で託すための施設、およびそのシステムの日本における通称である。Wikipedia


ハルコはそうしたトラブルに気づくはずもなく南ドームの方に進むのだけど、もう一度北ドームに座り、先ほどのアニメを見ることとした。

しかし東京駅丸の内口北ドームから中央部を経て、○○メートルを歩き、南ドームへ行くまで、ハルコの身長は50メートルから100メートルへと成長した。その材料はハルコの胸にあるコアと呼ばれる重力場から取り出してきた。材料は体内の工場で加工されハルコが成長するのに必要な機材となった。

そのため東京駅丸の内、南ドーム屋根に腰掛けようとしたさいに、その縁ではなく、頂上へ座ることとなった。丸の内南北ドームの頂上にはフィニアル(頂華)というロマネスク様式の影響を受けた飾りがあった。それは約46.1mの東京駅南北ドームの先端3メートルにあたるのであるが、つまるところ座ろうとしたパルコのお尻の穴にちょうどすぽっと入ったのである。

「ぎゃっ」とハルコは短く叫んだ。

それは偶然ではなく鋭利な先端がパルコ臀部へ傷をつけることを避けるため電脳が素早く計算し、GPSで正確に位置を制御した結果であるが、その結果にハルコは赤面し、羞恥と怒りを覚え、駅舎を完膚なきまで破壊した。

ここで東京駅丸の内ドームの復興の歴史を振り返ってみる。

時代は20世紀に遡る。

1999年10月、当時の石原慎太郎東京都知事と松田昌士JR東日本社長の会談により、創建当初の形態に復原することで基本認識が一致した。2001年(平成13年)には東京都が「東京駅周辺の再生整備に関する研究委員会」を主宰し、東京駅周辺地区での都市基盤整備に関する課題解決と活力創造を推進するための検討を行い、12月に提言を行った。これを受けて具体的な都市計画決定が行われ、2002年(平成14年)2月15日の石原慎太郎東京都知事と大塚陸毅JR東日本社長の会談により、具体的な復原の作業が動き出すことになった[336]。なお、2003年(平成15年)4月18日に「東京駅丸ノ内本屋」として文化審議会において重要文化財に指定するよう答申が出され、5月30日に重要文化財指定が告示された。(Wikipedia)

ハルコはその象徴とも言えるドーム屋根を蹴飛ばし、踏みつけ、破壊したのである。


屋根は、創建当初は雄勝産の天然スレート約7600平方メートルで葺かれていたが、戦災復旧に際して鉄板葺きとなり、1952年(昭和27年)、1973年(昭和48年)、1990年(平成2年)と3回にわたって天然スレートでの葺き替えが行われてきた。復原工事前のスレートは登米産のもので、ドーム部と中央部は魚鱗葺き、切り妻部は一文字葺きとなっていたが、復原に当たって創建当初の一文字葺きに統一された。復原にあたって必要とされたスレートは45万7350枚(8790平方メートル)で、13万5450枚(2160平方メートル)は登米産のものを再利用し、雄勝産2万2800枚(430平方メートル)とスペイン産29万9100枚(6200平方メートル)で補う計画とされていた。しかし東日本大震災により宮城県で出荷準備中のスレートが流失・破損し、3万2120枚が不足したことからこの分もスペイン産で補われた。最終的に雄勝産1万5000枚(250平方メートル)、登米産11万1130枚(1480平方メートル)、スペイン産33万1220枚(7060平方メートル)となり、被災したスレートのうち使用可能と判断されたものは南北ドームや中央部など象徴的な場所を選んで配している。

更にハルコはそのロマネスク様式の屋根を股間にあてると、お笑い裸芸人(*)のお盆のようにして隠すのに使ったのである。

*アキラ100%


平成24年(2012年)、国指定重要文化財である丸の内駅舎は創建当時の姿に復原された。その北ドームをはがして、もっさりとした陰毛は隠し切れないながらも、ハルコは歩き始めた。今まで素手で陰部を隠していたので2本ある右手の一方はベタベタしていた。少し嗅ぐと、早く洗わなくてはいけない臭いがした。

そこでハルコは手を洗うために多摩川へ向けて歩き始める。


最後に、歴史的建造物としての東京駅を少し触れる。

太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)5月25日、アメリカ軍による東京大空襲では丸の内駅舎の降車口に焼夷弾が着弾、大火災を引き起こした。これによりレンガ造の壁やコンクリート製の床など構造体は残ったが、鉄骨造の屋根は焼け落ち、内装も大半が失われた。

同年8月の終戦直後から修復計画を立案し、年末から1947年(昭和22年)にかけて修復工事を行った。3つのドーム部分の外壁は修復したが、安全性に配慮してその他の焼失の著しかった3階部分内外壁は取り除いて2階建てに変更。中央ドームは木造小屋組で元の形に復原し、南北両ドームは丸型から台形に変更。軒蛇腹・パラペットや壁面、柱型、窓枠などは2階建てになっても忠実に復元した。南北ドーム内のホール天井はローマのパンテオンを模したデザインに変更、といった内容だった。

仮の修復だったが、当時の鉄道省や大林組の努力で日本の中央駅として恥ずかしくないデザインで修復をした逸話が伝えられている。

一方、八重洲口には、1948年(昭和23年)11月16日にモダンデザイン建築の八重洲駅舎が竣工したが、翌1949年(昭和24年)4月29日に失火で焼失。1954年(昭和29年)10月14日に鉄道会館ビルが建てられ大丸が開業した。外堀が埋め立てられて、呉服橋、八重洲橋、鍛冶橋が解体撤去された。

1964年(昭和39年)10月1日に東海道新幹線が開業し、1972年(昭和47年)7月15日には総武地下ホーム、1990年(平成2年)3月10日には京葉地下ホームがそれぞれ営業を開始。1991年(平成3年)6月20日には東北新幹線が乗り入れた。

2000年(平成12年)、丸の内駅舎を創建当初の姿に復原する方針がまとめられた。500億円とされた復原工事の費用は、東京駅の容積率を丸の内地区の高層ビルへ移転(売却)することで賄うことになった。復原工事自体は、2007年(平成19年)5月30日に起工され、2012年(平成24年)10月1日に完成した。

2015年(平成27年)、上野東京ラインが開業。東北新幹線の東京駅乗り入れに伴い1983年以来分断されていた東京駅 - 上野駅間の東北本線の線路が再接続され、東海道本線との直通運転が実現した。(Wikipedia)

その東京駅をハルコは破壊し、おおよそ終戦当時の姿に戻したのである。


7.品川

歩きながらハルコは電脳の中でアニメを見ていた。やはりとても良かった。

ハルコはこのアニメを勧めてくれたロシア人少女を思い出そうとしたが、新宿の龍神会オフィスで目を開けたまま寝ていたのが、彼女だと知った。そのときには大好きなアニメも見れなくなっていた。

ハルコはやり場のない怒りを覚え、山手線に沿って南ヘと下っていく。

ハルコは有楽町、新橋、浜松町、高輪ゲートウエイを、ビルを壊しながら進み、品川へと向かった。

特に新橋では汐留シティセンタービルを徹底的に破壊した。


 品川駅には東海道新幹線の操車場があった。

ここで東海道新幹線で使用されている車両は、N700AとN700Sの2種類に統一されている。 どちらの車両も16両編成で、座席配置や車内設備はほとんど変わらない。

それをハルコはこれ以上の体を作るために食べた。N700A 32両とN700S 64両である。

いずれに16の倍数であるのは1編成16車両だからである。操業

東海道新幹線開業時には適正な乗車率とするため、12両編成もあったが、1970年以降は16両編成が原則となっている。

最高時速300km/hも出せるその車両はおおむね2 - 3億円と言われている(*)。そのため被害総額は車両だけでも192-288憶円になる。

*新幹線車両の製造を行っている(いた)メーカーは、日本車輌製造・川崎重工業・日立製作所・近畿車輛・東急車輛製造・総合車両製作所横浜事業所 ・三菱重工業の7社である。ごく少数であるが、JR東海浜松工場でも100系が製造されたことがある。(Wikipedia)


