第7話ちょっとだけ色んなことに詳しい未来人

TOである未来人からDMが届いて俺はそれを確認することとなった。

「元同級生の所在を追ったけど…殆どが消息不明だったり莫大な借金を抱えて高飛びしたり…とにかく殆どの人間が道を誤ったみたいだよ。これ以上は追っても仕方がないと思ったから引き返したけど…まだ追ってほしい?こんな相手に復讐したい?」

そのDMを目にした俺は何とも言えない気持ちに陥ってしまう。

学生の頃の彼らを想像して当然な結果と言える部分も往々にしてある。

けれど全員が悪者だったとは思えない。

本当に道を誤ってしまったのだろう。

何処かで魔が差して道を踏み外したのだろう。

そんな事を感じると俺の復讐心は無意味なものだと感じる。

俺が何かをしなくても彼らは勝手に転けてしまい不幸に身を置いているのだろう。

そう感じると俺は未来人に返事をする。

「これ以上は良いよ。俺も南翠から標的を逸らすためにした発言だったから。それでも真に受けてくれてありがとう。未来人さんのおかげで今の俺の地位はあるようなものだから。本当にありがとう」

感謝の言葉を送って本日の配信準備を整えていると続けてDMが届いた。

「オフ会とかって開かないの?麒麟は皆、麒麟児と直接会いたがっているよ」

「オフ会?握手会的な?」

「それでも良いよ。とにかく麒麟はガチ恋勢だから自分の良いところを知ってもらいたいと思っているはずだよ」

「そう。考えておく。そっち方面の企画力はまだ不十分だから」

「良かったら手伝おうか?」

「え?良いの?」

「もちろん。麒麟児の役に立てるなら…何でもするよ」

「何でもって…。じゃあ一緒に企画を練ってほしいかも」

「良いよ。いつからにする?今日も配信あるんでしょ?」

「あるよ。枠をこれから作るから。今日はメン限は無いけど」

「じゃあ配信が終わった後に企画会議は?」

「良いね。ビデオ電話しながらで良いかな?それとも直接会って?」

「本音を言えば直接会いたいけど…」

「なるほど。じゃあ住所送るから。そこに来て」

「え?自宅を教えて良いの?怖くない?」

「自宅じゃないよ。配信のためだけに借りているマンションだから」

「凄いね。リッチだ」

「未来人さんの御蔭でもあるから。配信部屋だったら教えるよ」

「分かった。じゃあ配信が終わり次第向かうね。今もそこにいるの?」

「もちろん。終わったら来てね」

「了解」

そこでやり取りを終えると俺は配信の準備を終えて本日はゲーム配信を進めていくのであった。



三時間ほどのゲーム配信が終了すると未来人にDMを送った。

「来て大丈夫だよ」

それに彼女は了承の返事をすると数十分で配信部屋へとやってくる。

「お邪魔します。初めまして未来人こと神内未来じんないみらいと言います。今日はお誘いありがとうございます。つまらないものですが」

配信部屋にやってきた美しくも可愛らしい女性はお茶菓子を俺に差し出してくる。

「ご丁寧にどうも。毎回投げ銭してもらっているのに…ここでも何かを貰えるなんて思ってもいませんでした。ありがとうございます。こちらからは何を差し出せばいいか…」

「いえいえ。何もいりませんよ。麒麟児と同じ空間にいられるだけで幸せなので」

「そう言って頂き嬉しい限りです。それじゃあ早速企画会議としますか」

「はい。近所のカフェで色々と考えてみたんですが…やはり握手会かチェキ会などの直接交流を図りたいとファンは思っているはずです。麒麟児は外見も優れているので顔ファンもいると思うんです。もちろんクズっぽいところが好きな人も居ると思うんですけど…本人を前に申し訳有りません」

「いやいや。気にしてないから大丈夫だよ。実際クズっぽい発言でバズったわけだし」

「ですね。私も初めてあの動画を見たときは震えましたから。最高でした」

「ありがとうって素直に言って良いのか分からないけど…」

「こちらこそって感じです。あの動画のお陰で生き甲斐を見つけたので。それで箱の規模なんですけど…麒麟ってどれぐらい居るんですか?これって他者には話してはいけないんでしたっけ?」

「うん。公表は出来ないけど…まぁまぁ大きな会場が埋まるくらいはいると思うけど。もちろん全員が来られるわけじゃないと思うから。十分の一ぐらいの規模にしたほうが良いのかな?」

「そうですね…でも麒麟児に直接会えるってなったら…麒麟は何があっても来ると思いますよ?」

「そんなガチ恋なの?」

「もちろんですよ。だから皆、南翠が許せないわけですし」

「まだ皆、許してないの?」

「許してないと思いますよ。もちろん麒麟児に嫌われたくなくて許した体でいますけど」

「そっか。まだなにかしている人は居るの?」

「居るんじゃないですか?私はしてないですけど」

「そっか。色々と話せて良かったよ。じゃあ規模はどれぐらいにしたら良いかな?」

「千人規模の大きな会場で良いんじゃないですか?私の体感としては麒麟の総数はそれ以上だと思うので。必ず埋まりますよ。赤字になることは無いと思います」

「そんな大きな会場で…握手会だけで満足してもらえるのかな?」

「う〜ん。じゃあ麒麟児のブロマイドに直接サインを入れてサプライズプレゼントする。みたいなのはどうですか?きっと皆喜びますよ」

「本当に?帰り道や会場のゴミ箱でそれを発見したら…俺…」

「何自信ないこと言っているんですか?会場に来るのにもチケットを買うのにもお金をかけているんですよ?そんな思いをしてまで来た人が捨てるわけ無いでしょ?もっと自信満々でいてくださいよ」

「そうだね。色々とありがとう。企画は決まったけど…この後の手筈ってどうすれば良いのかな?会場に直接連絡する感じ?」

「あぁ〜。そういうのは全部私に任せてください。告知のタイミングとかも後で教えますから」

「未来人さんって何者なんですか…?」

「ん?ちょっと色んなことに詳しいだけのただの一般人ですよ」

「そんなことは…」

「では本日はこれぐらいで。また連絡しますね」

「はい。ではまた」

未来人との長くも短くもない企画会議が終了すると俺達は各々の自宅に向けて帰宅するのであった。



後日。

未来人からDMが届く。

内容は箱を抑えたこととブロマイドの撮影会の日時、本番の日程だった。

後は告知を配信やSNSでしてほしいとのことだった。

俺はそれに従って全てを恙無く進行すると後日に控えているブロマイド撮影会を少しだけ不安に思うのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る