第8話 城下町の状況

 ……


 俺はリンに案内されながら、メルメーサ王国の城下町である、パプテトロン内を歩いている。

 町内(?)は、町作りゲームのように区分けがとされており、住宅地域、商業地域、王国の武器や防具を作る、工業地域(?)と分けられている。


 城下町に住む住民達は、王国に仕える者が大半で有る。

 工業地域も王国の工場ばかりなので、兵士の妻とか、その子どもなど、王国に関わりが有る人しか工員には就けないらしい。


 城下町の奥にメルメーサ王国の城が有って、RPGなどで良く見掛ける定番の城で有った。

 城の呼び方はメルメーサ王国城や、王国城と呼ばれているらしい。


 これが、日本の城とかだったら面白いのに!?


『てく、てく、―――』


「はぁ……」


『とぼ、とぼ、―――』


「……(汗)」


 パプテトロンの雰囲気は活気が有ると言うより、少し疲れている顔をしている人ばかりで有った。

 魔王軍との戦いが長期化しているので、王国民達も疲れが見え始めているのだろう。


 俺とリンはそんな姿を見ながら、市場の有る商業地域に向う。


 ……


「はい。いらっしゃい、いらっしゃい!」

「当店の野菜は、みんな新鮮だよ~~♪」


「はーい。今日は、卵の特売だよ!」

「卵1個! 30キランだよ!!」←日本円で言うと30円ぐらい?


 だが、市場のある商業地域の方は活気が有って、その市場は賑わっている。

 商業地域だけ有って、人も結構いる!


 八百屋のおばさんが、笑顔で声掛けをしていたり、卵を売る店では、おじさんも和やかな表情で声掛けをしている。

 リンの言う通り。個人商店ばかりで有るが、野菜を売る店、卵を売る店、肉を売る店など、この市場で殆どの物を揃える事が出来る!


 また、屋台で有るが飲食店も有る。

 まさにパプテトロンの中心地と言えるだろう。


 この国の通貨単位は『キラン』らしい。

 だけど『キラン』はメルメーサ王国のみで通用するらしく、他国では使えない。


 でも、城内に両替所が有るらしく、其処で他国通貨と自国通貨と交換する。

 俺はリンと市場内を歩いていると……有る事に気付く。


「……」


「……///」


「ジーー」


 今までは余り気に成らなかったが、市場に来ると……子どもが居るのに、俺は気付く。

 だが、付近に親がいる感じはしなくて、一人や兄妹で纏まっている。


 そして、親の手伝いや、休憩をしている感じでも無い?

 俺は、尋ねる表情でリンに話し掛ける。


「ねぇ、リン!」

「市場には、かなりの子どもが居るね?」


「商売をしているとか、親の手伝いでは無く、ただ地面に座っている子達が非常に多いね」


 俺の言葉の後。

 リンは悲しい表情をしながら、俺に話し始める。


「スズヤ。あの子たちは片親や、身寄りが無い子たちなんです…」

「中には戦争孤児もいます……」


「此処に居れば気まぐれな人が、子どもに食べ物を与える場合が有ります」

「住宅地域や工業地域に居ても、食べ物は基本有りませんからね」


「なるほど……だから市場に来て、僅かな期待に賭けているわけか」

「でもさ……リン。両親とかが戦死したなら、王国から恩給が出るだろ?」


 俺は理解した表情でリンに言った後。眉をひそめる表情でリンに聞く。

 だが、リンは悩んだ表情で、俺からの質問の答え始める。


「恩給は確かに出ますが、階級の低い兵士には、月10万キラン程度しか支給されません。大体、正規兵隊の約3分の2程度です」

「片親と成った家は働きに出るわけですが、此処で働ける場所は工業地域の王国の工場しか有りません」


「両親が両方戦死した場合は、子どもに恩給は支給されず、その代わりに教会へ、恩給代わりの養護費が支給されます」

「戦争孤児は基本。教会が養護する決まりと成っていますから」


「……」


(RPGや前世界でも、孤児は教会が定番だが、教会がキチンと機能していれば、こんな状態には成らないだろう?)

(片親は専業主婦(?)から、王国の工場工員に成って働くか…)


(俺の前世界なら、学童保育や子ども食堂が有って……子ども達にご飯を食べさせたり、憩いの場を作っていたが……)

(あっ、でも……無ければ作れば良いか。この、俺が!!)


 俺は心の中で感じていると、とあるアイディアが閃く!

 俺は自炊が出来るから、この世界で、子ども食堂を開く事が出来る。


 良いアイディアだと感じた俺は、リンに和やかな表情で話し始める。


「ねえ、リン!」

「この町に、子ども食堂は無いよね?」


「?」

「子ども食堂……それは何ですか?」


「そんなのは、この町には無いはずです!」

「お父さんは時々、変な言葉を発しますね!!」


 前半の文章は怪訝な表情で言うリンで有るが、後半の文章は呆れた表情で言われる。

 でも、俺は和やかな表情でリンに言い始める。


「リン! 俺。このパプテトロンで起業するよ!!」

「パプテトロンの子どもたちのために、俺は子ども食堂を開く!」


「……子ども食堂??」

「何を、言っているのですか? お父さん!?」


 リンは驚いた表情と、甲高い声を上げる!

 リンの声で、周りに居た人達は一斉に、俺とリンの方に顔を向ける。


「リン。声が大きい///」

「でも、俺には……これしか道が無いと思うんだ…!」


「……」


 俺は少し困った表情でリンに話すが、リンは無言で眉をひそめている。

 リンの中では、俺の取る行動は無謀と見ているのだろう。


 だが、俺は王国の兵隊に何て成りたくないし、きこりも嫌で有る。

 だからと言う言葉も変だが、俺はこのパプテトロンに住む子どもたちの、居場所を作りたかった……

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