品川駅とは、山手線南部のターミナル駅である。駅名は東海道の宿場町である品川宿に由来するが、所在地は品川区ではなく港区である。

駅東側の港南口はもともと戦前からの埋立地として企業の工場や倉庫などが立ち並んでいたような場所だったが、1998年に旧国鉄品川駅東口貨物ヤード跡地に品川インターシティと呼ばれる大規模な複合商業ビル群が開業。2003年に東海道新幹線の品川駅が開業して以降は、再開発により大規模なオフィスビルやタワーマンションを中心とした超高層ビル街へと発展し、駅利用者数が大幅に増加した。京急線で羽田空港に乗り換えなしでアクセス出来ることや、さらに東海道新幹線の駅の開業により中京圏・近畿圏とのアクセスが大幅に向上したこともあって、港南口を中心に企業の本社などの集積が進んでいる。駅西側の高輪口はプリンスホテル(西武グループ)などの大規模なシティホテルが幾つも集積しているとともに、高級住宅街が広がっている。当駅は世界有数の利用者数を誇るターミナル駅である。現在のところは、京急本線を通して都営地下鉄浅草線と相互直通運転を行なっているものの、直接的に地下鉄は1路線も乗り入れていない。2022年3月28日、東京メトロは、南北線延伸(品川・白金高輪間)の鉄道事業許可を国土交通大臣より受けた。開業目標は、2030年代半ばと発表されている。(Wikipedia)


全長25 mの新幹線車両を飲み込むハルコはすでに身長150mにたっしており、東京タワーの高さ333mの約半分であった。

ハルコの体内に入った車両は溶鉱炉で鉄、アルミに分けられた。かつて新幹線は普通鋼で作られていたが、東北新幹線以降はアルミも使われている。

再生された鉄鋼、アルミ鋼はハルコの体内で再構築された。それがハルコの作られた目的であったが、体内では巨大な武器が組み上げられていた。それはハルコの体内で起こっていることであったが、ハルコはそれを知らされてはなかった。

ハルコは怒っていた。

それは先ほど思い出した小さなロシア少女の死であり、自分の生れて来た境遇であり、それを見過ごしている社会であり、この国であり、この世界であり、この星であった。

ハルコは怒りに任せてビル群を破壊する。

A-1地区品川インターシティ、即ち、品川インターシティA棟 - 工機ホールディングス、近鉄エクスプレス本社など、品川インターシティShop&Restaurant棟、品川インターシティB棟 - 大林組東京本社、富士通パーソナルズ本社など、品川インターシティC棟 - NECキャピタルソリューション本社、品川インターシティホール棟、品川セントラルガーデン、A-2地区品川インターシティフロント、これらを徹底的に破壊した。

さらに、というか、ついでに、B-1地区品川グランドコモンズ、品川イーストワンタワー - 大東建託本社、ストリングスホテル東京インターコンチネンタル、太陽生命品川ビル - 太陽生命保険、山善東京本社など、品川グランドセントラルタワー -日本マイクロソフト、NTTテクノクロス本社など、三菱重工ビル - 三菱重工業本社、キヤノンSタワー - キヤノンマーケティングジャパン本社、ストーリア品川 - 賃貸住宅、品川Vタワー - 分譲住宅、B-2地区、JR品川イーストビル - アトレ品川やゼンショー、ダイセル東京本社が入居、JR東海品川ビル - JR東海東京本社が入居、B-3地区、アレア品川 - NTTデータ、B-4地区、京王品川ビル - 電通国際情報サービス本社など、これらも破壊したが、途中から疲れたというか飽きてきて、その行為はややなおざりであった。

かつてゴジラに破壊された町は再び巨大成分の災禍に見舞われたのである。


最初多摩川まで手のべたつきを洗いに行く予定であったが、しながわ水族館のイルカのプールで汚れを落とすと北上することとした。ハルコ自身は気がつかなかったが、それは予定されていたプログラムによる行動であった。

ちなみに10頭いたイルカの内、2頭が死んだが、残りの8頭は激しく欲情したため、1年後には20頭に増えていた。

パルコはカタツムリのとおった跡のべたつきを落とし、それを臭いで確かめた。

怒りのため忘れいたが、すでに自分の身を隠すものが何もなく、自分のそべてが巨大化されており、地上の人間が見上げれば、もっとも隠したいと思ったその部分が上空に広がっているというのを知った。SNSの信号をキャッチし、ハルコの拡大された陰部が拡散し、それを警察が削除しているのだが、とても追いつかないのを知った。

両腕で乳房を隠し、2本目の右腕で陰部を抑えるのだけど、歩くために足を運べば、それとあれが見えてしまうのは自明であった。

「仕方ない」

ハルコは小さくつぶやくと見える限りの地上の群衆に向けて、口から炎を吐き、焼き払うことで解決した。

その断末魔の声の中に(どうせなら、京浜急行線品川駅~北品川駅間の「開かずの踏切」を壊してくれればいいのに)と言うのを聞き、その願いをかなえた。


8.渋谷

品川から渋谷の間には大崎、五反田、目黒、恵比寿があるが、大した町ではないのでハルコはそのまま通りすぎる。途中目黒川で水に潜って小用を足し、川を氾濫させた。大量の魚が浮き、異臭が立ち込めた半面、真夏にも変わらず両岸の桜が咲き誇った。

峰原通りをまたぎ、新茶屋通りを越えると、そこは渋谷区であり、ハルコはとりあえず忠犬ハチ公を踏みつぶした。

東京3大副都心の一角である渋谷に位置するターミナル駅である。JRや私鉄、地下鉄など複数の路線が集積しており、多くの郊外の通勤通学利用者が都心方面への乗り換えで当駅を利用する。日本鉄道の駅として開業した1885年(明治18年)当時は新宿や池袋と同様に駅周辺は田園地帯が広がる東京市郊外の田舎の駅に過ぎなかったが、東京市電や玉川電鉄(玉電)などの路面電車や私鉄路線が乗り入れるようになり、また東京大都市圏が拡大発展するにつれて郊外路線の沿線人口が大幅に増加し、東京南西部のターミナル駅として成長してきた。その後は1973年(昭和48年)の渋谷パルコ開業を契機に駅周辺は「若者の街」としての地位を確立し、現在は東京屈指の繁華街として発展している。戦前から東急が開発してきた歴史を持ち、東急グループにとって最大の拠点となっている。(Wikipedia)

現在、各路線の駅・線路設備及び駅周辺地域は東急グループ主導で大規模な再開発が進行中であるこの街は決戦の場となった。


自衛隊とは何か?

