第03話 コードブルー

第03話 コードブルー


高校時代に果たせなかったことが

大学時代に実を結んだ。作詞作曲の体現だ。


過ぎ行く夏「=PASSING SUMMER」は

全体完成までにおよそ1年の歳月を費やしたが

周囲のウケは抜群に良かった。

大学1年は2000年と言うミレニアムイヤーだったが

今、現在の2023年に聴き直してもクオリティは高い。

僕はレゾンデートル「=存在証明」と呼ばれるような概念を

音楽の中に見出そうとしていた。

しかし、思った以上に大きな石に躓き、

膝小僧をこれでもかってくらいに派手に擦り剥く。

友人の結婚式の楽曲制作を立候補して

完膚なきまでにスランプ状態に陥ってしまった。

表題をコードブルー「=顔面蒼白」と題したが

僕は作曲の基礎であるコード進行を組み立てることすら

見失う程にパニック状態だった。

ざっくりとしたことを言ってしまえば

コード進行さえ決めておけば、一応のメロディーラインは確保出来る。

それすらも怠ってしまったので

三角定規も無く直線を書こうとしたり

コンパスも無く円形を描こうとしたことと同義の体たらくだった。

おまけに歌詞さえも全く浮かばず踏んだり蹴ったり。

作詞作曲のどちらかに取っ掛かりがあれば

誰かと共作して事なきを得ることも出来たかも知れないが

新郎新婦と自分と第三者と言うつながりが見出せず

完全に孤立してしまった。

計画では吹奏楽部のメンバーに演奏依頼をすることになっていたが

僕がいつまで経っても楽譜を仕上げないので

既存の曲でやろう……みたいな流れに。

そこで安堵すれば、躓いて膝小僧を擦り剥いた程度で終わったが

解放されたことで、逆に生きる気力を失った。

自分の中の「=存在証明」が自己の存在を抹消しようと迫り来る。

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