第7話 ゴブリンの巣窟(中編)

《ズシュッ!》


「グァァァッ!」


 ゴブリンの気配に気づいた私は、素早く剣を抜いて飛び込んだ。


 剣先がゴブリンの喉元のどもとつらぬき、体液が辺りに飛び散った。


 村長から借り受けた鋼鉄こうてつの剣は、前回使った草刈り鎌とは比べ物にならないほど、剣術スキルとの相性が良かった。


 そのおかげで、私は圧倒的な戦闘力を手に入れたのだ。


 ゴブリンの巣穴に侵入してすぐ、待ち伏せしていたゴブリンと遭遇そうぐうしたが、一瞬で始末しまつしてしまう。


 村人たちは、所持するたいまつの明かりで周囲を照らしてくれた。


 巣穴は広く掘られており、広間からいくつもの通路が伸びている。そこにはゴブリンたちの部屋があるのだろう。


 さっきの戦闘でこちらの存在に気づかれてしまったらしく、奥から次々とゴブリンが現れた。


「ギャギャギャギャ!」「ギギギ…。」


「思ったより多いな…。私は一人で大丈夫だ。みんなは、なるべく一ヶ所に固まって協力し合って敵を倒してくれ!」

 

「わかった!頼んだぞ!」「ジンさんなら大丈夫だろう。」「たいまつは効果的だ。もう少し用意しよう!」「恐ろしいな…。」


 村人たちは、村や家族を守るために危険を承知でここまでやってきた。この巣穴を壊滅かいめつさせれば、ゴブリンの脅威きょういから解放されるはずだ。


 私も30体以上はいるだろうゴブリンに恐怖を感じたが、ジンディオールの力を信じて立ち向かった。


 剣を構えて敵との距離を測る。


「グォォォォ!」


 ゴブリンたちは、一斉いっせいに襲ってきた。


 飛び掛かってくる者。

 殴りつけてくる者。

 そして、左右から挟み込んでくる者。


 明らかに不利な状況だが、それでも私は敵にくっしなかった。


「やぁぁぁ!くらえ!そこっ!うりゃあ!」


 剣は私の意思と一体となり、敵に対して最適さいてきな斬撃を放っていく。


 敵の攻撃をったり、けたり…。


 次々とせまる敵を容赦ようしゃなく切りせていく…。


 剣術スキルの恩恵おんけいはかり知れないもので、剣の経験がないはずの私でも最高の動きができていた。


 どこをねらえば効果的なのか。

 どう動けば危険を回避できるのか。

 どの敵を優先して倒せば有利になるのか。


 ということが、まるで天才的な剣士になったかのように分かっていたのだ。


「ジンさんって本当に凄いんだな…。」「ああ、凄い。」「公都の騎士様よりも強いんじゃないの?」「間違いないぜ!」


 ほとんどのゴブリンを私一人でほふってしまった。その光景に村人たちは驚嘆きょうたんの声を上げた。


「さて、これで終わりかな…。」


 襲ってくるゴブリンは、もういないようだった。


『レベル9→14にアップしました。』

『インフォ:レベル1→2にアップしました。』『剣術:レベル5→6にアップしました。』

『剣術のレベル上昇に伴い、女神エルルの加護が作用し、派生はせいスキル『四神斬ししんざん』を獲得しました。』


(おお!また一気にレベルが上がった!これはこの世界では普通なのかな?しかも、幼女神の加護が作用したらしい。お陰で何かスキルを獲得してしまったみたいだ。ワクワクするな。)


 どういうみなのか分からないが、私はまた強くなったみたいだ。


 インフォや剣術のレベルが上がったのは初めてのことで、新たなスキル『四神斬』の効果も気になっていた。


「ヨクモヤッテクレタナ!!」


 巣穴の奥から怒号どごうが響いた。やがて、体格の大きなゴブリンが現れた。


「なんだあれは!?」「でかい…。」「しゃべったぞ!」「ええ、本当だ。人間の言葉を話すゴブリンなど聞いたことがない!」


 村人たちは口々に驚きを表した。確かに他のゴブリンとは異質いしつな存在だった。


「ゴブリンの首領しゅりょうかもしれない…。」


 私は、強敵と対峙たいじするときの緊張感に身体が震えた…。

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