第5話

 嫌だと言えないまま時間が流れていく。今は…



「最初は私!私は大城心那おおしろここな!18歳で好きなものはかき氷!よろしくね」

『パチパチパチパチ』



 自己紹介をしている…ていうかやっぱ君高校生だよね!肌とか色々若いもん…本当に信じられないよ。



木下大きしただい…21歳だ」

『パチパチパチ』



 ていうか自己紹介すんなよ…初対面の人の前で俺喋れんて。学校の新学年になったときに名前覚えるためにやるぐらいの感覚でやってんだろうけど…正直やりたくないよ〜


 ちなみに提案者は『司会のお兄さん』…参加者の中で反対もなかったのでやっている。俺は反対したかったけどね…言えなかったからね、仕方ないんだけどね。



永野優愛ながのゆあ…パソコン好き…」

『パチパチパチ』



 ちなみに前の方から順番にやっている、当然一番後ろに座っている俺は一番最後ってことになるよ☆


 あ"〜こうなるんだったらちょっと無理して前座ればよかった。最初と最後が一番きついんだよこういうの。


 ………………………



「じゃあ最後の人!」


 どんな事話すか考えてたら俺の番。ずっと前の人たちの自己紹介を後方腕組みスタイルで考えていたのに何も浮かばない…まずいなと思いつつゆっくりと腕を解きゆっくりと立ち上がる。時間稼ぎだ。



「大鐘大樹だ」



 …ミスった〜何も浮かばなかったから、名前だけ言ったけど拍手の一つも起きない。

 どうしたお前ら?前の人のときはハッキリと拍手してただろ?何で俺の時誰もやらないの?いじめ?……納得。


 振り返ってきた人の冷めた目を見ないようにするために素早く座り、少し薄目を開けてうつむく。そして後方腕組みスタイルに戻して俺のせいで固まった空気をほぐしてくれる救世主を待つ。


 完璧にしくじった、そう思った。



「じ、じゃあみなさまの自己紹介も終わったと思いますので、戦闘服についての説明を行いたいと思います」


 司会のお兄さんの一声で俺の方に向いていた視線が減った…ありがとう救世主はあなただったか。


「戦闘服は皆様の能力に合いましたものを用意してございます」


 …そもそも宗田と名乗るあの男が言っていた事を真に受けるなら、ここに集められているのは何かしらで優秀な人なはず…俺は何を評価されたのだろうか。



「更に皆様が使いやすい武器をご用意しています」



『皆様の能力』というが、俺が誇れるのは柔道ぐらいだ。でも俺より強い人は日本中にいっぱいいる。じゃあ俺は何で呼ばれたんだ?



「ヒペリカムの超能力に対抗するためには、私達も力を持つ必要があります。」


「皆様の能力と日本科学の結晶である戦闘服を使う事で対抗していく…そのような計画です」


「先ほども言いました通り、今も研究を続けていますので、これからもっと良くなります」


「それでは今から一人一人お呼びします。呼ばれた方は前に来てください、あなたの戦闘服の効果と武器について書かれた紙を渡します」


 特にスポーツで良い結果を残した覚えはない。足も早くないし、強いて言うなら筋肉ぐらいだが、筋肉で戦うことはできないのでないだろう。結論、分からん。


「永野優愛さん」

「あなたは知能で選ばれました」


「木下大さん」

「あなたは速さで選ばれました」


「大城心那さん」

「あなたは剣道で選ばれました」


山本球也やまもときゅうやさん」

「あなたは精密投球で選ばれました」


広瀬雄也ひろせゆうやさん」

「あなたは射撃で選ばれました」



 ……………………



「大鐘大樹さん」

 また最後だったよ、最後に好かれてんな本当


 さあ、答え合わせだ。



「あなたは…」



「力で選ばれました」



 …おいおいフラグ回収だよ。

 少しざわつく、もはやこれも慣れてきそうだ…他の人は知能とか、速さとかまだ味方とかにいそうな感じあるけど…力はどっちかというと敵の幹部とかじゃない?


「そちらの紙に書かれている内容をご確認ください」


 紙には戦闘服が引き上げてくれる能力についてと、どんな武器かが書かれていた。

 

 俺の戦闘服は…全体の力の底上げをしてくれるらしい。あと武器は戦鎚だってよ…そもそも見たことないよ、なにそれ。


…調べたらクソデカハンマーじゃん、怖



「これから皆さんにはもう少し鍛えて頂いたあと、実際の戦闘に参加してもらいます」


「これを承諾する方のみサインをお願いします」



キタキタ〜ここで最後のチャ〜ンス。ここを逃したらないだろう。さぁ絶対サインしないぞ〜。



「何か質問はありますか?」


「これにサインしなかったらどうなるんだ?」



 おっ、一番聞きたいことを聞いてくれた。



「この作戦が終わるまでの間、逮捕させていただきます」



 だめだ〜選択肢実質一つだ〜

 おらこんな国嫌だ〜国家権力の暴力だ〜



「…他に質問は?」

 

「戦闘にはいつごろ参戦するんだ?」


「早くて12月中盤です」



 はやっ!1月ぐらいかと思ってたわ。そんなん覚悟決められないだろ、



「ですから皆様には明日から早速トレーニングなどを開始していただきます」



 なんかすっごい嫌になってきた。他の人どうしてんの?ペンが動いてすらいないでしょ。


「よしできた!」

「覚悟の上です!」

「…やるぞ〜」


 すっごい覚悟…ほとんどの人が書き終えてお兄さんに提出している、残ってんのは俺とあと五人ぐらい。


 同調圧力と逮捕って怖いよねって思いながらサインを書く、ちょっと意地悪で読みにくくしといた。


「全員確認いたしました。今日はこれで以上です、明日についての紙を配りますのでそれを受け取ったら帰ってください」


…書いちゃった


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気づけば味方にいるタイプの圧倒的な強キャラになってました 五色団子 @U1nFRx0

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