日本国憲法第9条の下、専守防衛に基づき、国防の基本方針および防衛計画の大綱の定めるところにより、「国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛すること」を基本理念とする(自衛隊法第3条第1項)。Wikipedia

この国家の危機にさいしてまずは陸上自衛隊が投入された。

まずは陸上自衛隊である。


陸上自衛隊の部隊は、方面隊、陸上総隊その他の防衛大臣直轄部隊から構成され、その所掌事務に係る幕僚機関として陸上幕僚監部が設置されている。定数は約15万2千(即応予備自衛官を除く)であり、三自衛隊の中で最大だが、振り分けられる予算は約1兆7千億円と、海、空自衛隊に大差は無い。小銃をはじめ、戦闘車輌や一部の航空機は国産品を装備しているが、輸入やライセンス生産による装備品もある。遠隔操縦観測システム(FFOS)のような無人航空機の運用能力も持つが、指揮通信能力、統合作戦能力は整備途上にある。各方面隊が担当地域の防衛警備を担っている。また、島国という地理上、離島への武力侵攻に備えた水陸機動団も配備されている。(Wikipedia)

新宿、上野の紛争から既に陸上自衛隊は準備されていた。

関東近辺の高速道路(*1)は封鎖され、近隣の陸上自衛隊(*2)は渋谷駅前スクランブル交差点へと集結した。


*1 首都高速自動車道、北関東自動車道、首都圏中央連絡自動車道、常磐自動車道、東北自動車道、関越自動車道、上信越自動車道、東京外環自動車道、首都湾岸線、常磐自動車道、新空港自動車道、東京湾アクアライン、京葉道路、第三京浜道路、首都八重洲線、首都9号深川線、西湘バイパス、逗葉新道、小田原厚木道路、新東名高速道路、新湘南バイパス、東京湾アクアライン、東名高速道路、横浜新道、横浜横須賀道路、三浦縦貫道路、中央自動車道


*2 東部方面隊(関東地方・甲信越地方・静岡県)、東部方面総監部(東京都練馬区:朝霞駐屯地)、第1師団(東京都練馬区:練馬駐屯地)、第12旅団(群馬県北群馬郡榛東村:相馬原駐屯地)、第1施設団(茨城県古河市:古河駐屯地)、東部方面混成団(神奈川県横須賀市:武山駐屯地)、陸上自衛隊関東補給処(茨城県土浦市:霞ヶ浦駐屯地)


陸上自衛隊は事態に合わせて選択する4種の戦車、即ち61式戦車、74式戦車、90式戦車、10式戦車、を有する。そして一斉に120mm滑腔型主砲からハルコに向けて砲弾が撃たれた。

更に据え置き型の、地対空誘導弾 改良ホーク、03式中距離地対空誘導弾、81式短距離地対空誘導弾、93式近距離地対空誘導弾、11式短距離地対空誘導弾、91式携帯地対空誘導弾もすべてハルコに向けて発射された。

砲弾はハルコの皮膚に接し炸裂する。

しかしハルコの皮膚はアテネ化学最新鋭の低温熱変形樹脂で出来ており砲弾の衝撃を吸収し、更にその爆発も高周波振動に代えて吸収した。ゴジラは固い合金の皮膚で砲弾のエネルギーを跳ね返したが、その反作用は受けてしまい、出血があった。しかしハルコはそのエネルギーを吸収することで、つまるところ、ハルコは無敵であった。

乳首に被弾したさいに若干の表情変化が見られたが、ほとんどダメージを与えられないのを確認すると、AI(人工知能)および指揮官の判断でターゲットはハルコの前後の陰部に集中した。そこは鋼の陰毛で守られていたが、天網恢恢疎にして漏らさず、というほど鉄壁ではなったし、肛門に至っては剥き出しであったため、苦痛というよりも羞恥による攻撃をハルコは受けることとなった。

「この、ドすけべが!」

ハルコは口から火炎を吹くと一個師団(*)を焼き払った。

*師団(しだん、仏・英: Division)は、軍隊の部隊編制単位の一つ。旅団・団より大きく、軍団・軍より小さい。師団は、主たる作戦単位であるとともに、地域的または期間的に独立して、一正面の作戦を遂行する能力を保有する最小の戦略単位とされることが多い。多くの陸軍では、いくつかの旅団・団または連隊を含み、いくつかの師団が集まって軍団・軍等を構成する。(*)

(Wikipedia 前出)


ハルコの股間を隠すのに使っていた東京駅南ドームの屋根は貫通した。しかし鋼のような陰毛でその先への侵入を防ぎ、更に肛門では肛門括約筋を引き締めることで対処した。

 それでもその部分に激しい痒みと、快感には一歩至らない不快感を抱えながら、ハルコは3本の腕でぼりぼりと搔くのだった。


 次は海上自衛隊である。

 海上自衛隊は、海上幕僚監部並びに統合幕僚長および海上幕僚長の監督を受ける部隊および機関からなる。海上幕僚長は最上級者として海上幕僚監部を統括する。各部隊および各機関は防衛省の特別の機関である。他国からは海軍とみなされている。

日本の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し日本を防衛することを主たる任務とする。必要に応じ、公共の秩序の維持に当る。

日本の領海や排他的経済水域(接続水域を含む)などにおいて平素から警戒監視、情報収集、各種訓練を行い、有事において海上交通の安全確保(シーレーン防衛)や周辺海域の防衛に対応する。また、ソマリア沖で、日本商船(外国船も可能)の護衛任務も行っている。

 平時における警察活動は他国の沿岸警備隊に相当する海上保安庁が担当している。

主たる戦力として護衛艦47隻、通常動力型潜水艦21隻、機雷戦艦艇22隻、哨戒艦艇6隻、輸送艦艇11隻、補助艦艇30隻、航空機は、固定翼哨戒機74機、電子戦データ収集機、画像データ収集機、哨戒ヘリコプター83機、掃海・輸送ヘリコプター等を保有する。人員は、定員45,329人である。2022度の予算額は約1兆2922億円、基地の数は約31である。(Wikipedia)


新宿、上野の紛争から既に海上自衛隊は準備されていた。事態に対応し海上自衛隊は東京湾(*1)は閉鎖され、近隣の海上自衛隊(*2)は横須賀基地へと集結した。

*1 東京湾を横断する交通として、東京湾アクアライン、東京湾フェリーがあり、東京湾を発着する旅客船の施設・運航事業者として、東京港、東京都観光汽船、横浜港航路、千葉港航路、および東京湾沿いの陸上交通として首都高速湾岸線


*2 自衛艦隊(横須賀)、護衛艦隊(横須賀)、航空集団(厚木航空基地)、潜水艦隊(横須賀)、掃海隊群(横須賀)、艦隊情報群(横須賀)、海洋業務・対潜支援群(横須賀)、開発隊群(横須賀)、特別警備隊(江田島)、横須賀地方隊(横須賀)、父島基地分遣隊(小笠原諸島父島)


 海上自衛隊の戦闘能力は火力であり、それは陸上自衛隊をも越える。海上火力が陸上を上回るのは、敵国の進行により近いというのが理由であるが、日本においては陸上では地域に終結する自称日本市民という外国シンパ勢力の反対で設置がおぼつかないからである。

 その結果、海上自衛隊はこんごう型、あたご型、まや型と呼ばれるミサイル艦隊を有し、自衛隊の中でもっとも優れたミサイルを有する。

 海上自衛隊にはイージス艦がある。

イージス艦(イージスかん、英語: Aegis warship)とは、イージスシステムを搭載した艦艇の総称。通常、高度なシステム艦として構築されている。

 フェーズドアレイレーダーと高度な情報処理・射撃指揮システムにより、200を超える目標を追尾し、その中の10個以上の目標(従来のターター・システム搭載艦は2~3目標)を同時攻撃する能力を持つ。もともとは防空艦として開発されたものの、様々な任務に対応可能な汎用性を持つため、アメリカ海軍ではイージス艦のみで部隊を編成することもある。

 イージス(Aegis)とは、ギリシャ神話の中で最高神ゼウスが娘アテナに与えたという、あらゆる邪悪を払う盾(胸当)アイギス(Aigis)のこと。(Wikipedia)

 

 目標は渋谷のハルコにセットされるとパトリオットミサイル PAC-3(*)が発射された。

*管轄は航空自衛隊

撃たれた数は126発。

ハルコに到達したさいの飛翔速度はマッハ3を超えていた。

ハルコは飛んできた3機を3本の腕で正確にキャッチすると皮膚表面からハッキングし、爆薬信管の解除を行った。

その刹那、ハルコの股間に前と後ろからミサイルが襲い掛かる。

ハルコの陰部でミサイルは破裂し、ハルコのもっさりとした陰毛は焼かれた。危うくお大事なところへ爆発が到達しようになったが、陰部ではチューインガムのような粘膜で防いだ。

