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第10話 デートと決断。
翌朝、ゆっくりと目覚める、本日は土曜日で、約束のデートの日だった。
だが真也は、目が覚めはしたが、胸元で自分の寝間着をがっちりと掴む女の子を振りほどけずにいた。
「昨日も思ったが、三条さんなんでそんなにギュって掴むかなぁ」
小声で、起こさない様に独り言をつぶやく。
まぁ呟きたくもなるだろう、何せ、昨晩互いに眠りに落ちた時とほぼ同じ体制のまま、動いた形跡が全く無いのだ。
おかげで睡眠はとれているが、妙に体が硬く感じた。
とりあえずその場で伸びをし、体をほぐす、昨日はあまり意識などしないで彼女の髪を撫でていたが、改めて真也は、目の前の友香の髪の毛を見て、とてもきめ細やかでサラサラとしているその髪に触れた。
ゆっくりと優しく包み込み、手を滑ららせると、自然と丸みをサラリと撫でる事となり、その手触りが、男としてはふれる事が滅多にない、メッシュ生地の様に滑らかで、心地よい。
ずっとさわって堪能していたくなるような、そんな感覚だ。
たまに、カップルの男が彼女の頭を撫でるなどというのを町やドラマなどでよく見るシーンであり、出来事でもあるが、それを見るたびに何が楽しいんだと、毎度リア充めぇ、と思いながら見ていたが、これは納得だった。
ついつい触りたくなってしまうのだ。
おそらく女性の中にはこの行為自体を嫌う方もいるだろうし、逆にこの行為が恥ずかしいと感じる男性もいるのだろう、だが、あまりにも真也の目の前にある友香の髪質が良いのか、ついつい止まらなくなってしまっていた。
そんな朝のひと時を堪能していると、流石に違和感に気が付いたのか、友香が身じろぎし、重たい瞼がゆっくりと開かれる。
友香は自分の頭が撫で繰り回されている事に気が付き、起き抜けだというのに、みるみる顔が赤くなっていった。
「せ、せせせ、先輩は、朝から私に何を!」
「えっと。ナデナデ?」
「む、むやみに撫でないでください!」
「それを言うなら、まずそのなんだ・・・・解放してくれその手に握ってる俺のぱじゃま」
言われてはっと気が付く、昨晩勇気を出し握りしめた胸元の服を自分が今だ後生を大事に持っているかの如く、強く固く握りしめていることに。
「ごめんなさい・・・」
ゆっくりと、握っていた力をやわらげ、解放すると、真也の引っ張られていた服の感覚と握られていた温もりが、スーと遠ざかるのを肌で感じ、真也は昨日も思った妙な寂し名を感じた。
それからは不思議なもので、昨日とは違い、今回は友香のご要望により一緒の布団で寝ていたためか、特に2人とも取り乱すことなく、起きだしたが、やはり気恥ずかしさは残っており、お互いに視線を向けられないまま、朝のっ支度を各々はじめた。
「今日って俺、実際どうすれば良いんだ?」
2人で真也自宅を出て、目指すはデートスポットではなく何故か一度友香の自宅だという。
というのも、彼女がおしゃれ着、つまりはデート用の勝負服に着替えたいからという話で、一度彼女の自宅に戻る事となったのだった。
「一様、千春さんには10時に駅前に来てもらう予定で、そこからお互いにじゃんけんで、先制か後攻を選んで、そこから前半と後半で先輩は一人ずつデートをしてもらいます。
その後、次の日お昼に、先輩のお気持ちを私と千春さんで聞くという流れにしたんですけど、大丈夫ですか?」
道すがら、段取りを確認しながら、友香は真也にこの流れで良いかを問いかける。
「分かったそれでいい」
真也としても、過去との決着と、次に進むための一歩を決める非常に重要な話であるともいえるし、純粋に、この2人とのデートを楽しみたいという気持ちもあった。
またそれとは別に、自部の気持ちが今どこを向いていて、この先どうしていきたいのかという事も確かめる必要があると、そう思っていて、情けない話、変に身構えてる部分があった、それを察してなのか。
「先輩、リラックスです」
と気を使って友香が笑顔で声をかけてくれる。
そんな彼女の気遣いがたまらなく心にしみて、真也はこんないい子の本気の気持ち、絶対に適当な返答はできないと、強く思うのであった。
そんな話をしながら、電車を乗り継ぎ、一度三条家のある2駅先の隣町へとやってきた。
駅を出て、少し進み、閑静な住宅街へと入っていく。
