ウザい後輩の前髪を切らせたらめっちゃ美人で、しかも俺に惚れてるんだが

月島ノン

前髪長くて胸がでかいウザい後輩

俺はレド。一般会社に勤めている社会人だ。

今、悩んでることがある。それは…


「せんぱぁ~い、仕事終わりましたぁ~。」


ポフンッ


俺の顔に大福が当たる。

そう、俺の後輩にあたる前髪が目にかかっている女。

こいつに悩まされている。


「胸当ててくるな!書類は?チェックするから早く出せ。」


「目は通しましたよ~?」


「お前ケアレスミス多いんだよ…こっちの身にもなってくれ。」


書類に目を通す。五分ほどで読み終えたが、ミスは無かった。

珍しいこともあるものだ。


「珍しくミスはなかったな。よくやった。」


「もっとほめて下さい~!」


そう言って、いつまでも俺の横にいるので頭を撫でてやった。

まったく…面倒くさい奴め。


「これでいいか?俺も仕事があるから、お前も自分の席に戻れ。」


「ありがとうございます~!でもやることないんですよ?」


「探せ。なんかできること…」


すると、後輩はしばらく悩むような仕草をした後、こう言った。

かなり嫌な予感がする…


「先輩のお手伝いします!何かやらせてくださいよぅ。ういうい。」


「つつくな!わかったよ…俺の仕事手伝ってくれ…不本意だが。」


俺は課長だから、部下をまとめないとならない。

もちろん、こういうウザい後輩も。


「何やればいいですか~?」


「この資料を…経理の部屋に運んでくれ。」


「うふふ…わかりましたぁ!」


資料を持ち上げて、目的の部屋に向かったが…あれ、転びそう。ヤバい…!


「あぁっと…!?」


「危ない!」


ムニッ…


なんとか資料と後輩が地面に落ちるのを阻止できた。けど…何だこの感触…?


「…せんぱい、狙ってました?」


「……すまん…」


完全に胸を揉む形で受け止めてしまった。


「私、お嫁行く前なんですよ~?ぴえん…」


「本当にすまない…でも、無事だったな。資料。」


「せんぱい、ひどいです~!私より資料を優先してぇ。」


なんだか面倒くさいことになってしまった…

資料は俺が運ぶか。結局俺の仕事だな…


「お前は皆にお茶でも煎れてやれ。資料は俺が届けるから。」


「…すみません。反省します~。」


「してないだろ。とにかく!行ってくる。」


まったく…厄介なことに巻き込まれたものだ。

何で俺が新人の世話を…あー、胃が痛い…


レドが資料を届けに行っている時、サヤたちは…


「もぉ~せんぱい、まだ落ちないです!ぷんぷん!」


「まぁ課長、堅物だからな。そう怒るなって。」


サヤ「怒りますよ!こんなに自慢のボディ使ってアピールしてるのに…ちょっかいとしか思ってないですよぅ!」


なんだかんだ、自分の面倒を見てくれるレドのことを好きになっていたサヤ。

落とそうと奮闘しているも、レドはいつもあんな感じ…

この光景が、部署の名物になっている程であった。


しばらくして、レドが帰ってきた。視点が変わるぞ。


やっと資料は届け終わったが…うわ、またあいつ来た。


「せんぱいすみませんでしたぁ。ちょっとつまずいちゃって…」


「その前髪のせいだろ!少しでもいいから、切ってこい。」


サヤ「嫌ですぅ~。」


埒があかない。


「どうしたら切ってくるんだよ…?」


「せんぱいが付き合ってくれたらいいですよ~?」


「別にいいぞ?」


「…え?ちょっ…本当ですか!?」


「'食事'に付き合えってことだろ?飯ぐらい奢るよ…」


なかなかに面倒くさい奴だ。あれ、なんか怒ってる。

何かまずいこと言ったか?