「ぎゃっ」とハルコは短く叫んだ。

残り1発はパルコのお尻の穴にちょうどすぽっと入ったのである。放屁で対処しようとしたが間に合わなかった。全長5.31m、直径0.41m、発射重量914kgのミサイルはハルコの直腸で爆発した。

ハルコの内臓は徹底的に破壊された。強化された攻殻がかえって災いした。ハルコは口から胃と食道を吐き出し、左目をふさいでいた硬質ガラスも割れて飛び出した。2つの眼窩、2つの鼻の孔、2つの耳の孔、1つの口、あらゆる穴から煙があがった。そして15本の指先、2つの乳首、1つのへそ、本来穴があいてない部位からも煙を吐き出した。そして肛門と陰部からは大量の炎を含む噴煙があがった。

その爆風でキャッチした3本も爆発し、陰部に引っかかった1本も爆発した。そこへ残りの121本が到達する。そしてすべてがハルコにあたった。

最初のパトリオットミサイルは1991年に湾岸戦争が勃発したときに使用された。このとき、米陸軍が持ち込んだのはPAC-2(Patriot Advanced Capability 2)ミサイルで、弾頭を起爆させて弾片をまき散らすタイプであり、その後、最強の通常兵器でありミサイルを構成する要件となったのである。

人類の進歩にあわせて進化したミサイルはハルコを完全に破壊した。内部の工場はスクラップとなり、破壊された工場を復旧するための工場が体内で構成された。

人間は危機に瀕したさいに最大の進化をとげる。2度にわたる世界大戦では多くの発明がなされ、それは人類はもっとも進歩した時代でもある。


戦争ほど早く技術と革新を進めるものはないとよく言われる。第二次世界大戦は、それぞれの側がより高度で強力な兵器を開発するためにたゆまぬ努力をしたので、違いはない。戦闘の過程で、アクシスと同盟国はますます高度な航空機を作成し、世界初のジェット戦闘機であるメッサーシュミットMe262に到達した。地上では、パンサーやT-34などの非常に効果的な戦車が戦場を支配するようになり、ソナーなどの海上装備は、空母が波を支配するようになったときにUボートの脅威を打ち消すのに役立った。おそらく最も重要なことは、米国が広島に投下されたリトルボーイ爆弾の形で核兵器をということである。(*)

*引用 greelane.com/ja/文系/歴史と文化/


ハルコの電脳は迫りくる死にさいして、最大限の抵抗を試みた。生物が死の際に見せる必死さよりも遥かに徹底していた。即ち、すべてを投げ出し、すべてをつぎ込み、最後の戦闘に備えた。最大限の努力をし、その結果を受け入れる潔さもあった。

ハルコの体内工場では驚くべきスピードで身体と武器の再建がなされ、外気と同じ温度であったハルコの体温は100℃を越えて上昇した。

実際、ハルコの足はアスファルトを溶かし、地面にめり込んだ。


煙は止まったが血のような赤い液体が口からもれた。その量はあまりに多く、ハルコは自分の吐液で溺れそうになるほどであった。目からも涙のように赤い液体が流れた。

(泣いているの?まるで人間にもどったみたい)

とハルコは思ったが、それは正反対で、人間あったさいに必要であったヘモグロビンが排出されただけであった。

ハルコは吐き出した胃と食道を食べることによって元にもどした。

そして大量の肛門からの出血もようやく止まり、陰部は再生されたタングステン製のもっさりした陰毛で再び守られた。そして肛門を守るため、臀部はさらに筋肉を引き締めて、攻撃に備えた。



海上自衛隊は再び目標を渋谷のハルコにセットするとパトリオットミサイル PAC-3(*)252発を発射した。

*管轄は航空自衛隊

ハルコは身体を急速に再生させてきたが、急ぎ過ぎて体内で火災を起こし、へそと肛門から炎が漏れた。

ハルコは尻から火を噴きながら、迎撃する。こまのようにくるくると回りながら、ミサイルをキャッチするとその情報を書き換えて、横須賀沖へと投げ返した。高速で回転している上、陰部はタングステンの陰毛で守まれ、肛門はその炎でミサイルを迎撃した。

252発中の153発をハルコは投げ返し、残り99発をハルコは食べた。

投げ返された153発は正確にそれを撃ったひゅうが2艦、いずも2艦、こんごう型4艦、あたご型2艦、まや型2艦、あさぎり型8艦、むらさめ型9艦、たかなみ型5艦、あきづき型4艦、あさひ型2艦、そしておやしお型潜水艦11艦、にあてた。すなわち海上自衛隊のほとんどを撃沈させた。

横須賀基地に停泊していた在日米軍、第7艦隊の第70任務部隊 (Task Force 70, CTF-70)は攻撃対象から外す配慮をみせた。

そのため横須賀海軍施設を母港とする「ロナルド・レーガン」艦は無傷であった。それはハルコの判断ではなく、電脳に組まれたプログラムによるものであった。


ハルコは体内に入れたミサイルから体を再構成するのに必要な物質を手に入れた。希少金属であるリチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、である。

そこには核燃料であるウラン、プルトニウムも含まれており、このような方法で自衛隊からハルコへの核物質の受け渡しは行われた。

これによりハルコ体内の原子炉は1基から24基へと増加し、エネルギー換算すると約20億kWh、これは日本全体のエネルギー供給能力87億6000万kWh(*)の20%を超える数値であった。

*資源エネルギー庁


陸上自衛隊、海上自衛隊との戦いを経て、ハルコは進化した。

身長は180メートルに達し、体重は約10万tとなった。巨大ビル1つ分の大きさ、重さである。

重みで地下鉄をつぶさないようにハルコは気をつけた。


最後は航空自衛隊である。

航空自衛隊は、航空幕僚監部並びに統合幕僚長および航空幕僚長の監督を受ける部隊および機関からなる。

各部隊および各機関は防衛省の特別の機関である。主として空において行動し、主権国家たる日本の平和と独立を守り、直接侵略及び間接侵略の脅威から日本を防衛することを任務とする。その最上級者は最上級機関である航空幕僚監部を統括する航空幕僚長である。世界有数の装備を保有し、協力関係にある諸外国軍とも海外演習等で交流があることから、諸外国からは日本の空軍とみなされている。

また陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の、3自衛隊ではそれぞれ独自に飛行場、航空部隊、操縦士の養成課程を有しているが、戦闘機、空中給油機、早期警戒機、飛行点検機は航空自衛隊のみが配備する。逆に攻撃用の装備を施したヘリコプター、艦載機は保有していない(陸・海と共通のものを除く)。

海上自衛隊は哨戒機、艦載ヘリコプター、救難飛行艇など海上での行動を主目的とした航空機を運用する他、独自に電子戦機、輸送機も保有している。

陸上自衛隊は対戦車ヘリコプター、観測ヘリコプター、連絡偵察機など陸上での行動を主目的とした航空機を運用する他、独自に輸送ヘリコプターも保有している。


航空自衛隊の2020年現在の主要装備は戦闘機がF-35A 17機、F-15J 201機(F-15運用国ではアメリカに次いで第2位の保有数である)、F-2 91機、F-4 26機、合計335機、7基地で12飛行隊を有している。

そして関東にある2基地、即ち府中基地(*1)、横田基地(*2)から総戦力がスクランブル発進した。

*1府中基地(JASDF Fuchu Base)は、東京都府中市浅間町一丁目5番地の5に所在する航空自衛隊の基地である。飛行場施設はヘリポートがあるだけで滑走路は有していない。基地司令は航空気象群司令が兼補(2012年3月25日までは防空指揮群司令)。

*2横田飛行場は、日本の東京都多摩地域中部にある軍用飛行場。航空自衛隊とアメリカ空軍の横田基地(よこたきち、英語: Yokota Air Base)が設置されている。


