第50話


中身は全く知らない茶髪で使用人服を着たの女性だった。



「ちょっと待って、なんで……全然候補にすら上がってない知らない子がリイナを狙うのよ?」



私は一人パニックになった。

しかし、私以外の人間は少し反応が違うようだ。



「彼女皇女様の侍女じゃないか?」



「え……あんな子いた?」



「でも、あの使用人服は、皇女様の使用人で間違いないでしょ?」



「紋章もあるし……」



「なんで皇女様の使用人が、聖女を狙うんだ?」



その疑惑がざわざわと広がっていった。



「……これで、黒幕は皇女様で確定か?」



「でも、様子がなんか変よ」



クロウの言葉にそう私は返したが、もう会場内がそんなことよりも皇女の侍女が聖女を襲ったという声で溢れてしまっていた。


こうなっては収まりがつかない。



「聖女を襲おうとしたなんて、皇族としてあるまじき行為ですぞ!」



「ま…まって、なんのこと?私知らないわよ!?誰が自分の誕生日パーティーでこんな問題起こすのよ!仮に聖女が気に食わないとしても、こんな方法使うわけがないじゃない!!なんなのあの子!!」



「往生際が悪いですぞ!!」



なんて皇女と臣下が言い合いをしながら、会場を後にした。

いいや、体よく連れて行かれたというのが正しいかもしれない。



でも……じゃあ……魔女はどこ?



そんな状況の時、白い鳥が飛んできた。


パニックにはパニックが重なるものだ。


鳥がやってきて、最初に行った言葉はなんだと思う?



「魔女が出ました!!ロベリアがいます!!」

「……」



その白い鳥の言ってることが理解できずに目を見開く。


だって意味がわからない、ロベリアとはちがう人間がリイナを襲ってきたかと思えば、魔女は魔女で別行動?


でも、なんのためにそんなこと?変装がバレた?


いや、そんなことを考えている場合ではない。



「どこにいるの?」



私はリオスに問うと



「リイナさんのところに……透明魔法使ってて、誰も気づいていません。急がないと!」



と言われる。


それは確かに、急がないといけない



「………だけど」



私はチラリとクロウを見る。


今彼は近くにいた騎士や使用人たちから治療を受けている。

大したことないとはいうけど、だらだらと流れてる血を見ると、助けてくれた日をを放っては置けない。


どうしたら……



「ルナ」



私が動けないでいると、クロウが私に声をかける。



「君さ目をさましてから、ずっと何かと話してない?」



「クロウ、喋らないで、まだ血が……」



「落ち着いて、別に命に別状があるような怪我じゃないよ。ほんとにただのかすり傷。薬塗っとけばすぐ治る。なんか、わかったんじゃないの?」



私はその言葉に返事を返せない。

それでクロウは察したようだ。



「心配なんでしょ?リイナのこと。プロでもない君が僕のそばにいたところで怪我治せないんだから行きなよ。」



うん……これは彼なりの優しさだ。


多分前半が本当の心配。

後半は私が行きやすいようにわざと言ってくれた言葉。


いや、行きやすい。

でも……ムカつく。



「行って来なよ、これだけ人がいれば治療してくれる人はどこかにいるさ……多分ね。」



「ちょ……そう言うこと言うならせめて自信もっていってよ……」



「僕も本当は行きたいけど、浅い傷とはいえ痛みを抱えたまま走るとどうしてもスピード落ちるし、早くいきな。」



「……ありがとう。」



私はクロウに背中を押されて、その場の騎士たちに治療を任せ、会場を後にした。


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