第8話 ミッション

 今のオレの目標は、レベルを最大にまで上げて、定期的に出現する、レベルが必要な強敵を倒すこと。これはオレだけではなく皆共通だ。

 ただ、繰り返しだがアールファンタジアオンラインはやれることが多く、装備強化や、その為の資金・素材調達も必須となっている。いや、むしろこちらのほうがこのゲームの楽しみ方なのかもしれない。

 オレ以外の三人はそこら辺を承知しているらしく、敵から落ちたアイテムを強化したり素材を集めたり、はたまた派生ミッションをきっちりとこなしたりしている。

 元来がずぼらなオレはこの派生ミッションを全くチェックしておらず、毎回ボイチャで、

「マスター、〇〇ミッションはクリアしましたか?」

 などと突っ込まれる。

 素直に、してません、と返すと、では行きましょう、となる。この一連はもう日常になりつつある。

 そしてミッション受付に案内してもらい、敵の場所まで誘導されて、漸くミッション達成となる。全く、どちらがマスターなのか、という具合だがこれには事情がある。

 オレは極度の方向音痴なのだ。

 リアル世界でもだがゲーム内でもその方向音痴ぶりは健在で、誘導してもらっていながらすぐにはぐれて迷子になる。その度に、

「マスターが消えた」

 とボイチャから聞こえてくる。いや、本当に申し訳ない次第だ。そういう時にこちらにもボイチャ環境があればな、と思うが、テキチャで「迷子」と一言入れると察してくれるようになっていて、わざわざ戻って来てくれる。

 なんとも優しいメンバーだろうか。

 ミッションには幾つも種類があって、NPCと喋れば達成、と言うものから強敵の討伐まで文字通り様々だ。

 が、それらを網羅していないオレなので、例えば昨日はタカポンに言われるがままNPCと喋って、それで強力な装備を入手したりもした。全く、新人・自称初心者とは思えない博識ぶりである。

 対してデューは、メインキャラを何故か封印していてサブキャラクターで参加しているのでレベルはオレより低い。低いが旧アールファンタジアオンラインの頃から強かったのでその実力は言うまでもない。

 ミッション関連やイベントごとの類も大体網羅しており、ボイチャで繋がりつつ一人で装備強化などをやっていたりする。

 このごった煮、混沌っぷりがオレは大好きなのだ。


 ラフネックスの信条は自由と奔放。それを体現しているかのような様子が、とても楽しくて仕方がない。

 皆で敵と戦うのが当然ゲームのメインだが、そうではない時間を大事にしたい、そういう運営方針で今日までやってきたし、明日からも来年も変わらないだろう。

 離れていったメンバーには伝わらなかったこういう遊び方。

 自由度の高いゲームだからこその遊び方。


 こんなチームがあってもいいんじゃあないか、そうオレは思っている。

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