諦観

 検査キットで陽性。


 15分後で判定してくださいと説明書きも、検体を検査キットに垂らした瞬間にもうはっきりくっきり。二本線。


 うろたえていたのは母のほうでしたね。


 そりゃあ、自分からであるのは明白ですから。


 私がコロナ陽性なら、母はすでに「もう治った」とか言っていましたが、母もまた陽性であったのは確実ですしね。


 何を言っても、もう遅い。

 誰を責める気にもなれない。

 かかるときはかかるのがこれの厄介なところだし。

 ついに自分のところへ来たかと、それだけ。


 寝ました、もうね。


 翌朝、もう一度かかりつけ医に電話。

 5類移行したとしてもコロナなら報告すべきかと。

 対応は看護師さん。

 母はもう治ったようなので構わない(ほぼ無症状)、私のほうは発熱もありますから療養してくださいとのこと。

 今はもう、かかっていたとしてもマスクして買い物にも行っている人多いですとも。

 一番安心したのは多分、母でしょう。

 思えば、母も咳と共に腰が痛いと言っていたんです。

 旅行疲れだろうと意固地いこじでしたが、私もそれだろうと思っていました。が、それもコロナの症状だったのです。私もずっと腰が痛かった。腹痛も多分、いや絶対に、発熱よりも前に症状がそれとして出たのでしょう。


 すべて合点が行きました。

 自分でも驚くほど事態を飲み込めました。


 熱がなくともコロナの症状、こんなものもあるんだと驚きもありましたけど。


 金曜日は本当に、死ぬほどの苦しみでした。

 それはお医者さんでも膵炎すいえんを疑われるほど。

 かかりつけ医ではちらりと(電話したのは母ですが、その際に母自身の咳も伝えていたようです)、


「今は、ワクチン7回打っている人ほとんどで、(コロナにかかった人も)みんな熱はない、咳だけ」


 とも、そのとき聞いていたので。


 とはいえ、よくもまあ重症化とかしなくて済んだものです。

 金曜日ののたうち回る苦しみを思えば。

 ワクチン3回打った甲斐があったということでしょう。さらにこれで抗体が出来る? それは素人の浅はかさですか。でも、インフルエンザも型が違えばワクチン効きませんから。生きている限りはいいんです。生きていれば何とかなります。


 はっきりコロナと分かったならあとは安静にしておくだけ。

 さすがにもう、じたばたしません。出来ません。


 心配だったのはコロナの陽性判定が出て、それで何かしらの隔離や法的処理が必要になること。めんどくさい。

 それは杞憂でした。

 5類移行後は重症化していないなら騒ぐ必要もなさそう。

 出来る限りの隔離で、水分補給だけは絶やさず。


「五日間は療養してください」

「市販の解熱鎮痛剤を使ってください」

「それしかないです」

「コロナ治療薬は保険適用外となり、9千円します。今は誰も使いません」


 とのことでしたが、療養期間と数えるのは腹痛の金曜日から? それとも発熱の火曜日から? などと、のんきにもなっていました。とにかく、症状治まるまでは大人しくしているしかないのです。覚悟を決めました。

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