第4話謝罪を受け入れる

TOである未来人は俺に対して投げた総額が数百万に至っていた。

初期から俺を応援してくれていて今でも追いかけ続けてくれているありがたい存在だ。

そんな未来人からDMが来たのが一旦の終末の始まりだった。



引っ越しを済ませて近所で有名な人にお祓いもしてもらった。

そんなわけで私の部屋をノックするような音はしばらく鳴りを潜めていた。

安心していた私のもとに一人の女性が姿を現すことにある。

「すみません。南翠さんですよね?」

美しい見た目をしたおしゃれな格好をしている仕事の出来そうな女性はボイスレコーダーのような物を片手に持っていた。

「はい…どちら様ですか?」

「私。こういうものでして…」

彼女は名刺を渡してくるとそれに目を向ける。

どうやら相手は週刊誌の記者を生業としているようだ。

「えっと…そんな人が私に何のようですか?」

「はい。一部ネット記事の内容を拝見させていただきました。配信者の麒麟児さんの元カノっていうのは本当ですか?」

「まぁ…五年も前の出来事ですけど…」

「何やら酷い振り方をしたとかで。謝る気はありますか?」

「何処からそれを聞きつけたんですか?」

「一部のファンの方々が噂していましたよ。事実かどうかはわかりませんが…ファンは相当怒っているみたいで。ここらで正式に謝罪をしておいたほうが良いんじゃないですか?」

「謝罪するとして…どうやってそれをファンに伝えるんでしょうか?」

「私がここで音声を録音します。そしてその音声データを麒麟児さんに渡しますよ。もしも麒麟児さんが公開すれば拡散されていって謝罪は受け入れられるでしょう」

「そうですか…それで大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫とは?」

「あの…最近身近で不可解なことが起き続けていたので…それも収まるのかなって…」

「どうでしょう。麒麟児のファンだけが全ての原因では無いかもしれないですよ。他にも心当たりがあるのでは?」

「まぁ。色んな人を好き勝手に振ってきましたので…」

「じゃあついでに過去の恋人にも謝罪をしたらどうですか?謝れば世間も許してくれますよ」

「わかりました。では…」

路上で話を続けた私達は最終的に彼女の提案に乗ることにして録音を開始した。

「南翠です。麒麟児さん。以前は酷いことを言って勝手なことをしました。あなたの元を離れて…あの時の言葉を正式に撤回します。ごめんなさい。謝罪を受け入れてくれたら嬉しいです。そして今まで傷つけてきた元カレ達にも正式に謝罪をします。自分勝手な行動をしてしまい申し訳有りませんでした」

そこでしっかりと区切ると相手は録音停止を押して頭を下げる。

「ありがとうございます。これできっとファンも許してくれますよ。では」

そうして相手は私の元を離れていく。

これで許されるとこの時の私は思っていた。

この後のことは私にもわからない。

どうなるか気が気じゃない私だったが…。



TOである未来人から音声付きのDMが届き俺はそれを確認することになる。

どうやら彼女は本当に南翠の謝罪の言葉を録音してきたようだ。

これを俺が公開すれば良いのだろうか。

その様な事を考えていると彼女は追加で文章を送ってくる。

「この謝罪の音声を公開したら。きっとファンはもっと南翠さんに石を投げつけると思いますよ。謝った相手には石を投げて良いって言うのが今の世の中なので。それなので…これをどうするかは麒麟児に任せます。私の好きな麒麟児のままで居てくれたら嬉しいです。余計な事を言いましたね。では」

未来人からの世話を焼くようなチャットを目にして俺はどうするべきか考える。

メンバー限定の枠を作ると俺は今日のことを話すのであった。



「未来人さんが元カノのもとに向かって謝罪の言葉を録音してきてくれたんだ。それを大々的に公開することはないけれど…。もう許そうと思う。皆ももう何もしないであげて。それよりもさぁ…昔のことを思い出していたんだけど。俺って昔から良い意味でも悪い意味でも目立ったんだよ。だから学校中の男子に煙たがられていて。その時の怒りのほうが今は大きいなぁ〜」

話題を変えるように話を続けるとガチ恋勢は俺の出身中学高校を知っているようで伝手を使って調べようとしていた。

「早速捜査だ!」

「麒麟児を傷つけたやつを許すな!」

「情報求む!」

「全部メン限のフリーチャットに情報を開示しておくこと!」

「了解!行動する場合は気を付けようね!」

「誰かを直接傷つけるのは禁止ね!」

彼女らはファン同士でチャットのやり取りを行うと俺は本日もメン限で歌枠を進行するのであった。

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