狼の星は今も昔も...

白玉

❅本編❅

 冬の夜、南の空を見上げてみると

 ひと際明るい三つ星が輝いている

 こいぬ座のプロキオン

 オリオン座のベテルギウス

 そしておおいぬ座のシリウス


 このシリウスには、別の名があると知った

 その名は「天狼星てんろうせい


 そういえば、幕末の志士の刀達の物語で

 この星について語られていた事を思い出す


 動乱の世は愚か、戦時の世ですら遠い昔の

 ように扱われる現代だが、こうして過去に

 思いを馳せようとする心があるのは

 我ながら深いものがあるのではないかと

 ついふけってしまう


 もしかしたら、も見上げていた

 のではなかろうか――

 

 頭の中にふと、浅葱の羽織に誠の一文字を

 掲げてあの時を戦い抜いた志士達がよぎる


 あるものは斬首刑

 あるものは北の大地で戦死

 またあるものは労咳で病死


 それぞれがそれぞれの場所で散っていった

 けれど、そんな儚い世でも天狼星は輝いて

 いたのだろう

 そして、彼らもまたその星を見上げて

 思い馳せていたのだろう


 そう、思っている


 そういえば、あの脇差の少年が言っていた

 事は本当なのだろうか


 「天狼星には、星が2つある」


 彼は と慕っている打刀に

 そう話していた


 嘘か真かは私には分からない


 だとしても、それがもし本当だとするなら

 1度見てみたいような気もする


 夢を追いかけて散った彼らの人生は

 きっと無駄じゃなかった

 ならば私も夢を断たずに



 自分の世界を追いかけ続けよう――

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狼の星は今も昔も... 白玉 @Siratama85

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