「せんぱいはわかってません!もういいです~。」


「あ、食事はどうするんだ?」


「今日の夜!定時であがって、一緒に行きますからね!」


「わかったわかった。今日の夜な。」


約束を取り決めて、その日は仕事を終えた。

俺とこいつが定時であがるから、皆に礼をしないとだな…


「皆すまんな!明日は残業するから。」


「はい、課長お持ち帰り~!」


「やかましいわ!」


マジでこういうときになると一丸となって何か言ってくる。


「皆さんありがとうございます~。せんぱい、近くのおすすめのカフェでいいですか~?」


「どこでもいいぞ。高いところじゃなかったらだがな。」


会話をしながら会社を出る。

結構冷えるな…手袋しよう…


「えっと~、この道をまっすぐ行ったところですぅ。」


しばらく道なりに歩いていると…また転びかけてる。もう前髪切れって…


「だから、前髪切れ。いつか怪我するぞ?」


「はぁい…後で切ってもらってきますぅ…てかせんぱい、手が寒いんですけど。手繋ぎません?」


「馬鹿か。カップルじゃないんだからよ…寒いなら手袋貸すぞ。」


「ありがとうございます~。て、着いちゃいました。手袋返却します。」


貸したのにすぐ着いた…狙ったのか…?とにかく、店に入ろう。


「いらっしゃいませ~。お席は…角のあちらでどうぞ!」


「わかった。ありがとう。…ここ行きつけなのか?」


「気になってただけですよ~?だから楽しみですぅ。」


高いかどうかわからないじゃないか…行きつけにしてほしいところだが。

席に着いてメニューを開くと、スイーツがかなり多く見られた。


「甘いの食えるか?」


「大好物ですよぉ。いっぱい食べちゃいます!」


これは財布が悲鳴をあげそうだな…クレジットカード使うか…


………………

 15分後

………………


「お待たせいたしました~。メガ盛りパンケーキと季節のフルーツパフェです。」


「ありがとうございます…!せんぱい、本当によかったんですかぁ?」


「いいもなにも聞く前に頼んだだろ!ったく…厄介な後輩を持ったもんだな…俺は…」


って…話してる間に食べてやがる…にしても幸せそうに食うな。一口もらうか。俺が払うんだし。


「一口もらっていいか?パンケーキ。クリームついてないところでいいから。」


「はい、せんぱいあ~んしてくださいね~。」


「何度も言わせるな、カップルじゃないんだぞ?まぁ、ありがとう…」


差し出すパンケーキを口に入れる。…なかなか美味いな。


「美味しいですかぁ~?」


「思ってたより美味かったよ。ほら、パフェ溶けるぞ。早く食え。」


「あっ、そうですねぇ!もぐもぐ…」


…あっという間に食べ終えてしまった。


「じゃあここら辺で勘弁してあげますよぉ。お会計行きましょう~。」


「払うの俺だけどな…」


その後、食事代を払って俺たちは家路に着いた。

初知りだが、家が意外と近いらしい。道が同じだ。


「お前、家一軒家か?それともマンションとかか?」


「マンションですよぉ。ひょっとして同じだったりして~。」


そうしたら最悪だな…毎日絡みに来られるってか…

ん?何か柄悪い奴らが歩いて来るな…迂回するか?


「おい、道変えるぞ。早くついてこい。」


「何でですかぁ?って…そういうことですか。はぁい。」


あ、とっさに手を出してしまった…しかもこいつ握るし…

暖かいな…こいつの手…


「もう大丈夫だな。手離せ。」


「嫌です…寒いので…」


??顔赤いな…熱でもあるのか?休まれたら困る。

前髪が邪魔だな…もう少し近づくか。


「熱あるのか?顔赤いぞ。」


「そんなことないです!大丈夫です…ていうか、髪切りに行くの忘れちゃいました。自分で切ってきます。」


「大丈夫ならいいんだが…お前がいないと困るからな。」


「え…?困るって何で…」


「お前のお陰で部署は明るいし、仕事も…まぁミスは多いが捗るからな。感謝してるよ。」


あれ…もっと顔赤くなった気が…しかも俯いてるし…大丈夫なのか…?


「今日はありがとうございました…帰ります…!」


足早に行ったな…しかもマンション同じっぽいな。入って行くのが見える。


「眠い…早く風呂入って寝るか。」


そのまま自分の部屋に帰って、風呂に入って寝た…かったが。

なぜかあいつの顔が頭にちらつく。

本当に大丈夫だったのか?もっと聞いとくべきだったな。っていうか、なんであんな奴のこと考えてんだ?寝ないと…


胸にもやもやが残ったまま、その日は眠りに着いた。


………………………………


…朝…か…まだ眠いな。だが一社会人として起きないとならんな。


「あいつ大丈夫だったのか…?会社で聞いてみるとするか。」


急いで着替えて、歯磨きを済ませて部屋を出る。

会社までは20分ほどだ。


「今日も頑張るか…」


会社に着くと、なぜかホールの皆がざわついている。

なんでかはわからんが…関係無い。部署に向かうか。


ん…?部署からも、ざわざわが聞こえてくるな…

これは関係ありそうだな…厄介ごとじゃなければいいが…


「変じゃないといいんですがぁ~…」


「いやいや、かわいいって!大丈夫だよ、自信持って!」


あいつと他の奴が話してるのか。そういえば、髪切るって言ってたよな。

イメチェンってわけか。どんな姿に…なって…


「あ、せんぱい…どうですかぁ…?変じゃないですかぁ…?」



こいつ…誰だ?今、俺の前に女神が立ってる。どうしたらいい?

いや、あいつだ。落ち着け落ち着け…って落ち着けるか!こんな美人だったなんて知らなかった…!


