第18話 初日の朝食作り

 ……


 その日の夕食は、シスターとアスが手伝った夕食で有る。

 俺とリンは今晩の食事を、ごちそうされる立場と成る。


 席の関係上から、俺とリンは上座の席に座る。

 リンの横にはシスターが立っている。アスは定位置に座っている。


 夕食のメニューは、ライ麦パン二切れと、鶏肉団子が入った野菜スープ。チーズ、オレンジジュースで有った。

 アスから貰った、手書きの直近メニューから見れば、この日の夕食は凄く豪華な食事と成る。


 野菜スープには鶏肉団子が入っているし、牛乳代わりのオレンジジュースも出ている。

 シスターは何も言わなかったが、俺とリンへの料理なんだろう。


 そして、今晩に関しては予算外だろう。

 当然、子どもたちは普段より豪華な夕食なので大はしゃぎだ!


 だが、パンやスープも僅かの人しか、お代わり出来ない量で有った。

 それに年齢に合わした、食事量の配慮もされていない。


 小学校低学年から最年長と成るアスまで、みんな均等で料理が盛られている。

 シスターの中では『みんな平等』が、平等だと思っているのだろう……


 それも悪くないが、それならせめて、お代わりだけはキチンと用意すれば良いのに……


 ……


『いただきます!』


 食事前の挨拶後。夕食が始まる。

 子どもたちは早速。思い思いで食事を摂り始める。


「やっぱり、野菜スープに肉団子が入りますと、ひと味違いますね~~♪」


 リンは笑顔でスープを飲んでいる。

 俺もパンを一口食べた後。スープをスプーンですくって飲み始める。


「うん!」

「美味しい!」


 塩味がベースのスープで有るが、鶏肉団子から出た出汁だしや、セロリなどの香味野菜の風味も感じて美味しい。

 肉団子も鶏肉100%では無く、タマネギや摺り下ろしたニンニクも入っている。


 シスターが俺の方に顔を向けて、穏やかな表情で話し掛けてくる。


「どうですか。スズヤ!」

「お味の方は?」


「はい。凄く美味しいです。シスター!」


 俺は笑顔でシスターに言う。

 本音を言えば、もう少し塩味を利かせたり、それが駄目ならコンソメなどを入れたいが、インスタント出汁なんて異世界には無いだろう///


「お母さんの作るスープも美味しいですが、シスターやアスちゃんの作るスープも中々ですね!(汗)」


リンは困った笑顔で、一人しゃべりをする。

リンの言葉の後。シスターは微笑みながらリンに向けて話し始める。


「スープは大量に作ると、勝手に美味しくなりますからね!」

「今はスープが中心ですが、以前はとした物を出していました」


(ちゃんとした物か……明日の夕食はスープで乗り切ろうと思っていたが、変更が必要かな?)


 俺は食事を摂りながら、心の中で感じる。

 俺が得意な料理は、カレーとかの煮込み料理系で有るが、カレースパイスなんてこの異世界には無いだろう?


 そうすると、肉や魚を焼くとかに成るが、肉や魚は高価な部類に入るし、おまけに焼く設備がオーブンしか無いので、比較的焼きすぎても問題ない料理しか出来ない。


(明日の朝は、この厨房に有る手持ちの物で済まして、一段落したらリンを連れて市場に行くか……)


 ……


 翌日……


『ジリリ~~♪』


『チン…!』


 俺は、朝の5時に起きる。

 異世界の癖に目覚まし時計がと有ったから、目覚まし時計で起きる。


「ふあぁぁ~~」

「……眠くは無いが、やっぱり働くと成ると抵抗感じるな!」


 俺は澄ました表情で、一人しゃべりをする。

 寝間着から着替えて、トイレに付属している洗面台に向って顔を洗ってから、俺は教会に有る厨房に向う。


 パプテトロンは近代都市らしく、上水道が完備されている。

 なので、水を汲みに行ったりの仕事は必要無い。


『ガチャ!』


『パタン!』


 シスターから貸与された鍵で、俺は鍵を開けて厨房に入り、厨房内に有る在庫を確認する。


「うーんと……チーズは大分有るな」

「だが、昨日の夕食でチーズが出ていたな……」


 俺は一人しゃべりをしながら、パンに添える物を考える。

 牛乳は断りの注文を入れない限り、朝夕に各5ℓの牛乳が勝手に厨房へ届けられる。


 この教会の厨房設備には、氷冷蔵庫が有る。

 冷蔵庫の中を期待しながら、俺は冷蔵庫の扉を開ける!


 氷は王国の工場で作られているらしく、教会が契約している業者が、冬期以外は毎日持って来るそうだ。←氷のセットするのは俺の仕事。


『パカッ!』

 

 冷蔵庫にはヨーグルト種菌が有るが、今からヨーグルトを作っても朝食には間に合わない。


「参ったな……今朝はパンと牛乳だけにするか!」

「でもな~~。正式採用されて、初日に出す食事がパンと牛乳だけでは、ブーイング確定だよ……」


 俺は困った表情で呟く。

 戸棚に卵が有るから、ライ麦パンでのフレンチトーストも考えるが、朝から約25人前を焼くのは辛い。


(……あっ、そうだ!!)

(カッテージチーズを作るか!!)


(あれは簡単にできるし、ライ麦パンに絶対合う!)


 俺は頭の中で、とあるアイディアを思い浮かべる。

 酢を使えば、簡単にカッテージチーズが作れる。


「だけど……異世界に米酢は無いよな(汗)」

「でも、酢は古来から有ると聞く……この厨房にも何かしらの酢が有るだろう」


 俺は一人しゃべりをしながら、酢を探し始めた。


 ……


「出て来た酢は酢か…。りんご酢は使った事が有るけど、これでカッテージチーズを作った事は無いな……」


「でも、やるしか無いよな!」

「この世界で有る調味料で、カッテージチーズを作るしか無い!!」


 俺は覚悟を決めた表情で、一人しゃべりをする。

 かまどの火を起こし、大鍋に牛乳を入れて、自炊で得た勘で、チーズを作る適温でりんご酢を入れて……カッテージチーズを作る。


 牛乳が温まるまでの間。ライ麦パンをカットしてトレイに乗せたりの作業も同時に進める。

 布巾をキッチンペーパー代用にする為に、布巾を煮沸消毒するのも忘れない。


 俺は子どもたちの笑顔を思って、朝食作りに励んだ!

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