友達だなんて思った事ない

大嫌い

「なぁ、小林!」


「何?」


クラスでも有名なモテ男、中西が、私の名前を呼んだ。


「小林って好きな奴いんの?」


(!)


「……なんでそんな事中西に言わなきゃなんない訳?」


私は、慌てて平静を装う。でも、手の平は汗だくだ。


「2組の新見って奴知ってる?」


「新見? ……知らないけど」


「うわー! あいつ玉砕!!」


「は?」


「新見、小林の事好きなんだって!」


(!)


私は、思わず、中西の頭をひっぱたいた。


「イッテ! なにすんの!」


「うっさいな……。人の事あーだこーだ……」


「ははは」


(……やっぱり……。中西、……)


私は、中西ととても仲が良い。高校に入ってから知り合ったけど、中西は3年間で随分と大人びて、今では、学校1のモテ男だ。そんな中西は、私が、誰を好きか、気付いている。


私が好きな人――……、それは、そう。中西永介、その人。でも……、中西には、彼女がいる。2年生の時から付き合い出した、5組の原映莉子ちゃん。可愛いって、1年の時から噂だった女の子。ブスじゃないにしても、平凡な私が勝てる相手じゃない。でも、中西の事は、1年の時からずっと、ずっと、好きだった。だから、クラス替えの無いこの高校に、感謝しつつも、少し恨めしく思う所もある。


だって、離れれば、気持ちも少しは離れるかも知れないのに、いつまで経っても、中西は私を男友達と同じように扱って、でも、気持ちは知ってて、知らないふりして、意地悪ばっかしてくる。


目を……合わせてきたり、いきなり、手を重ねてきたり……、この前なんて――……。











「アレ?」


「ん?」


ふわっ。


「すんっ」


「きゃっ!」


「な! なんだよ!」


「え……いや、べ、別に……」


「なんだよ、なんか、顔赤いけど」


「赤くないよ! 馬鹿!!」





中西が、昨日勉強してそのまま寝てしまって、慌てて朝洗って来た私の髪を触って、匂いを嗅いだのだ。




「小林、女の子っぽいとこもあんだな」


「……」


(嫌い! 嫌い! 嫌い! ……大嫌い……!)






「「「「「「「さく~ら~♬」」」」」」」」








私は、卒業式まで、とうとう、気持ちを伝える事はなかった。


ひっそり、校舎の裏で泣いた。第二ボタンくらい、もらいたかった。古臭いけど……。


中西と出逢えたのが≪奇跡≫なら、この恋が終わるのは、≪運命≫だと思う。



嫌いになれたら、楽だった――……。

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