第一章 船を導く黄金の鳥②

 皿洗いを終えたオレは、姐さんの後をついて二階に上がった。窓辺では、二羽のはとがパンくずか何かをついばんでいる。

 ろうの突き当たりにある角部屋のドアを姐さんがノックした。

「オルフェー、ちょっといい?」

「はい、なんですか」

 部屋からは、あの少しかすれた中性的な声が返ってくる。

「旅の人が、あんたの話を聞きたいんだって。星都にも何度か行ったことがある人なんだけれど──」

「! 今出ます!」

『星都に行ったことがある』と聞こえたしゆんかんい気味な返事と共にドアが開く。

 亜麻色の巻き毛を揺らしながら、んだ緑青の瞳を期待にかがやかせたぼうの詩人が、満面のみで飛び出してきた。

 ──ぐぉっまぶしい……!

 あまりの美しさに一瞬息が止まりかけたが、どうにか気合であい笑いをかべる。

「どうも初めまして、シモンだ。さっきの演奏すごかったぜ」

「ありがとう! 僕はオルフェ。よろしくね、シモン!」

「お、おう。ひとなつっこいなあ、お前」

 けいかいしんいつさいない、この世のすべての悪をじようできそうなじゆんすい過ぎる笑みにこんわくする。

「ごめんよ、れ馴れしかったかい?」

「んにゃ、全然」

「よかったあ……! あ、そうだ。旅の話をするんだよね? 僕、旅を始めたばかりだから、まだまだ知らない事いっぱいで。シモンの話がたくさん聞きたいんだ」

「おう、旅のせんぱいだ。何でも聞け」

 そんなオルフェとのやり取りを聞いていた姐さんが、後ろからオレに声を掛けた。

「じゃあ、あたしは晩の営業の仕込みしてるから。何かあったら呼んでちようだい

「あいよー。あんがとなー」

「はい、ありがとうございました! さあ、シモン。入って」

 姐さんが階段を降りて行ったのをかくにんしたオレは、オルフェが泊まっている部屋に足を踏み入れる。

「……なあオルフェ。話する前にちょっといいか?」

「どうしたんだい? シモン」

 部屋に入って早々、オレはツッコミを入れざるを得なかった。

「アレ、ってから話さねえ?」

 部屋はシンプルな一人部屋だ。ベッドと抽斗ひきだし付きの小さなサイドチェストだけ。

 そのサイドチェストの上に、昼の演奏のがたっぷりまったぼうが無造作に置かれ、抽斗からはおそらく銅貨や銀貨がパンパンに詰まっているであろう真ん丸なかわぶくろがいくつもはみ出していた。

「気になるかい?」

「不用心過ぎるだろ。オレがごうとうだったらどうするわけ?」

「え?」

「えっ、て……」

 あまりにも警戒心のない反応に、身構えてきたのが鹿みたいになる。

「いいか。旅をするなら金の管理はしっかりしろ。金がなきゃ旅のちゆうで食料なり、えなり、必要な物が用意できねえ。宿に泊まるなら宿代も必要だしな」

 ──まあオレは全部前の街に忘れてきたけど。

「それに大金を持ってるって知られたら、盗人ぬすつと連中の絶好のカモだ。街中ではスリ、宿ではコソどろ下手へたすりゃ街を出てから後をつけられて、だれもいないかいどうで身ぐるみがれて殺されちまうぞ」

 オルフェはオレの話に至ってな顔でうなずく。

「スリかあ……だから街を歩いた後、よくさいがなくなってたんだね。なにか変だなって思ってたんだ」

「もうすでにカモにされてんじゃねえか! その時点で気づけよ!? とりあえずその机の金は全部仕舞っとけ! あ、手伝わねえぞ? 荷物は基本他人にさわらせんな!」

「うん、わかったよ!」

 大変元気で真っすぐな返事をしたオルフェは、すぐに抽斗の金をまとめ始める。

 ──何つーか……調子外されるわあ……。

 この男、とにかくなおで物を知らない。あくとのかかわりをさぐるための方便が、いつの間にか本気の助言になってしまった。気を取り直し、オレは何でもない風に話を続ける。

「この街に来る前はにいたんだ?」

「あ、え、えーっと……」

 どういった経路でこの街に来たのか、と旅人としてあやしくないはんで行動を聞き出そうとしたのだが……かその質問にオルフェがとつぜん狼狽うろたえだした。

「に、西側の港がある街だよ! 朝市に行ったら貝を生でもらえてね! ぎよしようっていうソースをかけて食べたらすっごく美味おいしいんだよ!」

「お、おう」

 ──いやし方下手くそかよ。

 呆れるほどうそけないオルフェに『なんかもう無害そうだし放っといていいかな』と思いかけたが、今の話にちょっと無視できない部分があったので、オレはまたそれとなく聞いてみる。

