第21話 街


 皆、軽い昼食を済ませ、街へと一緒に街へと出発する一向。すると予定通り夕方には無事に到着した。


検問も何事もなく通過する。街中を見回しても教会や薬士の関係者は見当たらず、ホッとするアベルとティアラ。


「アベル様、皆様、ありがとうございました。よろしければ夕食でもご一緒にいかがですか?」


別れ際、タベルが世話になった礼をしたいと、食事に誘うが、


「いえ、その気持ちだけで十分です。明日には街を離れますので」


まだ追手からのジカンの余裕はあるが、街で一緒にいるのを見られるとタバル達に迷惑がかかると思い、断るアベル。


「そうですか……それではこれを」

「この封筒は?」

「ドワーフ国にある商業ギルドへの紹介状です。私に出来るのはこれぐらいですし、少しでもお力になれればと書かせて頂きました」

「タベルさん……ありがとうございます」

「「…………」」


「なんか湿っぽくなってしまいましたな。ご無事を遠方より願ってます。それでは」

「タベルさんもお元気で」


商隊との別れを済ませ、アベル達一行は冒険者ギルドへと向かって歩いていた。少し寂しそうなアベルの表情を見て、自然と話しかけるティアラ。


「タベルさん良い人でしたね」

「ああ、でも、あの時助けた人との縁がこんな形で続くなんてな」 

「それはアベルが優しいからですよ」

「優しいか……どうなんだろう。俺はその時に自分の出来ることをしているだけなんだけどな。まあ、余り勝手すぎて扱い辛いらしいけどな」

「でもあの時、私の火傷を治くれて、話を聞いてくれて、連れ出してくれて一緒に旅をしているのも、アベルの優しさのおかげですよ。本当に感謝してるんです」

「ティアラ……」

「それに、治療しているアベルを見て、私も人の役に立ちたい。もっと薬学や魔法を勉強して沢山の人を助けたいなって思ったから……アベルは凄いんです」

「ありがとう」


二人の会話を黙って聞いている四人の護衛冒険者。三人は微笑ましく聞いていたのだが、また空気の読めないリーダーが爆弾発言をしてしまう。


「なんだよ?二人共良い感じな。付き合ったちゃえば?」

「はぁ~?」

「ふぇ~!」


イアンの一言で焦る二人の顔は赤みを帯びている。さっきまで普通に話していたのに、急に意識してしまい、お互いに目をそらした。そして、


――バキッ、ドカッ 

――ガクッ

「ごめんなさいね~」

「気にしないでね~」

「すまん……」


「「ははは…………」」


キーラの拳が顎先を捉え、ナタリーの蹴りが尻を捉え、イアンの身体が立ったまま逆くの字になる。そして意識を失ったイアンが倒れる前に肩へ荷物のように担ぐジャック。その一連の動作に驚き、苦笑いすることしかできないアベルとティアラだった。


「リーダーがこれじゃ冒険者ギルドは無理だな。今日はもう宿屋を探して休もうか」

「そうですね」

「「「うちのリーダーがすいません(すまない)」」」

「「ははははは」」


攻撃がもっと軽ければイアンは意識を失うこともないのだが、まあ、それは自業自得ということで……




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