即ち、F-35A 8機、F-15J 99機、F-2 45機、F-4 12機、合計164機、金額にすると4920億円である。

しかし進化し、覚醒したハルコにはなすすべもなかった。

戦闘機の武器とは、かつては誘導装置のついたロケット弾であり、ミサイルに取って代わられた(現代でもロケット弾ポッドは一部のこっている)。

ドッグファイト(*)、または格闘戦と呼ばれる戦闘機同士の空中戦闘、それらには適しているが、ハルコのように避ける気もない相手には意味がなかった。

 *ドッグファイトの呼称は、戦闘機の近接戦闘では相手を追尾する態勢が有利であり、その姿が犬同士が尻尾を追いかけ合う姿に似ていることに由来する(Wikipedia)。


つまり戦闘機による航空自衛隊の火力は海上自衛隊よりもずっと弱いのである。

体内の原子炉から核分裂を起こしているプルトニウムを全身から噴出した。

ベークライト越しの左目からの噴出でF-35A 8機、右耳からの噴出でF-15J 9機、左耳からの噴出でF-2 5機、右の鼻でF-2 5機、左の鼻でF-2 6機、開いた口の舌先でF-2 11機、右と左の指先計15本の先からの噴出で16基、そして左わきからの噴出でF-2 10機、そして左わきからの噴出、上わきでF-2 10機、下わきで残りのF-2 10機に噴出し、撃ち落とした。

さらにへそからの噴出攻撃でF-4 12機を撃ち落とすと、左右乳首、右7、左8存在する乳腺からプルトニウムを噴出し、F-2 45機を撃ち落とした。

航空自衛隊戦闘機のミサイルも全弾ハルコに命中したが強化ポリオレフィンに守られたハルコの躯体に傷1つ、つけられなかった。

しかし旋回するF-2を追ったハルコの左乳首4番目の乳腺から発したプルトニウムがハルコの右目にあたった。

「ぎゃっ」とハルコは短く叫んだ。

これでハルコは両目とも失明したのだった。

 プルトニウムの光線はハルココアの重力で捻じ曲げられ、ハルコの角膜、水晶体、網膜、視神経を突き抜け、側頭葉、後頭葉を破壊し、内側から頭蓋骨を破り、大きく弧を描きながら、核分裂を繰り返し、そのエネルギーを速度へ変えて、最後には光速へと達し、月へ到達し、ようやく止まった。


この戦いで膨大なエネルギーが費やされ、プルトニウムの質量変化は100gに達した。

戦闘機を透過したエネルギー、または逸れたエネルギーは渋谷のビル群を壊滅させた。


NTTドコモ代々木ビル(239.85m、 27階、 1997年竣工)、渋谷スクランブルスクエア東棟(229.7m、47階、2019年竣工)、セルリアンタワー(184m、41階、2001年竣工)、渋谷ヒカリエ(182.5m、34階、2012年竣工)、渋谷ストリーム(179.95m、35階、2018年竣工)、恵比寿ガーデンプレイスタワー(167m、40階、1994年竣工)、新宿マインズタワー(161m、34階、1995年竣工)、小田急サザンタワー(150.75m 、36階 、1998年竣工)、JR東日本本社ビル(150.15m、28階、1998年竣工)、パークコート渋谷 ザ タワー(142.69m、39階、2020年竣工)、住友不動産渋谷ガーデンタワー (138m、22階 、2012年竣工)、代々木ゼミナール本部校代ゼミタワー(134m、26階、2008年竣工)、渋谷クロスタワー(131m、32階、1976年竣工)、住友不動産渋谷ファーストタワー(130m、 26階、 2010年)、青山パークタワー(119.95m、34階、2003年竣工)、代官山アドレス ザ・タワー(119.9m、36階、2000年竣工)、神宮前タワービルディング(115.3m、 23階、 2017年竣工)、あいおいニッセイ同和損保新宿ビル(111.9m、24階、1989年竣工)、新宿文化クイントビル(111.6m、23階、2002年竣工)、住友不動産渋谷タワー(111.45m、21階、2019年竣工)、 渋谷ソラスタ(106.9m、21階、2019年竣工)、渋谷フクラス(103.31m、18階、2019年)、渋谷インフォスタワー(102m 、21階 、1998年竣工)、NHK放送センター(101.8m、23階、1973年竣工)、恵比寿プライムスクエアタワー(101.35m、 22階、 1997年竣工)、 渋谷パルコ・ヒューリックビル(100m、19階、2019年竣工)、渋谷マークシティ イースト(99.67m、25階、 2000年竣工)、である。

これらのビルの総重量は300万tに達するが、プルトニウムの質量変化100gによるエネルギー(*)で蒸発した。

*質量100gはエネルギー270T Jに相当し、300万tの資材を2万度に加熱できる量である(セメントおよび骨材の比熱は0.836kJ/ (kg・K)であり、水の1/3である)


目が見えなくともGSPと衛星からの映像でハルコは周りを見ることができた。

ハルコの身長は高層ビルレベルであり、NTTドコモ代々木ビルを除けば渋谷のどのビルよりも背が高かった。ハルコは焼け残ったビル群を叩き、蹴り、踏みつぶし、ようやく怒りを収めると運命の新宿へ向かう。

ハルコは原宿を越える東へ逸れ表参道を北上し、千駄ヶ谷の新国立競技場へと行った。失った東京駅南ドームの代わりに新国立競技場の屋根を股間を隠すのに剥がしたのだが、真ん中に大きな穴が開いているのに憤慨し、それは八つ当たりでしかなかったのだけど、総工費1529億円の施設を破壊すると新国立競技場の屋根を抱えて、胸元は両の腕で、股間はやはり2本目の右腕で隠し、代々木を越え新宿へと向かった。


9.再びの新宿

新宿は、武蔵野台地の東方に位置し、江戸時代には甲州道中の宿駅(内藤新宿)として栄えた。明治維新後の1885年に日本鉄道の山手線の駅が置かれた。当時、新宿の町の中心は江戸時代から続く甲州街道の宿場町である内藤新宿(現在の新宿一丁目・二丁目付近)があった辺りであった[2]

。鉄道黎明期においては繁華街や既成の市街地などでは鉄道に対する反対運動が激しく、内藤新宿付近に駅を設置することができなかった[2]。そのため新宿駅は西側の町外れに置かれ、駅周辺は閑散としていた[2]。市政施行時には新宿は東京市域にも含まれておらず、当時の渋谷や池袋と同様、新宿駅は田畑の広がる東京郊外の田舎の駅の1つにすぎなかった。

1889年、中央線の前身である甲武鉄道が新宿駅 - 八王子駅間を開業すると、徐々に新宿駅を中心として町が発展していった[2]。繁華街として本格的な発展を遂げたのは、1923年の関東大震災以降のことである。すなわち、銀座や浅草などの下町に比べて武蔵野台地上にある新宿は表層地盤が非常に強く被害が軽微であり、震災後に下町から移り住んで人口が激増した西部郊外にとって当時の中央線が都心に乗換えなしに行ける唯一の鉄道であったことから、私鉄各線からの乗り換え需要で新宿に交通が集中するようになり、戦前期には、新宿駅東口は都内有数の一大繁華街となったのである。

1933年には新宿三丁目に伊勢丹が開業した。戦後直後は東京の他のターミナル駅同様、駅前に闇市が形成された。戦後、高度成長期を中心に東京の郊外は一貫して西側へ拡大していき、郊外住宅地に住む人々が千代田区の丸の内や大手町、中央区の日本橋などの都心部へ通勤・通学するための乗換駅としての役割を果たすとともに、鉄道交通の拠点として都心部の繁華街を凌駕する規模の商業地として発展していくこととなる。これは他の副都心である渋谷や池袋も同様である。(*)

