第4話 チームマスター

 その昔、まだラフネックスを立ち上げる前、オレは他人様の作ったチームに所属していた、当然ながら。

 しかし合わなかった。理由は色々。

 チーム内での口調が悪い、だとかの理由で脱退した(させられた)こともあった。言っておくがオレはそんなに口は悪くない。

 その時のチームマスターが神経質だっただけだ、と今でも思っている。

 そして幾つかのチームを渡り歩いているうちに、だったら自分で作った方が早いのでは、と思い、ラフネックス誕生となった。

 最盛期には四十人くらいメンバーがいた筈だが、人数が多い分、癖の強い面子もいた。

 一番タチの悪かったのは、酔うと口が悪くなる奴。これには手を焼いた。

 出来るだけ他のメンバーと鉢合わせにならないように誘導していた覚えがある。

 そして今。

 リスト上では二十七名となっているので知らないうちにログインしているのだろうが、先に挙げた三人以外とは全く顔を合わせることはない。時間帯が違うのか、他のメンバー同士でやっているのかは不明だが、チームマスターとしては嬉しさ半分といったところ。

 単に他を探すのが面倒だからかもしれないが、カイルン他数名以外は脱退宣言をしてなお、未だに在籍してくれていると。素直に嬉しい。

 デューなどにこれを話せば、だったら集会・イベントを開こうと言い出すかもしれない。それもいいが、自分たちのペースでやっているのなら、健在ならばそれで良いとオレは思っている。

 ところでこれはオレの独断意見なのだが、このアールファンタジアオンライン、濃い人間が多い。癖が強いとも。

 他のマルチゲームをあまりやり込んでいないので単純比較は出来ないが、そう感じる。旧ラフネックスの面子が正にこれだったからだ。

 みんな良いメンバーだった、が、どこか癖がある。

 ん? そんな癖が強いメンバーに弾かれたオレは、もしかしてまともな部類の人間なのか? いや、まあそれはいい。


 今のチーム目標は全員のレベル上げ、という雰囲気だが、オレだけは違う。とにかくコミュニケーションで遊びたいだけ。

 それが戦闘だろうがボイチャだろうがどちらでも構わない。ガロウなどは嫌がるかもしれないが、マスターはオレなので権限を使わせてもらう。

 といっても強要はしない。奔放、自由がラフネックスの信条なのだから。

 チームが瓦解する時というのはこういった方向性が乱れた時だと、脱退者が多く出た際に痛感しているので、マスター権限などは無いものとして振舞っている。

 唯一がみんながオレのことを「マスター」と呼ぶ、これくらいだ。

 キャラクターに名前は付けているが、ボイチャでもテキチャでも、みんながマスターと呼んでくれる。

 最初こそ照れたが、今はもう慣れた。

 そう、オレはチームマスターなのだ。

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