「西側の港街って言ったら、アレだろ? 『悪魔の島デイア=ボラス』が見える街」

 一か月前に天変地異にわれた、星女神エツラに反旗をひるがえした悪魔たちが住まう島。その近くにいたのだとしたら、何かしらオレの知らないうわさを聞いているかもしれない。新しい情報があるなら祓魔師エクソシストとしてとも聞いておきたい所ではあるが……。

「……『悪魔の島デイア=ボラス』が気になるの?」

悪魔の島デイア=ボラス』の名を出したたん、オルフェの動きが止まった。

 どこまでも澄み切った緑青のひとみを、見定めるかのようにオレに向ける。

 ──さーて、どう返すか。

 ここで変にげきして追い出されるのはまだマシだが、最悪は下で晩の仕込みしてる酒場のねえさんを巻き込みかねない。

 オレは一先ひとまず無難な返しで様子を見る事にした。

「ほら、一月前に天変地異があったって聞いたからよ。何か知ってるなら聞いておきたくてな。折角そっちから来たやつと会えたんだしさ」

 そう答えると、オルフェはオレが訪ねてきた理由建前を思い出したのか、一瞬きよかれた顔になった後、力のけた笑みを見せる。

「うーん、ゴメン。僕もくわしくは知らないんだ。乗ってた船がてんぷくして、気が付いたら港に流れ着いてたから」

 ──うん、やっぱコイツなんか知ってんな。

悪魔の島デイア=ボラス』の名を出した時の態度からして、絶対に無関係ではないだろう。先だってのげんともなう演奏も、ほぼちがいなく悪魔由来の力が使われていた。

 何か知っている可能性がある以上、祓魔師エクソシストとしてのがすことは出来ない。

「そりゃあまた、大変だったなあ。船ってことは、ひょっとしてソフィア教国に来たのは初めてだったりするのか?」

 オレは同情をよそおいながらも、情報収集を続ける。

「うん、そうなんだ。だから僕、教国のこと全然知らなくって」

 そう言ってオルフェはオレの方に身体からだを向けた。

「シモンは、星都サン=エッラに行ったことがあるんだよね?」

「おう。酒場の姐さんに聞いたけど、お袋さんの故郷なんだって?」

 オルフェは頷くと、荷物の奥から赤い布で包まれた『何か』を取り出す。

 かんしようざい代わりであろう赤い布をていねいにまくった下から現れたのは、二十センチほどの真っ白な女性のせつこう像。

 ひつぞう──故人の遺骨を納めるための、生前の姿をかたどった像だった。

「母さんがくなって、もうすぐ一か月になるんだ」

 どうやら母親のものらしいひつぞうかかえたオルフェは、なつかしむような顔で目をせる。

「僕を産んでから亡くなるまで、ずっと星都に帰れなくて。いつか、いつしよに行こうねって約束してたんだ」

 それに、とオルフェは顔をくもらせる。

「色々あって住んでいた所に居られなくなって、父さんも……いなくなってしまったから。正直、ほかに行く当てもなくて。だから、お金をめて星都に行って、ひっそり暮らしていけたらなって思ったんだ……ゴメンね、暗いふんになっちゃった」

「いや、こっちこそ悪かったな……星都に行くのは、お袋さんをとむらうためか」

 赤い布でひつぞうを丁寧に包み直しながら、オルフェは目を伏せてあいまい微笑ほほえむ。

 ──これが演技だったら大したもんだが……。

 オレはオルフェについて分かった事を整理しながら、どうすべきかを考える。

 まず悪魔の力がこもった演奏から、何らかの形で悪魔とかかわりがある事は確定。さらに言えば『悪魔の島デイア=ボラス』での異変について知っている可能性が高い。

 ただ、今のじようきようでは聞き出そうにもとっかかりがないし、もしせんとうになれば下に居る姐さんや周りの住民を巻き込みかねない。

 そして星都に行く目的は母親を弔うため。これは多分……嘘を言っていない。星都に向かうだけならば、ここまでった作り話はいらないからだ。

 ただ祓魔師エクソシストとして、オルフェをここで見逃すせんたくはない。

 オレは少し考えてから、こう切り出した。

「なら、オレと一緒に星都に行かないか?」

 オレの提案に「え?」と顔を上げたオルフェに、オレは人好きのするがおで続ける。

「教国に来たのが初めてなら、星都への道も分からねえだろ? オレも丁度星都に用事があるし、ついでに道案内できるぜ」

「え、えーと……申し出は、ありがたいんだけど……」

 躊躇ためらうオルフェにオレは更にたたける。

「それに、星都には知り合いが何人かいるんだ。お前の住む場所探すくらいなら手伝ってもらえるよ」

「ん、んー……」

 さきほどよりも主張が弱くなったオルフェに、オレはもうひと押しを加えた。

「お袋さんのご家族、探したくねえか?」

 その言葉に、オルフェの緑青の瞳が大きくらぐ。

「母さんの、家族……」

「ああ。例えば、お袋さんの父親や母親──お前にとっての祖父じいさんとさんとか。お袋さんに兄弟姉妹がいたら、おじさんにおばさん、いとこだって居るかもしれない。もし居るならその人たちは、お前にとっても家族なんじゃないか?」

