短編「最期ノ宛先」(完)

不可世

一話完結

どうしてか、この世界で上手く歩めずにいた。

誰もが慣れあう教室で、一人、

浮き彫りになり、馴染めずに、孤独だった。

まるでヒステリーを読んでるみたいに、嫌な考えが、よぎって。

不安で、怖くて、痛かった。


心が裂けそうで、壊れそうで、朝が来るたびに、あの学校へ向かうたびに、

ただ冷たい風を受けてるように、凍えて、足が滞る。

この世界で、私の居場所など、どこにも無いかのように。

息苦しさを感じていて。


本当は、あの輪に入って、青春をしたくて。

日常にある、小さなたわいないことで笑ったり走ったり、そんな

些細な事に焦がれていて。


だけど現実は、そうは行かず。

ありのままでいることが出来なかった。


どうしたって世界には、省かれる、人はいて。

私は、そうした一人だった。


泣かないように、大丈夫そうに、そう振舞って。

笑って見せてるけど、本当は痛くて、辛くて、苦しくて。

もう、癒えない傷が心に、深く、焼き付いて。


教室の戸を開けるたびに、鮮明にフラッシュバックする。

だけど、笑ってみせた。大丈夫そうに装った。


だってそうしないと、そうしないと・・・。

私は本当に負けてしまうから。

強がりだけど、そうしないと、きっともっとひどくなるから。

だから例え、嫌でも、笑って、繕って、何事も無いかのように、振舞って。

それが痛いけど、でもそうしないと・・・、


対面を保てないから、きっともっと孤独を感じるから。

嫌がらせされても、なんだよ~、って軽くはじくように、

大丈夫そうに見せたほうが、きっと酷く傷つかないのかなって、

たぶん、そうだって、自分に言い聞かせてるけど、


やっぱり、痛いよ。

本当は、正直に笑いたいよ。

素直に分かち合いたいよ。


でも私は、抜けてるから。

うまく人間関係を作れないから。

やっぱり、日陰を見る事になる。


いつだって、想ってる。

人を思ってる。


だけどその形が受け取りが

受け答えが、うまくできなくて。

媚びたように見えてしまって、いつも退けられてしまう。


私は、ただ、みんなと、仲良くしたい。

でもそんな簡単な空気はどこにもなくて。

バカにされないようにと、弱いものを退けて、

睨まれないように、強いものに媚びる


そうした空気感が世界を流れているから。

誰もが真ん中のほうで、いい顔をして生きようとしてるから。

私は、あぶれてしまった。


誰とも上手くやりたいなんて、望んでも、出来ない。

誰かが必ず、下手にでなければいけない。

そういった、定位置が、そういった、関係性が、

どうしようもなく、この世界にはある。


私はそうして、一人になって。

孤独だと言い張ることもロクにできないで。

ただその場に乗っかって、心に嘘をついてる。

弱い、私は、本当に弱い。


だからもう、これ以上、望まない。

期待などすれば、喪失を味わうだけだから。

だから旨い事嘘をついて、生きようと。

そうした、


誰からも慕われるなんて

そんなのは幻想と知ったから

だから私も、


この場にある空気を読んで

それとない、関係を掴む


それでいいさ、

もう、誰かを傷つける事になっても

私が痛い訳じゃないから

だから割り切って

自分だけ報われればいいんだ


間違えてないでしょ

だってそうしないと、

ずっと、いつまでも今までのまま

弾かれて、薄ら笑いされて、奪われ続ける


だからもう、私も

そうやって、立場を勝ち取る

強くなるんだ

強く・・・強く・・・なるんだ


でもなんでかな、

それでも痛いよ

心が痛いよ


裏切るってこんなにも痛いの

だったら私、もうどうすればいいの

分からない

分からないよ


もう・・・死にたいよ。

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