第13話 女神の助言
「あ!いたいた!!ずっと探したけど中々見つからなかったわ」
戦闘から避難していたエステルたちがこちらへ寄ってくる。
ボロボロさんことアンベールという名の薔薇本作家(?)もしれっと逃げていたようだ。
「お嬢様!?その包帯は…!」
「やらかしたわ、背後を取られたの」
シルヴェスターの方を伺うと、彼は一瞬だけ爽やかなウィンクを向けてきた。
「あーらー?もしかしなくてもお兄様と何かあったのねぇ?小姑として嫁いびりの準備は万全よ?」
「違うわ、手当してもらっただけよ」
「あのお兄様が?」
エステルは心底意外そうな顔で尋ねてくる。
「別に俺は何もしてねえよ。止血を手伝ったりしたくらいだかんな」
「見直した、意外と良いとこあるじゃない」
そこにボロボロさんがやってきた。
「聖女、あの騎士に呼び出されてたよ。向こうの変な壁の裏」
何だろう。
呼び出しを喰らう、という事は即ち相手を余程怒らせた、ということだ。
不良か!!と思ったがそこには触れないでおくことにした。
私はボロボロさんにお礼を言ってそちらへ向かう。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「来たか」
「さっきはありがとう…」
彼は一瞬驚いたような表情を見せたあと、私を後ろの壁に追い詰め(?)て私の顔の横に片手をつき、実質的に私を動かないように拘束してきた。
「これからは危険を感じたらまず自分の身を案じろ」
その通りだ。
ここに関しては何も言えない。
ところでこの体勢でそのことを言ってくる意味はあるのだろうか。
またエミリアノ様の仕業かもしれない。
「この体勢で言う必要はあるのかしら…」
それを言うと、彼は急に赤面させ、俯きがちに言った。
「俺もそう思っていたのだが…」
「『エミリアノ様…兄貴が変なことを吹き込んだ』と?」
今度は私が仕返しをする番だ。
私は彼の耳元で、予想した続きを囁く。
「何故分かった!?」
ありえない程驚いた彼に私まで驚く。
その弾みに何か固いものを踏んでしまった。
数秒後、壁のあった場所に砂埃と共に現れたのは地下へと続く階段だった。
足元には何か意味ありげな石板が落ちている。
私はそれを拾い上げて読んでみた。
『愛しき私の
村に入り、村人に尋ねて塔を探し出せ。
少年とは戦うな。
力は有効に使うが良い。
by 女神リリィ』
この世界の創造主の女神であるリリィ様からの御助言を頂けるとは。
「お嬢様!!お怪我はありませんか!?」
アリシアを始めとした仲間たちが騒ぎに駆け付ける。
「私は大丈夫、なんともないわ。それよりこれを見てちょうだい」
「石板…ですわ?この石板に何か?」
そうだった。
これは聖女の力を得たもの以外には見えない文字なのだ。
私は皆んなに
「流石に今すぐ行くわけにはいきませんね…
もう遅いですし一旦休もうか」
「だな、疲れてりゃあ戦えんもんな」
確かに、村に行くにも魔物の足止めを喰らうことを考えればあと9日程はかかりそうだ。
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