「僕の、家族……」

 疑いながらも、ほんのわずかに期待が籠った声でつぶやくオルフェに、オレは胸を張って笑みをかべる。

「こう見えて、オレは色んな所に顔がくんでね。住処探しのついでに人探しだってお手のモンさ。それに星都は広いからな。お前のお袋さんが何処に住んでいたとか、お袋さんの家族が今も生きているのかとか、もねえのに調べるのはちょっとばかし骨が折れるぜ? もちろん、いやならいはしねえ。決めるのはお前だ、オルフェ」

 どうする? と投げかけてみれば、オルフェはややあってこう言った。

「シモン。君の提案はとてもうれしいのだけれど……どうして、僕にそこまでしてくれるんだい?」

 鹿正直に答えるわけにもいかないので、オレはかたをすくめて返す。

「別に。しいて言うなら一人旅にきたのと、お前の歌をもっといてみたいからだな」

 想定外の返答にキョトンとした顔のオルフェをそのままに、オレは立ち上がって部屋のドアに向かった。

「なあ、夕方は何刻にくんだ?」

「え、えっと。赤馬の六刻午後六時からだよ」

「じゃあ、そん時にまた来るよ。もし断っても、星都までの道くらいは教えるさ」

 そうしてオレはヒラリと手をって、オルフェのまる部屋を後にする。

 窓辺に居たはとは、いつの間にか二羽ともいなくなっていた。


    ● ● ●


 オルフェとの話を終えた後、オレは一度教会にもどって荷物を整理し、夕食はいらないと伝えて再び酒場へと顔を出した。

 酒場はすでにかなりのにぎわいを見せていたが、それでも外まで人があふれていた昼間に比べればマシな方で、オレはまばらに空いていたカウンター席にばやこしける。

「いらっしゃい。あら、また来たのアンタ」

まかな美味うまかったから、ちゃんと金はらったものも食べたくてさ」

「ま、調子良いこと言って。どうせオルフェ目当てでしょ」

 酒場のねえさんにしようを返しつつ、オレはエールと肉料理をたのむ。さほど待たずに出されたそれらをつまみながら時間をつぶしていると、となりの席に見知った顔が現れた。

「よお。じやするぜ」

「あ、おっちゃん」

 武器店のおっちゃんは姐さんにオレと同じものを注文すると、こっそりとオレにたずねて来る。

「それで、どうだったよ。例のぎんゆう詩人」

「どうもなにも。ハチャメチャに顔が良いだけの世間知らずな兄ちゃんだよ」

 そう伝えると、おっちゃんはこつにホッとした顔になった。

「そうかそうか。本職の兄ちゃんが言うなら間違いねえな。いや何、女一人で店切り盛りしてる所に若い男が転がり込んだなんて聞いたら、心配でよお……」

 言いながら、料理をしている姐さんをチラリとぬすみ見たおっちゃんの態度で、オレはすべてを察した。

 ──そんなに心配なら、さっさと口説いちまえばいいのに。人生、好きに生きたモン勝ちだぜ?

 なんて考えていると、赤馬の六刻午後六時かねが鳴った。静まり返った酒場に、ぼうの詩人が降りてくる。

 陽光にきらめいていたいろかみは、ろうそくの下でようえんかげを落とし、秘境の湖を思わせるんだひとみは、あかりを照り返してかすかに揺れる。うすぐらい酒場の中でさえくすむことのないしんじゆはだが、ことさらこうを放っていた。

「こんばんは、みなさん。今日も一日おつかれ様です。演奏を始める前に、少しだけお話しさせて下さい」

 昼間と同様、酒場の中央で椅子いすに座ったオルフェが、客を見回しながら口上を述べる。

「実は、旅の方に星都まで案内していただけることになりまして。急な話になりますが、明日、この街をつことにしました」

 その宣言に、酒場中が大きくどよめいた。客たちが顔を見合わせながらオルフェの出立をしむ中、オルフェのまなしがオレをとらえ、はくせきの美貌にしようを浮かべる。

 ──いよっし! 口説いたった!