「へ…んじゃないと思う…ぞ…」


「せんぱい、聞こえません。もっと大きく…」


「ちょっと待て、近寄るな!今脳がショートする寸前なんだよ…」


おかしい。こんなのっておかしい。


「せんぱい…?大丈夫ですか…?」


「俺、変か!?どこがおかしい!?」


「顔が…真っ赤ですよぉ。」


くっそ…こいつにドキドキしてるなんて認めたくない…!

うわっ…勘づかれたか…?ニヤニヤしてやがる…!


「せんぱい、感想くださいよぅ!どうですか?かわいいですか?」


胸当ててくんな!頼む!今やられたら惚れる!


「か…かわ…いい…ぞ…?」


ニヤニヤが加速している。


「せんぱいって、面食いなんですねぇ。わかりやすいですよぉ?」


「やめろ…!わかった、かわいいから…!認める!」


「やった~、私の勝ちです~!」


こんな醜態さらすなんて…課長失格だな…


「じゃあせんぱい、今なら自信持って言えます!」


「な…何をだよ?」


「私と…お付き合いしてください!」


「…は?」


思考が止まる。顔が熱い。自分でも赤いのがわかる。


「ちょっ…待て待て…悪ノリで言うと、絶対後悔するぞ?」


「ノリじゃないです!本当に、せんぱいが好きで…私の面倒見てくれるし、優しくて、かっこよくて…って、私も面食いですね…人のこと言えないです…と、とにかく!好きなんです!付き合ってください!」


「……面目丸潰れだな。恥ずかしい…けど、言わせてもらう。俺も…好きだよ。言っとくけど、顔見て決めたんじゃないからな!もともと好きで…って何言ってんだ俺…!?」


「あの堅物課長が…」


「落ちた…?」


部署内はざわついてるとかいう騒ぎじゃない。

パーティーやってるのかってほどだ。静かにしてくれ…


「せんぱい…本当なんですか?」


「いや、嘘吐いてもいいことないだろ?ほ、本当だよ…」


ぎゅぅー…


「おい、引っ付くな…!って、なんで泣いてるんだ?」


「絶対無理だと思ってたんですぅ…いつも、どう接したらいいかわかんなくて、うざ絡みしちゃうしぃ…嫌われてるかと…」


「なんだ、そんなことか…本当はドッキリでした、とかだと思ったよ。絡んでくるのは…うざいが、俺も内心喜んでたぞ?後輩がかまってくれるほど、先輩やっててよかったって思うことないからな…」


俺こんなこと思ってたのかよ…変態か?

でももともとかわいい後輩ってことは変わらないし…ってかわいいってなんだよ!?


そんなの…俺が…


「惚れた…」


「え?せんぱいなんていいましたぁ?聞こえませんでしたよぉ!」


「だから…お前に惚れたって言ったんだよ!本気で惚れた!こんなの初めてだから、俺も混乱してるんだよ…」


おそらく、俺の顔は真っ赤だろう。

言い切ることは全部言った…もう悔いはな…ってなんで顔近づけて…


ちゅっ…


「ん…既成事実、作っちゃいましたね~?もう逃げられませんよぉ!」


俺は腰を抜かした。

今の…キス…?え?え?俺のファーストキス、こんな形で盗られたのか?

必死に顔を隠す。


「頼む!今だけは見ないでくれ!」


「ういうい~!せんぱい、初めてでしたかぁ?」


くそ、うざい!でもかわいい…!


「もう勘弁してくれ…」


俺にとって、今日は色々と初めてだらけの日になった。

キスといい、お付き合いといい…

その後は、なんとか脳を動かして仕事を終わらせ、こいつと一緒に帰ることになった。


「せんぱい…私たち…付き合ってるんですよね…?」


「まぁ…そうなるな。」


「手繋いでもいいですか…?」


「……いいぞ。」


俺たちの恋は、まだ始まったばかりだが…これだけは言える。


「結婚しよう。」


「え!?ちょっとせんぱい、どういうこ…」


塀に押し付け、俺からキスをした。

なんでか、こいつは抗わないで素直に受け入れた。


「ん…せんぱ…好きです…」


「俺もだよ…'サヤ'。」



………………………………


「サヤ!この写真、どこに置くか?」


「私が決めるので大丈夫ですよぉ。あ、部署の皆が祝ってくれたときの写真ですね~!懐かしいです…」


「あれからもう一年か?早いな。」


「そうですね~、せ・ん・ぱ・い?」


今でも、俺はサヤにからかわれている。今は嬉しさの方が強いが…


「その呼び方はやめろ…これから旦那になるんだからな。」


「それいったら、私も妻になるんですよぉ?毎日しましょうね~。」


「頼むから勘弁してくれ…」


俺たちは結婚することになった。今でも、かなりイチャイチャしている。


「愛してるよ…」


「急ですね~。私もですよぉ!レドさん…キスします…?」


「…する。」


今やサヤに負けっぱなしだが…俺は…いや、俺たちは幸せだ。

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