第02話 半端もんBLUES

第02話 半端もんBLUES


男は完璧主義だが、何もかもが中途半端だった。

4歳から18歳まで習い続けた鍵盤演奏も、

左腕を怪我したことで機能不全になってしまったし

中学校は部活動をハシゴしている。

長く続けた吹奏楽部は彼なりに練習を積んだが

自由自在に楽器を操る段迄上り詰めることは叶わなかった。


高校では勉強よりも麻雀にのめり込み、参考書よりも

麻雀を解析するテキストを学生鞄に忍ばせた。

負け組では無かったが、常勝組には入れず。

中途半端な勝負師の自己を卑下した。

麻雀没入時期に、バンドも結成した。

ドラムスを担当して、熱心に練習もしたが

シンバルの打ち方が基本的に間違っており、

ささくれだったドラムスティックを兄貴に見付かり

腹がよじれるほど嗤われてしまった。

常に勝利を収め続け、スマートに演奏出来ていれば

輝かしい高校生活だったのに

戦後の教科書みたいに後から墨を塗られたような

そんな黒歴史を振り返る。


大学時代はパチンコにのめり込んで、授業の無い日は

金策して繁盛店に乗り込んだが

麻雀同様、勝ったり負けたりでうだつが上がらない。

ゼミの生徒全員に焼き肉を奢るくらい勝った日もあったが

一駅線路伝いに歩いて帰るくらい小銭まで吸われた日もあった。

音楽とは、賭博とは概してそう言う類いのものかも知れないが

理想を追求すると、胸の奥がチリチリするような

痛みにも似た燻ぶりが、情けなく自分を責め立てる。

精神病理と言う大病に侵される話題は、

仕切り直さないと収まり切らないおおごとだが

一言で言うと突発性では無かったことは確かだ。

遊園地のローラーコースターのように急降下の手筈は整っていた。

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