 オレだけに向けられた視線、オレだけに意味が分かる笑み。まどうばかりの客たちの様子に、ニヤケ笑いが止まらない。

「おい、兄ちゃん。アンタまさか……」

れたらすぐ口説くのがオレのりゆうでね。グズグズしてたら、他にさらわれるぜ?」

「お、俺は別に……」

 まごつくおっちゃんをしりに、オレはオルフェの口上の続きに耳をかたむける。

「僕もこの街に別れを告げるのはとても名残なごり惜しいです。ほんの数日でしたが、この街で過ごした時間は本当におだやかで、やさしかった。家族をくしたこの身に、有り余るほどの喜びでした。こんなにも良くして下さった皆様に、僕が返せるものは歌しかありません。それでもせめてかなでる最後の曲を、皆様への感謝を込めて歌わせていただきます。どうかごせいちよういただければ幸いです」

 口上を終えて一礼したオルフェに、オレと客たちは温かなはくしゆこたえた。オルフェはほんの少しうるんだ目で微笑ほほえむと、もう一度深く礼をして、たてごとを手に取った。

 演奏と同時にオレの首の裏に痛みが走り、酒場の景色は一転して夜のおおうなばらとなる。


「♪あらしを切りく黄金の鳥よ この船を導きたまえ! 悪魔の手を振り払い かがやく朝日の下へと!」


 高らかないのりから始まったのは、教国で知らぬ者はいない有名な聖歌、『船を導く黄金の鳥』。

 悪魔におそわれたとある国から船に乗ってげる、二人の兄妹きようだいとうこうの歌だ。

 オルフェの指がげんの上をすべり、いくにも重なる激しくも悲しげなせんりつひびく。

「♪暗くうねる海原 空には星もなく 幼き兄妹は ただふたり船の上 悪魔の影におびえ たがいに身を寄せる」

 暴風とよこなぐりの雨の中、黒い波のせんたんで大きく揺れるまつはんせんかんぱんでは一組の少年と少女が、いつてんぷくしてもおかしくないきようえながらき合っている。

「♪『兄さん だいじよう 私の手をはなさないで』『妹よ 大丈夫 二人ならまでも行けるさ』」

 ──? なんだ? この嫌な感じ……。

 澄んだ高音としんのある低音を使い分け、兄妹のけ合いを一人で表現するオルフェのこうに聴き惚れていると、不意にみようかんに襲われる。曲が進むにつれ、首の後ろのざわつきがドンドン強くなっていく。

「♪きすさぶ嵐に負けず はげまし合う二人の ささやかな願いもむなしく かみなりが空を裂いた──」

 オルフェの演奏とオレの危機感が最高潮に達したしゆんかん

 ごうおんと共に、酒場のてんじようくずれ落ちた。

 客たちが突然のことにまどう中、酒場の中央でもうもうと上がるつちけむりから、ひときわ大きな影が現れる。

 黄土色の毛皮をまとった四足のきよまえあしかぎづめ、後ろあしひづめのあるはずの場所から生える、人の二のうでよりも太い緑のへび。曲がりくねった巨大な角を持つヤギと、ほのおのように逆立つたてがみの二つの頭を持つじゆう

