第5話 スタンス

 チームマスターと言うと何だか忙しそうなイメージを持つかもしれないが、オレの運営方針の場合、そうでもない。

 主なことと言えばメンバー同士の交流を円滑にする、くらいなもの。ギクシャクするのは嫌だからだ。

 キャラクター衣装の見せあい大会なんてものもしたことがあったが、これはサブマスター・デューの仕切りだったので、オレは参加者その一だった。

 他にはチームルームというものの模様替えがあるが、これはどうやら誰でもやれるらしく、暫く見ないうちに色々な設備が整っていた。

 後は、普通のマスターなら率先して戦闘攻略に誘うところなのだろうが、いかんせんレベル最弱なのでこれは出来ない。

 ならば、とオレがやっているのは戦闘中にどうでもいい横やりを入れて場を和ませる、こんなところだ。

 本来ならば強力な武装で戦闘の筆頭に立つべきなのだが、この辺りはガロウらに任せている。これではいかんな、とは思っているが。

 しかしまあ、そんな雰囲気も悪くない、的な意見もあったので現時点ではヨシとしている。

 広大なアールファンタジアオンラインなので何事もぼちぼちと進めればいいのだ。

 しかし毎日そんなにぼんやりと過ごしている訳でもなく、昨日などはデューの討伐の手伝いを皆でしていたし、その前日はオレのレベル上げをやっていたしで、いちおうゲームぽく振舞ってはいる。

 皆が揃う時間がどうしても遅くなりがちなので徹夜、とまでは行かないものの深夜までゲーム三昧な日々だが、楽しいならそれもアリだと思う、生活に支障のない範囲であれば。

 しかし、と思う。

 たかがゲームだが、人によってスタンスがえらく違うものだなと。

 オレとデューは割と似たスタンスだ。時間潰しの気分転換という側面が強い。

 対してガロウとタカポン。二人はかなり真面目にゲーム攻略をしていて、知らないことは聞けば応えてくれる。

 その情熱がどこから来るのか、単にゲーム好きと言うだけでは片付かない気がしてならない。暇だから、でも片付かない気もする。

 それでも、どんなゲームであれ強くて死なないに越したことはない。それが一番のストレスだろうから。

 これは旧アールファンタジアオンラインと他のゲームでの体験から思ったこと。

 エアフライト系のゲームで墜落した時のストレスと言ったら半端ないし、コマンド入力型RPGで全滅した時なども同じく。

 旧メンバーが言っていた。どうしてそんなに強くするのか、に対して、

「死にたくないから」

 実に分かりやすい。

 だから動画サイトで装備強化のやり方を勉強したりしている、とも。オレにはそこまでの情熱というか執念は無かった。

 カイルンたちが呆れたのは、きっとそういう部分なのだろうな、と今更ながら思う。

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