第15話 フロント企業にしたいランキング

「それで? まずはどうする? というかよくよく考えると業務内容もだが、また社名も考えなければならんな?」

 話を先に進めるためにまずは私が促すが、これには既に答えが決まっていたのか都がすぐに応える。

「その事だがダイコンよ。実は社名はもう考えてある……」

「ほぅ?」

 すると都は辺りを見渡し。

「みなも聴いてくれ。社名は『臭影者』にしようと思うのだがどうだ?」

 しゅ、集英社だと?

「集英社というとキャプテン翼を時代劇化したあの集英社の事かっ!?」

 これを言ったのは無論私だが。

「いや、ドラゴンボールやスラムダンクをサッカー漫画化したその集英社の事ではない。私が言っているのは臭い影の者と書いて臭影者だ」

「あぁ、たまたま発音が同じだけで字が違うのか……」

「そう。たまたまだ」

 しかしたまたまだが誰も反対する者がいなかったため、フロント企業の名前はあっさりと臭影者に決まった。


「では企業名は臭影者として業務内容はどうする? ひたすらに健全であれば内容は問わない……と都は言っているが、誰か何か意見はあるか?」

 私が全員を一望すれば、誰一人として手を上げない。なので――

「なんだ……誰も意見なしか? ならばまず私から提案するが忍転道のメインがユーチューバーならば、フロント企業である臭影者はユーチューバーの真反対に位置するものが良いと思うのだが?」

 この私の意見に逸早く反応したのが都。

「なるほど。裏の稼業と表の稼業と言ったところか。ではユーチューバーの反対は――視聴者。或いはリスナー……ではなく社畜か?」

「うむ。好きな事で生きていくのがユーチューバーならば、仕事しか許されない会社の家畜は確かに真反対だ。しかし都よ。我々は今正にその社畜が働く会社を決めようとしているのだぞ?」

 実際ウチは私も含めて社畜は盛りだくさんで困ってないからな。

「ああ、言われてみればその通りだ。となるとユーチューバーの真反対と一言で言っても少し捻りが必要か……?」

 と都が首を捻っていると横からリキ。

「あ! 捻りが必要ならこういうのはどうですか? ホラ、最近の小学生のなりたい職業でユーチューバーが1位になったりしてたじゃないですか? なら小学生がなりたくない職業の上位が反対の位置って事じゃないですか?」

 ほう? 素晴らしい発想だな。

 ……と考えた私は親指で中指を弾いてパチンッと鳴らし。

「ヨネ。能力スキル『鑑定』で小学生を鑑定して、なりたくない職業の上位を調べてくれ!」

 するとどうやって鑑定したのかまではわからないが、ヨネはすぐに電子パッドに。

『完了した』

 という文字を私に見せてきた。なので。

「良し。早速1位を教えてくれ」

『週5でジムに通うムキムキの社畜』

 いや週5でジムに通えている時点で社畜とは言わんだろう? という疑問を抱えつつ私は仕切り直しのために咳払いを一つし。

「うむ。社畜では参考にならんからな……すまないがヨネ。2位を教えてもらえるか?」

 するとヨネは素早くパッドを打ち直し。

『政治家』

 まあ……小学生にとって魅力的な職業でないのは確かか。逆に小学生の時から政治家になりたいというのは意識高いどころか意識が飛んでるな。しかしそれはそれとして……

 う〜む、フロント企業として政治が出てしまうのはなぁ……?

 と思い私は都に向かい口を開く。

「都よ。はっきり言って我々は地球を征服するのが目的。それ即ち外交、政治という事。となればフロント企業で政治はするべきではないと私は判断するが?」

 すると都は両腕を組み瞳を閉じ。

「確かにその通りだ。なので政治家は避けよう。ヨネよ、すまないが3位を教えてくれ」

 都の言葉にヨネがパッドを弄ると。

『週7でジムに通うムキムキの政治家』

 逆にそいつは仕事をしろ。政治家が週7でジムに通っていたら仕事をしているのか怪しむどころではなく税金泥棒のレッテルを貼られるぞ?

 というところで都は眉をハの字に曲げ。

「また政治家か……。困ったな? 恐らくそいつは週5でジムに通っている社畜とジム仲間だぞ?」

 別にそれ自体は困らんだろう?

「すまんなヨネ。参考にならないので次は4位を頼む」

 都の言葉にヨネは力強く頷くと。

『週7でジムに通わないボディビルダー』

 通えっ! 寧ろ社畜や政治家より貴様が1番通え!

「ほう? 恐らくそいつは週5でジムに通う社畜と週7でジムに通う政治家とジム仲間だな?」

 通っていないのにかっ! まさかジムに棲み着いているとでもいうのかっ!?


「いや、あの……それもうフロント企業スポーツジムで良くないですか?」

 リキが何か言っているが今はシカトだ。何せさっきからランキングがなんの役にも立っていないからな……っと多少の苛立ちを覚えつつ。

「もういい。次だヨネ。5位を頼む」

 そうして出てきたのが。

『週7でボディビルダーになるアイドル』

「それはもうただのボディビルダーでは?」

 とツッコミを入れているシコナだが……。


『いや、それだっ!』


 私と都の声が見事に重なった。


 フロント企業はとにかく健全さが必要。となれば芸能事務所……主にアイドルをメインとした芸能事務所なんてうってつけではないか? ……と私は考え、都も同じ考えに至ったのだろう。

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