 聖典にいわく、『嵐を呼ぶ者』──キマイラが、二つの頭からまがまがしいほうこうを上げた。

「い、いやああああああ!!」

 店主の姐さんの声を皮切りに、客たちがさけびながらいつせいに外へ走りだす。オレはとつに隣に居た武器店のおっちゃんを呼び止めた。

「おっちゃん! 街の連中、全員教会までゆうどうしてくれ!」

「わかった、お前さんは!?」

「決まってんだろ、仕事すんだよ」

 背負っていたボウガンを構えれば、おっちゃんは何も言わずにうなずいて、姐さんの腕を引き外へと向かった。

「【星女神エツラよ。我が身と武器に退魔の加護をさずたまえ】」

 オレは逃げる客をかくしにカウンターの中に飛び込み、【身体強化】と【武器強化】のせきをまとめて唱え、ボウガンの照準をいまだ動かないキマイラに合わせる。

「……ようやく見つけたぞ、『にえ』よ」

すうこうな使命から逃げ、人間の真似まねごととはな」

 見ればライオン頭とヤギ頭が、自分の下に居る『だれか』にこうに話しかけている。

 ──あ? 誰と話して……。

 そこまで考えて、ふと気づく。

 キマイラが降って来た酒場のど真ん中に、ついさっきまで誰が居たか。

「う、るさい……僕は、島には、もどらない」

 キマイラの視線の先。するどい爪の生えた前脚に押さえつけられた一人の青年。

 こわれた竪琴のかたわらで、白晢の美貌を痛みにゆがめたオルフェが、キマイラをにらみつけている。


 ──額から、悪魔と同じむらさきいろの血を流して。


 がくぜんとするオレの前で、オルフェを上から押さえつけたキマイラがあざわらう。

「お前の意思など関係ない。そのわいしような身を、われらの悲願のかてとしてささげるがいい!」

 そう言ってキマイラが鋭い鉤爪の生えた前脚をり上げた瞬間、オレはいろんな感情を置き去りにして、カウンターしにボウガンの引き金を引いた。

「グオッ!?」

「ギャアオ!?」

 連射機能付きのボウガンからき出された矢は、キマイラの巨躯を見る間にハリネズミに変えていく。

「よお! イイ尻してんなねこちゃん! いやちゃんかあ!?」

 カウンターを乗り越え、大量の矢羽を生やすキマイラの後ろに回り込んで、マガジンに込められた矢を全て打ち込む。

「おのれ、何者──」

 二つの頭の内、振り向いたライオンの頭の鼻っ柱に星水が入ったびんを投げつけた。瓶からあふれた星水をもろに浴びたライオン頭は悲鳴を上げてもんぜつする。

 オレはボウガンを捨てて、背中の山刀マチエツトきながらそくに走ってライオン頭の側面に回り込む。そのまますれちがいざまに首をかき切ろうとしたが──。

「シャアアア!」

「うお危ねっ!」

 尾から生えた緑の蛇が、きばをむいて襲い掛かって来たのを咄嗟にんでける。そこに、悶絶するライオン頭にお構いなしのヤギ頭が、巨大な角をこちらに向けてっ込んで来た。

「ハッ、上等!」

【身体強化】で上がったきやくりよくでキマイラのそうとうを跳び越える。そして勢いそのまま空中で回転し、オレをつかまえようと身体をばしていた蛇の頭を切り飛ばした。

 キマイラは悲鳴を上げながらもとつしんの勢いを止められず、そのままかべに激突。頭をぶつけたひようさくらんしたのか、店内の椅子いすや机をその巨体ではじき飛ばしながら暴れだし、酒場全体がきしみ始める。

不っ味マツジい……オルフェ!」

 オレは即座にきびすを返し、立ち上がろうとしていたオルフェの腕をつかんで、引きずるように入り口へけだした。

「シモン、君、一体……」

「口より先に足動かせペチャンコになんぞっ、ぅ!!」

 入り口まであと半歩の所で、首の後ろにすさまじい痛み。咄嗟に山刀マチエツトを投げ捨て、オルフェをきかかえて外へ跳ぶ。

「こ、の、人間ぜいがあぁあああああ!!」

 せんこう、轟音、ばくふう。酒場のれきざんがいがすぐ横をかすめる。

 オレは両腕でオルフェをかかえ込んだまま、幾度もたたきつけられながら勢いよく地面を転がった。

「カハッ……っってえーなぁ、クソが……」

 いくら【身体強化】をしていても、限度ってもんがある。悪魔のこうげき直撃は、流石さすがに無傷という訳には行かず、吹き飛ばされた痛みとダメージで即座に動けそうもない。

 ──絶体絶命、ってやつか。

「おい、オルフェ。生きてるか?」

 あおけになったオレの胸に抱き込まれていたオルフェは、オレの声に反応してかんまんな動きで顔を上げる。

「シモ、ン……?」

 乱れてもなおつややかないろかみ。土とほこりと紫の血でドロドロになったまぶたの下からのぞうるんだ緑青のそうぼう

 くちびるから覗くれた舌。いき。かすれた声でつむがれる、オレの名前。

 服越しに伝わる体温以上に、オレの身体が内側から熱くなった。

「おう……ちょっと、動けるならきゆうてきすみやかに立ち上がってげてくれねえか?」

「……何で助けてくれたの?」

「いいから、さっさと逃げろってんだよ」

「ちょっと待って。今、

 オルフェは身を起こして、オレの頭越しに腕を伸ばす。破けた服のむなもとに目をうばわれていると、オルフェの手の中には、昼間に見た母親のひつぞうがあった。おそらく建物が壊れた拍子に飛ばされたであろうを、オルフェは両手で持って胸の前にかかげ、いのるように目を閉じる。

「母さん、お願い。力を貸して」

 オルフェがそう唱えると、ひつぞうやわらかな白い光を放ち始める。同時に、オレの身体から痛みがまたたく間に消えて行った。

うそだろ……【】の秘跡?」

 うん、と頷いたオルフェが続ける。

「母さん、星都じゃ『いやしの聖女』って呼ばれてたんだって。死んでからも、その力が遺骨に残ってるみたいでね。同じ血が流れる僕になら、その力を引き出せるんだ」

 話している間にも、オルフェの傷はオレ同様にえていき、紫の血が流れ出ていた額の傷もすっかりれいになった。

【身体強化】【武器強化】などの秘跡は、教会でしんこうちかった者に星女神エツラさずけるせきの力。中でも【治癒】の秘跡を授かるのはごく少数。

 それこそ──オレが赤んぼうころ、星都をおそったあくさらわれた聖女さま、とか。

「おのれぇ……ま忌ましい星女神エツラいぬめがぁ……」

 バキリ、と瓦礫をくだきながら、キマイラが殺気もあらわにこちらへゆっくりと向かってくる。身体中に突きさっている矢が、オレたちの見ている前でボロボロと黒くちてくずれていく。