*Wikipedia 





第2次世界大戦以後の戦争はプロレスである。

朝鮮戦争は北朝鮮29万人、中国軍13万5000人、韓国28万人、アメリカ4万人、そのほか国連軍合わせて1800人が戦死した人類史上もっとも悲惨な戦争の1つであった。しかし朝鮮戦争打開のために核兵器の使用を進言したマッカーサーは解任され(*)、その後の戦争で核兵器が使用されることはなかった。

*1951年1月、中国の義勇軍の人海戦術に押され、マッカーサーとワシントンはパニック状態に陥っていた。マッカーサーは大規模な増援と、原爆使用も含めた中国東北部空爆を主張したが、第二次世界大戦後に常備軍の大幅な縮小を行ない、ヨーロッパでソ連と向き合うアメリカ軍に、大規模な増援を送る余裕はなかった。中国東北部への爆撃は戦争の拡大をまねき、また原爆については、朝鮮の地勢と集約目標がないため現実的ではないと否決された(Wikipedia)


第2次世界大戦(推定死者数5000万〜8000万人)後の人類の悲惨な戦争は続いた。そして現在も続いている。

朝鮮戦争 51,700人(1950)、第一次インドシナ戦争 31,500人(1954)、ベトナム戦争(テト攻勢) 65,000人(1968)、ビアフラ戦争 30,000人、1968年、ベトナム戦争(イースター攻勢)150,000人(1972)、第四次中東戦争 21,688人 (1973)、フォークランド紛争、1000人未満(1982)、イスラエル・レバノン紛争 18,500人(1982–85)、湾岸戦争 25,678人(1991)、イラク戦争34,543人(2003)、シリア内戦 31,053人(2012-2016)


いずれの戦いも多くの犠牲を被りながらも為政者たちは核兵器の使用に踏み切らなかった。

その1つの理由は、核兵器の能力を知った上でそれを使用した国に尊敬はなく、例えその一瞬勝利しても世界中から非難を浴びて、結局のところ敗者にしかなれないからである。

もう1つの理由は、相手、もしくは第3国が核兵器を有するため核攻撃の連鎖を生み、同じく敗者にしかなれないからである。


第二次大戦の終結で使われた核爆弾はその後も改良と増加が繰り返されて、2022年現在の世界の核兵器は人類を200回殲滅させる量がある。(*)

*筆者計算

2021年1月時点の核兵器保有数は13,080である(広島県ホームページ)

13,080×31万9186名(広島原爆死者)×3000(広島原爆との能力比較)=1兆5377億人 ここで世界人口は77億人であり、1兆5377億人÷77憶人=200となり、人類を200回死滅される量となる。


この究極の武器が現れて以来、人類は何度も終末戦争の危機に見舞われたが辛うじて絶滅の危機を乗り越えて、繁栄をつづけたのである。


ハルコと自衛隊の戦いは世界中で中継された。その結果を見たアメリカは内閣に対して米軍の提供申し出たが、総理大臣はその要請を断った。

「大統領、今のところ計画通り進んでいます。貴国におかれてはそのまま観戦ください。これは我が国の問題で、我が国はこの問題を解決する能力を備えています。」

「総理大臣、そうではないのです。我々が危惧するのは貴国の誇る汎用人型決戦兵器(*)の暴走ではないのです。この危機につけ込んだ第3国の帰国への攻撃を恐れているのです。」

*エヴァンゲリオンは、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する架空の兵器(人造人間)。正式名称は汎用人型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオンである。(Wikipedia)

昨年の総選挙で歴史的勝利をおさめた半蔵門イチロウ総理大臣は、その言葉を待っていたので、ややはにかみながら、

「それが本プロジェクトの本当の目的なのですよ。」と答えた。


実際に某国では日本へ向けた核ミサイルがセットされ、議会の承認を得て、発射されていた。それは第二次世界大戦から80年以上の時を経て、使われる核兵器であった。かの国が日本は反撃能力がないことを確信しているからであった。どんなに国際的非難を浴びても他国を侵略し、そのさいに核兵器を使用したいと思う国はあるのである。彼らはこの時を待ち、この時のために備え、そして思いを果たしたのであった。


その頃ハルコは天龍寺を過ぎ、新宿四丁目の交差点を信号無視し突っ切っていた。片側3車線の道路も、信号も、すでにハルコの眼中にはなかった。気まぐれにIKEAのビルを破壊し、新宿伊勢丹の方へ向かって歩いていた。

ハルコの身長は東京都庁と同じ234mであり、東京都庁と同じ高さであった。そのため人々にとっては巨大なビルが動いているようなものであった。

多くの人がこの危機から逃げ出したが、その3倍以上の人がこのカタストロフィを見るために集まったので、新宿通りと呼ばれる新宿駅からビッグカメラへと抜ける通りはハロウィンの渋谷並みの混雑となった。

見物者は、目の前の災禍をまるで劇場のように感じていたので結果として多くの人が死ぬこともあったのだけど、そうしてようやく自分もこのドラマの出演者の1人であったのだと知ったのだった。


ここでハルコは激しい便意を覚えた。

「えっ?」

この状況で迎えた最大の危機にハルコは声を上げてしまった。もうすでにどこにもハルコの身長に見合うトイレはなく、ハルコは良い気になってビルを破壊することで集めたテレビ局の中継車で周りはいっぱいであった。ネット情報を検索するとパルコの姿は世界196か国、つまり国連に登録された全世界に中継されていた。

それでこの便意である。

持ってきた新国立競技場の屋根は洋式便座みたいにも見えたが、どう考えても何の役にも立ちそうにもなかった。

飛ぶことを考えたがハルコの身体にはそのような機能はなかった。ジャンプしてもジェットも噴かなければ、翼も生えてこなかった。

そして自爆スイッチも探したが、それもなかった。

万事休すだ。

ハルコは新宿御苑に戻り、そこで穴を掘って用を足すことも考えたが、もうそこまでも持ちそうもなかった。池袋駅、秋葉原駅で催したよりももっと強烈で取り返しのつかない激しさであった。

しかたなくハルコは穴を掘ると地下街が出て来た。多くの人間がハルコをローアングルで見上げていた。ここでしゃがむ勇気はハルコにはなかった。

そこで3本の腕で地下街の下を掘った。

すると都営新宿線が出て来きた。更に掘ると東急東横線に接続する(東京メトロ) 副都心線が出て来た。

もうダメだ。ハルコは一命をかけたヤクザ、自衛隊との戦闘でもこれほどの絶望を感じたことはなかった。

そのときであるハルコに仕掛けられていたプログラムが作動する。

プログラムに従い、ハルコは四つん這いになると尻を持ち上げた。顔をおこすと、口から反動を防ぐためのジェット火炎を噴出した。

ハルコは放屁とともに東京駅南ドームのフィニアル(頂華)を噴出すると、それで伊勢丹横の紀伊国屋書店でアニメ・マンガが売られている8階を貫いた。

更にめりめりと肛門を広げながら、ICBM(*)を発射した。細かなしわは広がり切り、ハルコは痛みに耐えながら、何とか無事に出したいと思ったのだけど、最後の十字翼で四方に切れてしまった。

「ぎゃっ」とハルコは短く叫んだ。

*大陸間弾道ミサイル(英語: intercontinental ballistic missile、略称:ICBM)は、有効射程が超長距離で北アメリカ大陸とユーラシア大陸間など、大洋に隔てられた大陸間を飛翔できる弾道ミサイル。大陸間弾道弾とも称する。アメリカ合衆国やソビエト連邦間では、戦略兵器制限条約(SALT)により、有効射程が「アメリカ合衆国本土の北東国境とソ連本土の北西国境を結ぶ最短距離である5,500km以上」の弾道ミサイルと定義された。(Wikipedia)


肛門は避け、臀部は結構なやけどを負い、陰毛はすべて焼けてしまった。

ハルコは肛門の激しい痛みに耐えながら、改造手術を受けた際の2人の医師、お茶の水ユースケ博士、言葉を思い出した。

(ハニー、知ってるかい?最初の鉄腕アトムはお尻からマシンガンを発射してたんだ。それが可愛かったのに、2003年ASTROBOY版では左腕にアームキャノン砲という設定に代わったんだ。でも不評でね。2009年映画ATOM版ではマシンガンお尻にもどったんだよ)

そしてお茶の水ユースケは駿河台エージのお尻を撫ぜていた。駿河台エージの嬉しそうな顔。

だが肛門の傷を指でいたわりながらハルコは(こんなの絶対手塚治虫じゃない)とは思った。

ICBMと一緒ハルコは結構な量の排泄物を噴出し、JR新宿駅からマルイ新宿本店、マルイ新宿メン、伊勢丹本店、伊勢丹メンズ館、紀伊国屋書店、を越えて新宿3丁目に続く一帯を、文字通り、「汚した」。

ハルコにはSNSの声が嫌でも入って来る。

(なにこれ、うんこ?)

