第44話 夜の囀り

スースーという寝息が聞こえる。


部屋はもう消灯している。


しかし、机の上は蝋燭で灯が灯されていた。


カリカリと音を立てながら、必死にメモを書いていると、スウッと白い鳥が現れた。



「ルナも早く寝た方がいいですよ」



そして私に声をかける。



「リオス……あ、そうか……リイナがそこで寝てるから……」



いつもよりにぎやかな羽ばたきの音が聞こえなかったのはそういうことか。



「夜更かしは体に触ります。」



「あら、私は元気よ?」



「お若いですね」



「私もそう思う。若いっていいわ〜」



私は本気でそう思う。

なんたって、前世ではアラサーまで行ったのだ。

やっぱりだんだんと体力が衰え元気がなくなる様というのを実感している。


だから、今転生して若い体を体験し、こんなに昔は元気だったんだなぁ…ということが実感できるのが嬉しくて仕方ない。


今のうちに若い時間というのを満喫しておこうと思う。


なんて話はずれたので話を元に戻そう。


私が必死に髪に何かを書いている私に、リオスは聞いた。



「何をしてるんですか?」



「今日のまとめ。リオスも聞いてたんじゃない?」



「黒幕は誰か……ですか。」



そう、そこには黒幕候補者と、その根拠をずらりと書き記したものが広げられていたのだ。



「ロベリアのことばかりで、黒幕のこと考えるの忘れてたわ。リイナのこと思えば一番重要なことなのにね。」



「この一週間、いいえ、今日だけでも色々ありましたから。仕方ないことだと思います。」



私はその慰めに、ハハッと笑って返した。

もう笑ってしまうほどの濃密な一週間だったからだ。



「候補は?心当たりはあるのですか?」



「さっきの話し合いで、でた人の名前だけだけど……」




「ん——……」



少し声が大きかっただろうか、ベッドで一人寝ているリイナが声を出した。

もしかして起きてしまっただろうか、と様子を見たけれど、ただの寝言のようだった。



「外で散歩しながら話しましょう、リイナが起きちゃうわ。」



メモ書きすることはもうほぼ終わったので、私はリオスと共に部屋を出ることにしたのだった。

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