 オレは立ち上がってオルフェの前に立ち、キマイラのきよと向き合った。

「ようチビちゃん、フラッフラだなあ。尻尾しつぽ巻いて帰るんなら今の内だぜ? あ、そう言やさっきオレがっちまったんだっけ? ごめーんねー??」

「傷が癒えた程度で調子に乗るなよぞうの力を借りるような祓魔師エクソシストに、ワシらをてるはずもなかろうが」

 オレの後ろで、ヒュ、とオルフェが息をむ。

 半魔。悪魔と人間の間に生まれた種族。七星教内では『み子』と呼ばれ、祓魔師エクソシストすいしようとうばつ対象に入っている。

 星水をかぶってただれた顔のライオンが、オルフェにいやらしいみを向ける。

「そうとも、その男は祓魔師エクソシスト。お前が半魔と知れた今、その男にお前を守る意味などないぞ?」

 土でよごれたボサボサのひげをらしながら、ヤギ頭はオレにこう言った。

「どうだ、祓魔師エクソシスト。半魔をかばうなど、お前の信仰に反するのではないか? 今其奴そいつわたせば、貴様にもこの街の人間にも手は出さぬぞ?」

 ニタニタと笑う双頭のけものに、オレはじゆんすいな疑念から問いかける。

「どうして、そこまでコイツをねらう?」

「「われらが天の国へめ上るためのにえだからよ!」」

 キマイラの双頭が、興奮をかくそうともせずこわだかに語りだした。

「我らがたくわえた人間のたましいを燃料に、『はこぶね』に乗って我らは再び天にのぼる!」

「そして星女神エツラに代わる新たな『神』をいただくのだ!」

 だまったままのオレに、ヤギとライオンがこうにまくし立てる。

「其奴は『箱舟』を動かすためのかぎふるき明星の魔王が聖女に産ませた、天地をつなきざはしぞ!」

「其奴を渡しさえすれば、我らは地上をはなれ去り、人間に危害を加える事はない!」

「人間の平和! 悪魔なき世界! 貴様ら星女神エツラの下僕にとって、それはまさしく悲願ではないか!」

「「さあ、せ! 我らの贄をこちらに寄越せ!!」」


「──うるっせえんだよバ────カ!!!!!!」


 オルフェを寄越せと絶え間なくわめき散らすキマイラに、オレはとうとうまんの限界をむかえた。

「ったく、ニャーニャーメーメーさかりやがってよぉ。星女神エツラの代わりに別の神? らねえわクソが。それでよくオレに信仰に反するだの信徒の悲願だの言えたな」

 ペッ、と地面に血混じりのつばき捨て、オレは続ける。

「いいかよく聞け。すごうで祓魔師エクソシストシモン様はな、アホ丸出し悪魔構文にひっかかるほどさびしい生き方なんざしてねえんだよ」

 右手のぶくろぎ捨てて、手のこうしちぼうせいを見せつければ、キマイラは顔を引きつらせてわずかにたじろいだ。

「聖典も読めねえチビちゃんに教えてやるよ。序文にいわく、『星女神エツラは、星と共に常に生命いのちかたわらに』だ。半魔だから? 関係ないね。オレは、オルフェを見捨てて独りになんかしねえ。オレの手が届くだれ一人として独りにしねえ。これがオレの信仰で、信徒としての在り方だ。そして、何より!」

