目から落ちた鱗の行方

 ホラー的な体験をしたので聞いてください。

 大丈夫です、幽霊とかではありません。


 まず私、高校二年か三年ぐらいからメガネっ子を卒業し、コンタクトデビューいたしました。周りにも「垢抜けた」と評判でした。(その報告どうでもいい)

 それから日常生活はほぼコンタクトと共に暮らしております。ラーメン食べる時に曇らないって、良いですね。



 前置きを話したところで。

 以前の職場では少々訳アリで、お昼を自家用車の車内で済ましていた時期がございます。ざっくり〝一人になりたかった〟とだけ言っておきましょう。


 職場は1階が屋外駐車場になっていて、2階から事務所になっている建物でした。ので1階は日中でも電気をつけても薄暗い場所になります。あと自家用車での通勤者が増えすぎて駐車場が足らず、ギチギチの縦列駐車で何とか凌いでいました。

 そうでなくとも増員すれば営業車も増えるのです。自家用車も増え、営業車も増えるが駐車場がない。ご来客も同じ場所を利用するので、なお大変でした。


 で、当然私もこの駐車場を使っているので、お昼を社内じゃなくて車内(ややこしくすな)で食べる際は薄暗~いのです。バッテリーが上がってしまうので電気は点けません。しかも運転席で食べると通行人と目が合うのが気まずいので、後部座席に座ります。


 食べるだけならば、薄暗くとも見えれば問題ありません。

 食べたら少し携帯をイジって戻りますので。



 ある日。

 食べ終わってしばらく一服し、「さて戻るか」と片付けを始めたところ、目が痒くなって軽く擦りました。(うろ覚えですが、確か擦った気がします)


 おろ、目から鱗が。(注:コンタクトです。/分かるっちゅーねん)


 ほあちゃー、と思いながら、一旦座ったまま服に付いていないか確認。

 ……ない。次、開く限り扉を全開にして車内を捜索。

 …………やっぱりない。膝掛け、ついてない。もう一回服を見る、やっぱりない。ワンチャン髪の毛! いやどう見ても、ない。


 結論、なかったです。

 扉を全開にしても薄暗いので、探しにくいと言えば探しにくかったです。


 予備も代えの眼鏡も持っていなかった私。午後から片目コンタクトかよキツー、とか思いながら、消沈の思いで2階に上がりました。

 荷物はロッカーに置き、事務所に戻る前にお手洗いに寄ります。


 やっぱりパソコンも見づらいだろうから、一旦帰らせてもらおうかなー……とか悩んでいると、靴の中に異物が入っている感触がしたのです。


 ん、石? と思い右足の靴を脱いだらば――。


 丸まった透明の物体が出てきました。

 えぇ。お察しの通り、ソフトコンタクトレンズちゃんです。


 ……………(固)

 え、え、え、え? 待って、待って。

 イリュージョンですか? 私、いつの間に引田天功氏に弟子入りしたんですか?


 いつもながらのボケはさて置き、本当にホラーでした。

 恐らく落ちた時に上手いこと靴の隙間に入り、そのまま踏み込んだのだと思いますが、とりあえず私は車でということは主張しておきます。



 で。そのコンタクト、どうしたかって?


 ――散々迷って入れましたけど、何か。(よい子は真似しないでください)

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