第22話 反省
適当な安めの宿屋に入り、男女に別れ部屋を取る。
ジャックがイアンを肩から下ろし、ベッドに放り投げ、酒場へと向かおうとするのをアベルが止める。
「おい、ジャック。イアンはこのままでいいのか?」
「ああ、一日位は飯抜きでも死にはしない」
「いや、そうだけど流石に可哀想じゃないか?」
「罰だ。自業自得だ」
「でも……」
「やはり、ティアラが言う通りアベルは優しい」
「いやいや、そういうことじゃないだろう」
「アベルが許すなら、俺は構わない。ただし……」
「ただし?」
「起きたら俺からもしっかり注意する」
「程々にな……」
アベルが治癒魔法をイアンにかけると、直ぐに目を覚ました。そして治癒士としてわかる装備を全て脱ぎ、ラフな服装と剣だけの格好になる。
「知らない天井……」
「イアン」
「何があったんだジャック?俺はなんでここに?」
「色々と説明する。アベルは先に酒場で女性陣と始めといてくれ」
「あ、ああ、先にいってるぞ」
「おい、アベル?」
「イアン、聞け、大事な話だ」
「お、おお……」
珍しく饒舌なジャックに驚きつつも、いつもと空気が違う事を感じたイアンは素直に従った。アベルが部屋から出ていくと、ジャックから事の経緯の説明と、説教が始まったのは言うまでも無かった。
「アベル~~~こっちこっち」
「ごめん、待ったせたかな?」
「いえ、私達も今来たところです」
警戒心が薄くなっているのか、ナタリーが立ち上がりアベルを名を呼ぶ。詫びるアベルに答えるティアラ。しかし、テーブルの上には既に大皿料理の数々が並んでいた。
「キーラは既に飲んでいるみたいだけど……」
「プッファ~~~この一杯の為に生きてるわ~~~もう~~~遅いのよ~~~」
ジョッキを空にし、正直に言うキーラ。既に出来上がっているらしい。
「あれ?ジャックは?」
「イアンが目を覚ましたから話をしてからくるってさ」
名前が出ないイアン。飯抜きの刑は確定だったらしい。
「そう、あのバカ……本当にごめんね二人共」
「そんな!気にして無いですよナタリー」
「ああ、イアンだからしょうがないさ」
ナタリーが再び謝ってくる。それに慌てて答えるティアラと、諦めたように返事をするアベル。
「ジャックが先に始めといてくれってさ」
「ナタリーさん、もう気にしないでください。食べましょう」
「ごめんねティアラ。そうね、食べようか」
「はい、凄く美味しそうです」
「あっ!すいませんエール下さい」
アベルも店員に注文すると、丁度ジャックとアベルが来た。
「すまん、みんな待たせた」
「…………」
謝るジャックと口を開かないイアン。随分と反省しているようだ。
「イアン」
「はい!」
アベルが名を呼ぶと、身体をビクッとさせた後、姿勢を正すイアン。ジャックは椅子に座り飲み物をイアンの分まで注文する。
「俺はいいけど、余りティアラを困らせるなよ」
「本当にすまん……」
真面目な雰囲気で注意すると、素直に頭を下げる。
「話は終わりだ。ティアラも許してやってくれ」
「そ、そんな!私は怒ってないですよ」
「ごめんなさい……」
相当ジャックの言葉が響いたらしい。随分と素直なイアン。
「よし、この話はこれで終わり。さぁ~飲むわよ~~~」
「余り飲みすぎるなよキーラ」
「大丈夫よジャック」
「ほら、こっちに座ってイアン。食べるわよ」
「ナタリーありがとう」
見かねたナタリーが、突っ立たったままのイアンを自分の隣の席へと招く。
「おまたせしましたぁ~エール四つで~す」
タイミングよく、皆の飲み物が揃う。
「今日までお疲れ。明日からもよろしく。かんぱ~い」
「「「かんぱ~い」」」
いつもはイアンが音頭を取るが、気を利かせてナタリーが代わりに取る。楽しい夜が始まり、エールが入るといつものイアンに戻ったが、アベルとティアラへの発言に気をつけているのは皆がわかった。
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