 左手の親指で背中しにオルフェを示し、オレは言った。

「お前らのきたねえ鳴き声より、コイツの歌の続きがきてえんだよ! よくもそんな下らねえ事情で演奏のじやしてくれやがって! オルフェ! お前もなんか言ってやれ──」

 けんせいに右手の七芒星をかざしたままり返ったしゆんかん、オレは言葉を失った。

 真っ白な母親のひつぞうを片手に、埃まみれのまま座り込んだオルフェが、オレを見上げてなみだを流している。

 涙は女の武器なんて言うが、んだ緑青のひとみからあふれるしずくは、性別なんて関係なしに、今まで受けたどんな暴力よりもきようあくだった。

「……ねえ、シモン。僕ね、何にもないんだ」

 ポツリ、とオルフェが消え入りそうなか細い声でつぶやく。

「母さんも死んで、家も燃えて、父さんが戦ってるのに、僕は逃げることしか出来なくて……僕、ぼく」

 ささやきよりも小さな祈りが、確かに俺の耳に届いた。


「もう、独りはいやだよ」


 オレは跪き、オルフェの瞳を真っすぐえて、誓った。


「約束するぜ、オルフェ。オレはお前を独りにしねえ、泣かせねえ、そして──悪魔なんぞに渡しやしねえ!」


 そう宣言すると、オレの背後で二頭の獣がえる。

「下らぬ? 我らの悲願が下らぬだと!?」

「半魔の涙にまどう程度の分際で! 身のほどを思い知らせてやる!」

 いかり散らすキマイラを中心に、パリパリと火花を上げながら風が集まっていく。立ち上がったオレの首の後ろが、再び危機をうつたえて来た。

「ヤッベ、あおりすぎた。走るぞオルフェ!」

だいじようだよ、シモン」

 涙をぬぐって立ち上がったオルフェが、ひつぞうをキマイラに向けてかかげる。

「【星女神エツラの加護あつき癒しの乙女おとめ】【がみあらがいし旧き明星の魔王】【二つの血により我は命ずる】」

 古代語による魔術のえいしようと共に、ひつぞうを中心に黄金にかがやほうじんが現れる。

「【来たれ我が手に】【せいきんエウリュディケ】」

 光がひつぞうを包み込み、あるべき形へと収束していく。

 いのりをささげる乙女の像がられた美しい黄金のたてごと──聖琴エウリュディケが、せいひつな輝きを放ちながらオルフェの腕の中に収まった。

 ほうこうと共に、キマイラがかみなりまとった暴風を放つ。同時に、オルフェの指がげんの上をすべり、いくにも重なる聖琴の調べがキマイラの雷の風をすべて打ち消した。

 それだけじゃない。

「ア゛ア゛ア゛!」

「やめよ! その音をやめよお!」

 キマイラが聖琴の音色を聴いた瞬間、身をよじって苦しみ出した。よく見れば、オレが全身に付けた矢傷と、切断したの傷が、まるで星水をかけた時と同じようにけむりを上げて焼けただれている。

「えっぐ。加護のダメージぞうふくされんのかよ」

「うん。でも、とどめをしきるまではいけない。だから」

「よっしゃ任せろ。専門分野だ」

 オレはニッと笑うと、もんぜつするキマイラに向けてけだした。

「【星女神エツラよ。我が身と武器に退魔の加護をさずたまえ!】」

【身体強化】と【武器強化】をけ直せば、だん以上に力がみなぎる。どうやら、聖琴エウリュディケには星女神エツラ由来の聖なる力を増幅させる能力があるらしい。

「おのれ、おのれえええ!」

「悲願を前に、たおれる訳には行かぬ!」

 もだえ苦しみながらもキマイラは蝙蝠こうもりの羽を広げて、空へとげようとする。

「逃がすわきゃねえだろ、死にぞこないがあ!」

 オレはこしくくりつけていたかぎ付きのロープを取り出し、振り回した鉤をキマイラけて投げつけた。せきで強化された鉤がぐるりと巻きつき、キマイラのどうとらえる。

 キマイラはそれに構わずに高度を上げ、ロープをつかんでいたオレもろとも空を飛んだ。

 オレは強化したわんりよくに任せてロープをり、キマイラとのきよじよじよに縮めて行く。

「来るな、来るなあ!」

ちよ、ま忌ましい祓魔師エクソシストめ!」

 キマイラはオレを振り落とそうと、速度を上げてじゆうおうじんに飛び回る。歯を食いしばって必死にロープにしがみついていると、聴き覚えのあるせんりつが下から聞こえて来た。


「♪兄妹きようだいを追った悪魔の手が 暗雲の狭間はざまからび らいめいおどろいた妹を あらしの中へ連れ去った」


 聖歌だ。『船を導く黄金の鳥』。酒場での続きが、オルフェと聖琴によってかなでられている。

「♪兄のたんを 悪魔はわらう 『お前も来い 妹と共にもう一度 家族に会わせてやろう』」

 見上げれば、いつの間にか空が真っ黒な雷雲におおくされている。よこなぐりの雨がきつけ、地面に広がる大きく波打つ黒い海で、一せきの船が今にもてんぷくしそうになっている。

「♪しよくざいと再会を 願う心のままに 船べりに手を掛けて 兄は海に身をおどらせようと──」

 不意に、オレのすぐ横に鳥の羽がった。金色に輝く羽を散らしながら、一羽の大きな黄金の鳥が、嵐をものともせずに船のもとへと降りて行く。

「♪『いいえ 兄さん 私はそこに居ないわ その手をはなさないで 二人ならへでも行けるわ』」

 澄んだ歌声と共に黄金の鳥が海の上から舞いもどり、そのまばゆい羽でキマイラの行く手をはばんだ。キマイラの動きが止まったすきに、オレは一気にロープを手繰り、とうとうキマイラの背に辿たどり着いた。

「クソ、退け!」

「おのれ、離れよお!」

「やかましい! 二ひきいっぺんにしやべんじゃ、ねえ!」

 ロープのはしいのちづな代わりに腰に巻き、左脇のホルスターからけんなたいて、ヤギの頭にたたきつけた。けたたましい断末魔の叫びを上げて動かなくなったヤギの頭をみ台に、逆手に持った剣鉈を振り上げる。

「は、はらわれるものかぁああ!!」

 ライオンのたてがみから放たれた雷が、激しいせんこうともなってオレにちよくげきする。

「っガ、ア……っ!」

 聖琴で増幅された【身体強化】の効果でかろうじて意識は保ったものの、雷でしびれた身体は、オレの意思に反してキマイラの背から落ちる。焼けげた命綱が、身体を支えきれずブツリと切れた。

 ──くそ、もう少しで……!

