第22話 神は人間を手伝えない


「ロベリアって……呪いをあなたにかけた、あの魔女のことですか?」



「もちろんよ!呪いを解くなら、呪いをかけた本人に聞くのが一番。だったらロベリアに会いにいくのが一番手っ取り早いでしょ!」



「居場所……わかるんですか?」



「えぇ、作者だもの。ざっくりとならわかるわ!」



私のその回答にリオスは一瞬驚いたけれど、一部引っかかる部分があったようで、私に尋ねる。



「ざっくり?どの程度です?」



「森の奥にある小さな小屋よ!」



「森の奥って……どこまでの範囲でどの方角のことを指してるんです?」



「さぁ……」



あまりにも把握してる内容のざっくりしていることに、ガクッと首を落とす神様……もとい鳥。



「まぁ、そうですよね。しっかりわかってるなら、もっと早い段階で夜抜け出して会いに行ってるはずですから。」



「フィ……フィリックが調べてくれるって言うから待ってただけよ!リイナも離れてくれなかったし……でも今チャンスなのよ!この際場所は作者特権でなんとかなるわ!!思い描いた場所にいると思うのよ!!」






「だから一か八か、森の中に入ってみると?令嬢一人で、整備されてない森の中を方位磁針なしに歩くのは危険ですよ?」



「だからついてきてよ。リオスも話し相手が欲しいでしょ?リイナの方と同時に監視できるなら問題ないと思うし。」



「……なんか僕に期待してます?」



「そりゃもう。結界はってあるだろうから、向こうに潜り込めるかどうかわからないのよね。魔法で目を欺かれてるかもしれないし。ここもうまく抜け出さなきゃだし」



「手伝いをしろと?」



「そう」




「ついていくのはいいですけど、別に何かお力添えできるわけじゃないですよ?」



「そんなことはないでしょ、神様なんだから。」



「でも、僕が人間に対してできることは限られてます。魂を管理すること、自然環境を整えること、国家の存続の危機の察知。この3つ。ここを抜け出す手伝い、例えばあなたを飛ばせたり、透明にしたり、すり抜けたり、変身させたりはできないです。もっというと、あなたの身に危険が晒されても、僕には何もできないです。まぁ、怪我を治す治癒魔法くらいなら魂の管理の範疇なので、できなくはないですけど……」



「えーそうなの?」



「そうです。なぜならあなたがそうしたから。忘れました?」


そうだった、神様万能にしちゃうと悲恋にならない!と思って

魂の管理と、自然環境を整えることと、


細かく話せばいろんな条件があるんだけど、


忘れてた。


前世の私のばか。



「じゃあ、ロベリアの居場所もわからない?」



「個人の行動の特定も無理ですね……今リイナにやってるみたいに個別に関しつけてれば別ですけど、今リイナ以外にそれはやってないですし……現在の国全体の様子ならこちらでも見ることができますけど、この状況で個人の居場所特定は無理ですね……本人がトラブルでも起こせばわかりますが……」



「そんなに難しいの?かくれんぼだと思えばいけるでしょう」



「いいえ、わかりやすく言うと……あなたの前世の世界に『ウーリーを探そう』という絵本があったでしょう?建物や人がみっしり書かれた絵の中にいる一人のキャラクターを探すやつ。あれの動画版です。範囲は国、人のサイズは胡麻くらい」



「あ。無理だわ。」



あんな目立つ囚人服着てても見つけらんないんんだもの。

私には探せないわ。



「なんだ……じゃあ道案内もダメなのね……。仕方ない。じゃあいいわよ。最初の予定通り自分の執筆内容を思い出して、一人で頑張って行ってみるわ。」



まぁ、元々リオスに頼ろうと思ってたわけじゃないし。

たまたま会えたから、一人よりは心強いかなと思って誘っただけだし。

この柵乗り越えるのが楽になるかなと思っただけだし。


いいのよ、誰かに頼るつもりはなかったし。


自分でそう納得して、当初の予定通り一人でなんとかする作戦を再考した。

とりあえず鮭のように滝を登ることは無理そうね。

抜け出すにはやっはり見張りの少ない柵が一番適しているかな、なんて考えていると、神妙な面持ちでリオスは私にこんな提案をしてきた。



「まぁ、本当にロベリア本人の居場所は分かりませんけど、家の具体的な場所なら調べられるかもしれません」



「本当に!?」



意外な回答に私は驚いて振り向いてしまう。

しかし、条件はあるようで……



「国に申請してれば……の話ですが。」



と言うことらしい。

そこは神様の能力を使って調べるとか、そう言うことじゃなくて、原始的かつ人間的な方法なのね。


まぁ、申請してたとして、それをリオスが把握してるのか、これから資料を皇宮の資料室まで漁りに行くのかは定かではないけれど、問題はそこではない。



「してるかな……森の奥に隠れるように住んでるのよ?子供一人で暮らしてるのよ?」



そう、ロベリアは森の奥で暮らす孤児。

母が残した小屋に住んでいるのだ。

その小屋が果たして登録されているかどか……かなり怪しい。


もし国から追いやられてそこに住んでたなら、余計に可能性は低いだろう。


ちなみに『もし』なんて曖昧な表現をしているのは、そこまで細かい設定をしていないからだ。

もちろん、なんとなくは決めたけれど、なんとなくでしかないし、少なくとも住居登録したかどうかなんてところまでは決めない。



「あなたの前世の世界の倫理観が反映されていることを願うしかないですね。森といえど土地は国のものですから。ロベリアの生みの親が住居申請していることを願うしかないですね。」



これに関してはリオスも断言できないらしく、当たって砕ける精神のようだ。

まぁ、元々明確にわからないまま一人で行く予定だったし、期待はしすぎないでいよう。



「そろそろ1分経ちますので一度消えますね。調べがつきましたら、道案内くらいはできると思うので、こっちに戻ってきますね。待っててください。」



そういうと、リオス、もとい鳥はスッと姿を消した。


さて、ロベリアの居場所問題は解決に至ったけれど、もっと重要なことは何も解決していない。



「待ってろって……その間に抜け出しとけってことかしら。」



そう、結局神様の力で抜け出すという、チートは効かないのだ。

そういう能力を持たせなかった自分の責任なので、まぁもう仕方ない、諦めよう。


結局最後は人の手でなんとかするしかない。



となると……仕方ない、神殿の庭園を囲む柵を登るか。

門番欺ける自信ないから正面突破は無理だしね。。


私は滝から離れて人気のいなさそうな、死角になりそうな柵を目指して歩いて行く。


前世も今世も木登りできなかったし、登り棒も登れなかったけど……

ジャングルジムはできたし、この柵装飾凝ってるおかげで足引っ掛けるところ結構あるし、まぁなんとかなるでしょう。


私は手始めに柵を掴み足を引っ掛ける。

なんとか行けそうかとヨジヨジ登っていると……



「ルナ、何してるんだい。」



見つかってしまった。



クロウに。

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