第27話 大きな相違点


「どういうこと?」



「夢と現実では状況がだいぶ違う。中でも一番の違いは、成功したか失敗したかなわけだが……もし想定通り、君が黒幕だったとしたらどうする?」



「どうするって……?」



「任務を失敗した魔女…それも大勢の目の前でやらかして、姿を晒した。それは一度目じゃない。その前にも間違えてターゲットじゃない別の人を襲っている魔女だ。隠密に行動したい君ならどうする?」



クロウに聞かれて、私は考える。


執筆した時は、当然ルナの思惑が成功するのがシナリオだから、

でもIFの世界を考えないわけじゃない。


もし……ルナが失敗していたら?


物語の中でのルナは、リイナに対し嫉妬が強かった。


そのルナが、本気で殺しにかかって、それが失敗に終わったら……?

しかも、彼女は襲う人間を間違えているのだ。


当然、腹が煮え繰り返るほどに怒るだろう……でも、それだけで終わるだろうか?


絶対に終わらない。



「処理すると思う……」



物語のような、昔のような自分ではない今、こんなことをクロウに伝えるのは非常に辛い。


だから、せめてオブラートな言葉にして返事を返した。


でも、それをする意味はあった。

だって、理依奈を攻撃しようとした黒幕だ、性格は知らないけれど、嫉妬していることは違いない。


そして、殺そうと実行する人間の思考回路が、そんなに違うとは思えない。



「黒幕が変わって、依頼も失敗したから……動きが変わって逃げた……?」



「こんなところに一人で暮らしている小さな魔女だ、身の危険にはに敏感なはずだ。」



「でも、この場所は知られてないのは変わらないわ……結局ここにいるのが安全なのには違いないはずよ!」



「じゃあ、一番安全な場所から逃げなきゃいけないと判断するのは、どんな時?」



「それは……ここが安全じゃない時ってことよね……まさか……」



この家まで黒幕が来て、自分の身が危なくなる可能性がある?

でもそれじゃあ、黒幕はこの家の場所を……辿り着く方法を知っているということになるじゃない。



「まさか……無理よ!私はたまたま瑠璃蝶々の花を知ってたからここまで来れたけど、そのことを他の人が知ってるとも思えない。」



「でも、ないとも言い切れない。だって、夢の中の黒幕とは別人なんだ。何がどうなっていてもおかしくはない。」



そう言われて、私は自責をする。


しまった、作者だからなんでも知ってるつもりになってアグラかいてたわ。

これじゃあ、呪いを解くことができない……。


つまり、本当に……




「……じゃあ……何……あの子の居場所はわからないってことなの……?」



その私の問いに、クロウは返事をしなかった。

街の中にいるか外にいるか……これ以上手掛かりがないってことじゃない。


冗談じゃないわよ……私の命がかかってるのよ……?



「まだ確定じゃない、名誉挽回の機会をうかがって街の中にはいるかもしれないし、次の作戦までの間、黒幕の家に匿われてる可能性もある。一度戻ろう。」



クロウは座り込んでいる私のかたに手を置いてそう言った。


でも私はそれを振り払う。



「……ここに戻ってくるかもしれないわ。もうちょっと待ちましょう。」



「数日帰ってきた様子はないのに、急に今日帰ってくるなんてことはない。帰ってくるとしたら、リイナに危害を加えた後だ。」



「さっきからなんで数日帰ってきてないとか、そんなことわかるのよ!」



「こんなに広いのに、片付けも行き届いている。几帳面な証拠だ。なのに、儀式当日まではひめくりカレンダーが、毎日めくられてたのに、そこから一週間そのままだ。」



だとしたら……



「ルナ、これ以上はリイナが心配するし、これ以上、ここにいても手がかりは見つからない。別の方法を探しに、一度戻ろう。」



もう一度クロウにそう言われる。


私は一縷の望みにかけ、リオスの方に顔を向ける。

まだ何かあるのではないかと、希望を捨てられなかったから。


でも、彼は期待とは裏腹に、首を横に振るだけだった。



「ルナ、そうしましょう。僕もそろそろ時間で、ここに止まれません。これ以上はお手伝いできません。せめて出直しましょう。」



リオスはそれだけいうと、スウッと姿を消した。

本当に時間切れだったようだ。



「いたって、できることなかったくせに」



神様のくせに、できること少ないんだから。

自業自得だけど。


あまりにも不満が溜まったせいか、思わずぼそっと心の声の一部が声に出して呟いてしまった。



「ルナ?」



だから当然、聞き返されてしまう。



「なんでもない……。」



私は渋々そう返事をして、立ち上がった。








もし…このまま見つからなかったら……







一年以内に呪いが解けなかったら……








死ぬのかしら……?







また………?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る