駅から20分ほど歩くと、三条家についた。
「先輩、少しここで待っててください、支度してくるのと、追加の荷物取ってくるので」
これからまだ6日は彼女が真也の家に泊る、というまた不思議な状況になったため、一度洗濯物などはを自宅に持ち帰り、新しいのと入れ替えるなどと言い、彼女の手には一度、真也の家に持ってきたバックが握られていたのだった。
その中には例のアレも入っているのだろうと、余計な事を真也は考えた矢先、友香に一括され、誤ったのが今朝出かける前の出来事だった。
15分ほどだろうか、そろそろ待ちくたびれてこようかという時間がたったころ、三条家の玄関が空き、大きなキャリーケースと、小さなお出かけ用なのだろうバックを肩から下げた、見覚えのない女の子がそこからあられた。
髪は、ふわふわのウェーブがかかり、耳にはノーホールドピザすというのだろうか、つけるタイプの花をあしらった白と紫色の桜をイメージしているようなピアスがきらりと光る。
さらに、服装は、英国風のお嬢様を意識するような、白のリボンのブラウスに赤のボウタイワンピースと言えばよいのだろうか、非常に目を引くデザインではあるが、そこに清楚さがあるような、そんな服装で、黒のタイツを穿き、靴は茶色の皮系パンプスと。
顔にも継承が施され、目元はうっすらとピンクの様なシャドーが入り、頬も先ほどより少し白いながらも望ましい健康的な感じで、口元も、目立たないながらもしかりとした健康的な色がある、パールピンクというのだろうか、そんな感じのメイクで、まさに彼女の清楚さを可愛いに少し押し出した感じのお出かけスタイルであった。
話には聞いていたが、化粧や、服装だけでこんなにも女性はイメージや相手に抱く印象が違うのかと、唖然とするほどに、友香はさっきまでとは別人に真也には見えていた。
「先輩、どうですか・・・か、可愛く・・・してみたつもりなのですが」
女性は本気を出すと別人になる、などと良く母親が言っていたのを真也は思い出し、なるほどこれは予想の斜め上だと、友香のあまりのかわり様に胸が高鳴る。
綺麗に着飾り、いつもとは全く雰囲気の違う友香が非常に魅力的で、あれ、俺に告白した子で会ってるんだよなぁと頭が混乱して仕方がない。
「なるほぉどぉ」
「な、ナニガでしょうか?」
真也の誤魔化すように言うが、ごまかし切れていないのがまるわかりなぐらいの動揺をしているので友香はもうそれだけで、心が躍るような気持ちで、すかさず彼の胸元まで近寄ると。
「先輩ってぇ、可愛いですよね!」
弾むような声色で、そう言うと、真也の鼻に香水の甘い香りと、化粧品特有の匂いが香り、それだけで心拍数があがったのが自分でも手によるように分かった。
「そ、それ、持つ」
話してしまえば、このままでは思わず恥ずかしい事まで行ってしまうのではないかという懸念から、短い言葉しか出てこなくなってしまう真也に、やったぁ、こんなに喜んで意識してくれているよぉ、と喜ぶ友香。
対照的な2人ではあるが、非常にバランスが良いのかもしれず、スッと差し出されたキャリーバックを真也がもつ形で、三条家を後にした。
「よっしゃナイース」
三条家2階から、自分の娘と、娘の意中の男性の、青春ラブストーリを覗き見ていた母、穂香は、大きくガッツポーズを決めていた。
何故、この人が家にいるのかという話だが、どうやらあのメールは嘘だったらしく、娘を焚きつける良い切っ掛けになる、などと思って、わざとやったのだが、まさかこんなにうまくいくとは穂香も思っていなかったらしく、先ほど帰ってきた娘が、今からデートだと言い出した時に追及もされたのだが、適当にごまかしつつ、娘が晴れ舞台に立つ時のために買っておいた服を出し、お化粧をし、ノーピアスの小物までつけ、ささっと15分で支度を済ませたのは、母のなせる業ともいえた。
「なるほどぉ。あれが噂の無鉄砲君ねぇ。良い男捕まえたなぁ」
我が娘ながら男を見る目があると、二階の小窓からそんな二人を眺めながら、甘い雰囲気に少し当てられ、頬が緩む。
「今日・・・誘ってみようかなぁ」
などと、娘の非常に嬉しそうな課を見ながら、自身の愛する夫に今夜はたっぷり可愛がってもらおうと、年甲斐もなく思いながら、彼らの後姿を見送った。
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