第29話 夏休みのこもごも
学校なので夏休みにいるのはただ働き同然の部活指導の先生と夏の大会を最後まで戦う生徒達と私だ。
三号館地下倉庫は誰も使わないし、蛍光灯の入れ替えや地下倉庫の換気。使用されたであろう用具の天日干しも出来る。直接触りたくないので、ゴム手袋は装備の元、作業にかかる。
コンドームの袋は想定内だったが、触りたくなかった。これを見逃すと次に掃除する時にまたこれを拾わないといけない。
拾って触れた後に憂鬱な気持ちになり、台車を転がして私はエレベーターを使い最上階に出た。階段を昇ると屋上だ。私が一回目に行った花火大会の会場が見える。
なんだ、指定席を取らずともここから観ることが出来たのか。あれはあれでいい物だった。一人で指定席四人分を占拠したかいがあった。
職員室のラジオは高校野球の中継をしている。この学校は地区予選二回戦負けだった。一回勝ったから夢を見れただろう。元々、部活動に力を入れていないが、高校生女子という奴らは運動部が一勝すると
負けると観客席で泣き崩れて、次の日から新作フラペチーノを投稿する。なんという回転率の良さ、女子高校生らしいと言えばらしい。
あの子達は今、二年か。そうだもんな、会った時が事件の起こった二十二歳でいまや三十歳。あの子達が小学三年生だったと考えれば高校二年生か。
姉は学校内の最大派閥の長で、妹は高校が誇る王子様。外にもファンがいるくらいだ。
携帯が震えた。あと三十分で雨だそうだ。あのマットは一回濡れてもらいたいが、乾いた時に生乾き臭がするのは嫌だな。
高校生は生乾き臭がしてもえっちしちゃうだろうし、その臭いと生乾きが混じると次の長期休みで苦労しそうだ。
一旦、引き上げて倉庫を封鎖しよう。
マットはとても嫌だが、用務員室の普段使わないスペースに置いた。保健室から貰った消臭剤を振りかけると臭くて嫌になったので、少しばかりの隙間に窓を開けて用務員室から出た。
強い雨が来た。グラウンドで部活動をしていた四人の男子生徒が陰に置いていたバッグを置いて体育館前のひさしの下にかけてきた。
「聞いてないぜ。俺達の最後の夏にこんな試練があるなんて」
夢を一つ見た野球部と違って、男子テニス部は冷遇されている。
「ちくしょう。何で俺達は野球部より人気がない」
こういうところである。
「テニスの方が野球よりルールは簡単なはず、馬鹿な女ばかりのこの学校でルールの分かりやすさは重要だろう」
こういうところだ。こういう人を軽く見ているところが透けて見えてるというのが悪い。
野球部がモテるのは期間限定だ。このテニス部は普通にやれば野球部よりモテる勝算はあるのにこの態度でモテない。
「すぐに手に入る女に価値はあるのか?」
声がやたら低い高校生に見えない男子生徒が腕を組みながら話した。
「師匠」
ほう、手に入る価値か。えらく上からだな。
「エロエロ大魔神の師匠にどんな天啓をいただけるのですか?」
ダメだな、名前がもうダメ。ザ煩悩の塊、こういうやつが男からモテるんだよな。もう女を求めないで男で仲良くしてろよ。
「体育館に行けば王子様とやらがいる。それを見物して、モテる男とはどういう者かを見に行こうぞ」
そうやって靴を脱いで体育館に入ったのが三分前。
帰ってきた彼らは「あれは無理だ!」と言って体育館を出て行った。
君達に女はいらないよ。強く生きろ。
用務員室に戻ったら隙間窓から大量に水が入っていた。あまどいが壊れていたようだ。
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