「シモン!!」

 海に落ちるオレの身体をさらったのは、大きく広がる黄金のつばさと、鳥の背で輝く竪琴をたずさえたぼうの詩人。

 聖琴の調べが【】の秘跡となり、身体の痺れを取り去っていく。

「助かった。ありがとよ、オルフェ」

 オルフェは聖琴を奏でながら、やわらかく微笑ほほえむ。そして強い意志のこもった緑青のまなしをキマイラに向けて、高らかに歌い上げる。

「♪『悪魔よ 僕はもう迷わない この手が選ぶのは お前のけがれた手などではない!』」

 オルフェの歌に悲鳴を上げるキマイラの翼に向けて、腰の後ろに差していた手斧トマホークとうてき。翼を根元からち切られたキマイラは、グルグルと回りながら落下していく。

「オルフェ! 上に飛ばせ!」

 オレの指示に、オルフェが黄金の鳥をキマイラの真上に飛ばす。オレは抜き放った二本の星銀の短剣を持って、鳥の上から飛び降りた。

「【理にそむく者よ、去れ! 我が手はなんじを退けん! 汝、おのれの悪を知り、善なる者にへいふくせよ!】」

「♪嵐を切りく黄金の鳥よ この船を導きたまえ! 悪魔の手をはらい 輝く朝日の下へと!」

 白銀の短剣が、旋律と共に黄金の光をまとい、剣となる。落下の勢いそのままに振り下ろされた金銀の混じる光剣のせきが、キマイラの首元で交差した。

「ア゛──ア゛ア゛ア゛ア゛ア!!!!!!」

 胴と首が切り離されたキマイラは、むらさきの血を吹き上げながら、さいの絶叫と共にうねりを上げる黒い海の中へ墜ちて行った。


    ● ● ●


「はーあ、太っ腹なこったな。あんだけかせいだのに、ポンと寄付しちまうんだから」

「シモンだって同じことをしただろ?」

「あれは祓魔師エクソシストとしてのわたりだっつの」

 キマイラのとうばつから一夜明け、白み始めた空の下でオレはオルフェと並んでかいどうを歩いていた。

 昨夜の討伐後、教会にあくの出現を報告。その後、人のりよう費とかいされた店の修復代として、キマイラから回収した魔晶の代金の大半を寄付という形で教会へ渡したのだ。

 そして何を思ったのか、オルフェ自身も店にまった今までの稼ぎを全て教会へ寄付すると言い出した。オレも最初は反対したものの、『次の街でまた稼ぐから』という言葉に、今回はオルフェの意思を尊重することにした。

「変にケチってさわぎ立てられたら、お前のこと悪く言うやつが出るかもしれねえだろ。『よそ者が悪魔を呼んだんだ』ってな」

「うん……本当にめいわくをかけてしまったよ」

 一か月前に起きた『悪魔の島デイア=ボラス』の天変地異。あれはオルフェの父親が、オルフェを島から逃がすための戦いで起きたらしい。

 そのたんで天変地異を起こせる悪魔──ふるき明星の魔王ルキフェルと戦っていたのが、キマイラを始め悪魔連中が新たな『神』とあがめる悪魔。

 そいつこそ、『はこぶね』にオルフェをささげ、天の国へめ込む計画の主導者らしい。

「その悪魔どもが言う『神』に心当たりはあるか?」

「ううん。母さんが家に結界を張って、僕が攫われないようにしてたから」

「で、おふくろさんがくなって、結界がなくなった所をおそわれて逃げて来た、と」

 無言でうつむくオルフェの頭を、オレはわざと乱暴にでる。

「わっ、ちょっとシモン!」

「なあに安心しろ! どんな悪魔だろうが関係ねえ! すごうで祓魔師エクソシストシモン様に任せとけってんだ!」

 オレはオルフェとかたを組み、目を合わせてニッと笑う。

「独りにしねえよ、絶対に」

「……うん!」

 見上げれば、天の果てまで見通せそうなみ切った空。金色にかがやく朝日の中を、二羽の白いはとが羽ばたいていった。

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誓星のデュオ 祓魔師と半魔の詩人 鳩藍/角川ビーンズ文庫 @beans

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