(死んじゃうくらい臭いわ)

(動物のうんこ?すごい臭い)

(何あのオンナ、変態?)

(すごい変態、死ねば良いのに)

(うわ、キモい)

(人前で、バッカじゃないの?)

(露出、変態、バカ、キター)

するとハルコは火を噴き、新宿通り一帯を、彼らの希望通りに浄化した。


一方、ハルコの撃ちだしたICBMは高度6200キロを超え、成層圏に出たところで2段に分かれた。そして上段の部分はさらに312本に分裂し

某国から日本へ向けた核ミサイル312本を迎撃するのに使われた。

そして1段目は某国のミサイル発射基地を正確に攻撃した。

「核攻撃を受けた国だけが核攻撃ができる」と矛盾のレトリックを満たすために編み出した作戦であった。

使えるが使わない核兵器は、このようにして使えたのだ。


ボロボロになったハルコはスタジオアルタとヨドバシカメラを破壊すると線路を越えて、西口へと向かう。そこでユニクロ、バルク、ビッグカメラを壊し、ちょっと戻って小田急、京王の駅ビルを壊した。

衛生を通してルミネ2も見えたが、ハルコの気をそそらなかった。

ハルコは東京モード学園、工学院大、京王プラザホテルを破壊すると東京都庁へと向かった。

自分の知らないところで自分の体内で食べたミサイルがICBMに再構成されていた。自分は得体の知らない何かに使われているロボットなのだとハルコは知った。

東京都庁はハルコと同じ234mであった。

ハルコは都庁舎の隣にたち、背を比べ、それが正しいことを知った。

(疲れた)、ハルコは第一本庁舎にもたれかかると、庁舎は倒れ、第二本庁舎にあたり、止まった。

ちょっと前からハルコは手がムズムズするのを感じていた。それを見ようと顔を寄せるが、両目とも視力を失ったのを思い出し、空にかざし、人工衛星あじさいを通して見た(*)。

*あじさいは日本の測地実験衛星である。高精度測地ミッションの確立を目標とし、1986年8月13日にH-Iロケットにより打ち上げられた。光線を反射する鏡を持つのみの、コマンドの受信機能などは持たないという意味で完全にパッシブな宇宙機である。(Wikipedia)


手の平のしわは拡大され、その無数の皮膚の裂け目、それは戦闘でつけられたものであったが、その裂け目からハルコの体内に生息する無数のウジ虫が見えた。

それは新宿のゴミ捨て場に捨てられていたさいにハエが産み付けたタマゴがかえったものであった。すでに体内すべてに侵し、ヤクザも自衛隊も打ち負かしたハルコの体を徹底的に破壊していた。

恐るべきひたむきさと献身的とまで言える熱心さで虫たちはハルコを躯体のタンパク質の部分は食いつくし、神経を代替する光ファイバー網、各種電線の被覆用プラスチックまでその腹に収めていた。

ハルコは立っていることができなくなり、第一本庁舎に更にもたれかかると、庁舎は潰れ、ハルコは第二本庁舎に頭をぶつけた。

(夕焼けはずっと嫌いだった)

ハルコは衛星越しに富士山に沈む夕日を見ていた。

(夜になると逃げ場がなく、家に帰らなくてはならないのが嫌いだった)

ハルコは夕日を見ていた。

(義父にまた犯されると分かっていても、お腹がすいて、帰るしかなかった。子供のころからいつも汚いなりで、みんなに嫌われた。勉強も全然出来なくて、分からなかった。誰も私を助けてくれなかった。みんな、私の家で何が起きているか知っていたのに知らないふりをした。どこかに引っ越せば良いのにと思われてきた。お母さんはアル中で、誰も私なんて好きになってくれなかった。私はゴミみたいに捨てられたんだ。)

ハルコは破壊した新宿の街を見た。

(ずい分大勢の人を殺してしまったな。きっと地獄へ行くのかな。それでもいいや。この不安な夕日をずっと見続けるよりましだわ。もうお腹もすかないし、なんだか眠い、眠い。)

ハルコ体内の24基ある原子炉の冷却水のバルブが開かないため、ハルコの体温は2000℃まで上昇し、そこでフェイルセーフ(*)が作動し、制御棒は抜け、ハルコは停機した。

*フェイルセーフとは、なんらかの装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に設計時に想定した安全側に動作するようにすること。(Wikipedia))


そしてハルコはもう2度と動くことはなかった。

一度目の死んだときと同じく、ハルコの目は開いたままだった。

ハルコは新宿で生まれ、その生涯をほとんどこの街を出ることなく過ごし、実際のところ、他県に行ったことがなかった。

そう、ハルコにとって東京は美しく華やかなごみ溜めであった。


児童性的虐待とは、成人または年長の青年が、性的刺激のために子供を利用する児童虐待の一つであり、性的虐待でもある。他にも児童性虐待、子供に対する性的虐待、児童期性的虐待、性的児童虐待などの訳語がある。

児童性的虐待の形態としては、児童との性行為、わいせつな露出、児童のグルーミング、児童の性的搾取、実際の児童を使っての児童ポルノの作成などがある。ユニセフでは、児童婚もまた「少女に対する性的虐待と搾取の最も一般的な形態」とする。

児童性的虐待の影響には、うつ病、心的外傷後ストレス障害、不安、複雑性PTSD、成人期においてさらに被害を受ける傾向、そして何より子供への身体的傷害などがある。家族による性的虐待は近親相姦でもあり、特に親からの近親相姦の場合、より深刻で長期的な精神的外傷をもたらす可能性がある。

児童性的虐待の被害を受ける割合は、世界的には女性で19.7%、男性で7.9%と推定される。

加害者のほとんどは被害者と面識があり、約30%が子供の親戚で、兄弟、父親、叔父、いとこなどである。他の約60%は、家族の友人、ベビーシッター、近所の人などの「知人」である。見知らぬ人からの加害は約10%である。

日本の場合、警察庁の発表によると、児童性的虐待での検挙件数は年間約350件(2020年)であるが、増加傾向にある。ただし、暗数が多いとされている。

被害者は女児が多く、約97%を占めている。加害者は養父・継父が最多で約44%のほか、実父も約40%を占めている。その他には、内縁の夫、祖父、兄弟、いとこ等が含まれる。(Wikipedia)



10.桜田門(取り調べ2)

警視庁には、東京駅、品川、渋谷、そしてまた新宿で起きた大災害の知らせが入ってきていた。

渋谷では自衛隊との戦闘でそれを打ち負かし、新宿では某国ミサイルを迎撃し、更にそのミサイル発射基地を破壊した。

ハルコと呼ばれる巨大ロボットは完全に停機し、解体作業が進んでいる。

この巨大ロボットが起こした一連の事件の重要参考人として連行した帝国大学医学部教授お茶の水ユースケ、助教授駿河台エージの取り調べが続いていた。

昼に駿河台エージと面談した八重洲セイジがすでに日が変わる時刻であったが引き続いてお茶の水ユースケと対峙する。

昼の時点では単にヤクザと改造された少女の抗争であったが、日本が報復攻撃をした今は国際問題となった。ハルコに破壊された東京の惨状すらたいしたことでない。

日本と日本に攻撃を仕掛けた某国は現在国際司法裁判所の管轄下になっている(*)。

*紛争の解決に責任を持つ国連の主要機関は、国際司法裁判所である。一般に世界法廷としても知られるこの裁判所は、一般的管轄権を持つ普遍的性格の唯一の裁判所である。このことは、多くの当事国が裁判所に出廷し、かつ広範な問題に対処するよう求めてきたことにも反映される。1946年の創設以来、司法裁判所はおよそ164件の事件を取り上げ、国連加盟国が提訴した法律紛争に対して120件以上の判決や150件以上の司法命令を行った。また、国連機関からの要請に応えて27件の勧告的意見を発表した。(国際連合広報センター)


 取り調べ室に入るとき、八重洲セイジ「どうぞ」と言い、神楽坂ヨシヲをともなって駿河台エージ容疑者に入室をうながした。

 その間際、3人はそれぞれ廊下から窓の外を見る。

 すっかり夜はふけて、8月のきれいな弓張月が見えた。風はまだ熱い。お茶の水ユースケはその月のような円い駿河台エージの尻を思い出したが、もう会うことはないと悟ると寂しい気持ちになった。


 取り調べ室のお茶の水ユースケは饒舌とも言える非常に友好的な態度でハルコの設計図まで見せて、八重洲セイジに説明した。

 計画は過疎化の進んで地方の小さな商店街の立ち話から始まり、それに地元の商工会議所が乗り、町長から地元の県議員に働きかけ、地方から中央へ、県知事、国会議員、中央官庁、やがて旧財閥と呼ばれる企業グループが参加するほどとなった。これほど大きな計画なのにその存在を示す書類は一切なく、指揮命令系統も分からなければ、参加者の役割すら分からなかった。多くの人間がプロジェクトの一端を担っていたが、自分が何のために何をしているのかは誰も知らなかった。

 実際、駿河台エージ博士は今回の結果を予想もしていなかった。

 お茶の水ユースケ博士も同じであったが、人づてに聞いたいくつかの言葉の意味を、ニュースを見て、初めて理解したのだった。

 ハルコを構成した部品もまた同じであった。精密に図面通りに加工されたが、それが何になるのかは、誰も知らなかった。

 部品は国内にあるすべての研究機関、その中には原子力研究所(*)も含まれていたが、各分野の最高峰の機関で作製されたのであった。

  即ち何も証拠はなく、ただお茶の水ユースケと駿河台エージが図面通りにハルコの改造手術を行ったという記録しかなかった。

 そのため通常の警察が行うような取り調べはなかった(*)。

*取り調べとは、主に刑事訴訟法198条1項・2項に規定される犯罪捜査のために検察官や司法警察職員が被疑者や参考人に対して出頭や供述を求める職務上の行為をいう(Wikipedia)


 代わりにお茶の水ユースケと八重洲セイジの会話は極めて概念的であった。

 八重洲セイジは言う。

「今回の事件は民主的ではないのではないか。それは多くの国民の意見を反映していないからだ。」

 お茶の水ユースケは答える。

 「質問に対して質問で答えるのは、宗教ではよくあるけど、通常の会話のマナーでは禁じ手とされていますね。でも民主主義とはいったい何でしょうか?もしそれが多数決を意味するなら、世界の行政は多数者である発展途上国の人が決めるべきでしょう(*)。でもそんなことはしない。ならそもそも世界は民主的でないのではないでしょうか?」

*先進国の人口が12億人に対して、新興国や発展途上国の人口の合計は57億人であり、84%と圧倒的な大多数を占める(2010年)。

 1日1ドル90セントという国際貧困ライン未満で暮らす人々は、7億8,300万人に上ります。2016年の時点で、全世界の労働者のほぼ10%は1日1人1ドル90セント未満の所得で家族と暮らしています。(国連 持続可能な開発目標(SDGs))


今日日経平均株価はバブル崩壊前の最高値(*)を更新し、大幅な円高も進んだ。更にマイナス金利にあるにも関わらず日本国債は買い手過多で取引停止となった。

その一方で赤十字奉仕団と国境なき医師団が日本に着き、負傷者たちの救助にあたることとなった。六本木と霞が関には難民キャンプのテントが張られていた。

巨万の富と廃墟となった都市が同時に存在する、恐るべき時代に我々はいるのだった。

*38,915円87銭 1989(平成元)年12月29日、年内最後の取引日「大納会」を迎えた東京証券取引所で、日経平均が史上最高値を付けた。


八重洲セイジは言う。

「最後に1つ、教えてください。先ほど警察組織の解散と別組織の結成の発表がありました。私はこれから別の仕事を担当します。そのためあなたに会うこともなければ、この記録が残ることもないでしょう。それでも私はあなたに聞きたい。これから世界はどうなるのでしょうか?」

お茶の水ユースケは答える。

「この世界はもうすぐ破滅するよ。1990年に日本に起きたバブル崩壊よりも明らかだ。もうすぐ世界はデフォルトする。

世界の終わりは核戦争とデフォルトの可能性があり、私たちは核戦争を回避することに成功した。でもデフォルトは起きるよ。これはもう運命で、避けようがない。

お金なんて食べることも出来なければ、衣服にならなければ、家を作る材料にもならない。それに価値があるという共通の認識があるから価値が認められているだけなのだ。

2019年には、世界の超富裕層26人は、世界人口の下位約38億人の総資産と同額の富を保有しているという報告が出されたんだよ(*)。

*OXFAM “PUBLIC GOOD OR PRIVATE WEALTH”, 2019


それにね。現在において、金は紙幣ではないので、重さをもたない。ディスプレイ上の数値だけなんだよ。

為替取引だけも、1日に200兆円近いお金が動く現在の為替市場では、『実需の為替:投機の為替の比率』は概ね『1:9』であり、圧倒的に為替取引の利益そのものを目的とした投機が多くなっているんだ。

日本の国家予算は年間でおおよそ100兆円なんだよ。為替取引だけでも1日にその2倍の金が動くんだ。先物取引はさらにその10倍である。この社会は破綻の淵に立っている。人やものよりもはるかに大きな金額が動いていた。2000兆円に365日をかけると74京円となる。それを世界人口の77億人で割ると、1人あたり9千万円になる(*)(2022年現在)

*(計算式) 100兆円×2×10=2000兆円 2000兆円×365日=74京円 74京円/77億円=9千万円


この数字が意味するものは何か?これだけの金をみんなが持っていればみんながしあわせになれる。だがそんなことはない。

あふれるマネーは、それを支える人の財産なのか?人の借金なのか?世界の平均年収は約30万円と言われる。1人あたり、その300倍もの金額が動いているのだ。

貨幣をありがたがるのは人間だけで、そもそも数字に何の価値もない。食べることもできなければ、持つことも出来ない。

ましてやね。人間はいずれ死ぬのに、死後の世界にも持って行けない。それなのに人は死ぬまで金に執着する。人間はようやくそのバカバカしさに気が付いたのさ。もう誰も金に価値を認めない。」

黙って聞く八重洲セイジにお茶の水ユースケは優しく言う。

「残念ながら世界は破滅するよ。世界が同時にデフォルトすることによってね。」


『ヨハネの黙示録』は、『新約聖書』の最後に配された聖典であり、『新約聖書』の中で唯一預言書的性格を持つ書である。(Wikipedia)


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