第28話 あいなと仲良くなろう

「うしっ! これで完成だな!」


 あれからあいなと2日に分けて編成を考えてガチャを回したりもした。

 当たった魔物はウンディーネ、サイクロプス、グール、ゴーレム、ケルベロスの5種類だ。


「ん〜! それにしてもビックリしたよ。太郎くんって意外とえげつないんだね」


 大きく伸びをしたあいなが笑いながら話しかけてきた。


「え、えげつない?」


 なんの話だ?


「うん。だってインパクトの強いサイクロプスとミノタウロスがいる部屋にゴブリンを配置して罠にかけるなんて冒険者殺しもいいところだよ。他にも……いや、言い出したらキリがないよ」


「や、ご、ごめん。ゲームみたいで楽しくなっちゃって……」


「謝らないで〜。別に責めてる訳じゃないよ。普段はおとなしいど、魔王様らしい所もあるんだなって〜」


 うっ。本人にその気があるのかは分からないけどその口撃は効果抜群だ。


「は、ははっ……はぁ………」


「ん? どうしたの〜?」


 あいなは微笑みながら話しかけてきた。


 もしかしてあいなが仲間になってから、お願いばっかりで全然構ってなかったから怒ってるのか? それとも気づいていないのか?

 いや、みんなの目を騙せるぐらい承認欲求の強いあいなのことだ。これは多分怒っているのだろう。


「ご、ごめんなさい……」


「ん? 何を謝ってるのかな〜?」


 こ、こえぇー。あいなって怒ったら謝罪も受け入れてくないタイプなのか。


「あっ、やっ……そうだ! これから10円パンでも食べに行かない?」


 本当は構成を知らないオタメガとフィオナ辺りにダンジョンを試しで攻略して欲しかったんだけど……


 よくよく考えたら俺ってあいなとあんま喋ってなくね? とも思ってしまった。天下五剣はもう少しで来るけど、それよりもあいなの事をよく知ると言う事も大切だと思う。


 だってあいなは仲間だから。


 この短い期間で色々助けてもらっているのにで、あいなに何もしていないない。これは良くないと思う。


「10円パンって少し古くない?」


「えっ!? だって半年前に流行ってたじゃん!」


「ふふ〜ん。私は流行ってすぐに食べに行ったんだよ。動画に上げるって目的もあったけどね」


 は、配信者魂すげぇ……


「じゃ、じゃあカフェとか行かない?」


 まあカフェなんか行った事ないから、どこが美味しいとか分からないんだけど……


 調べるか。あいなに気づかれないようにスマホを触ってカフェと検索すると1番上にチャーリーコーヒーと表示されていた。


「へ〜。いいね。どこに行くの?」


 よし、反応はいいぞ。


「チャーリーコーヒーとかどう? 美味しいみたいだし」


「それ有名なチェーン店じゃん。しかもスマホ見てるの分かってるよ」


 げっ、マジか。やばい怒らせてしまったか?


 恐る恐るあいなを見ると立ち上がった。


「でも、誘ってくれたのは嬉しいかな。実は前から行ってみたい場所があったんだけど行ってみない?」


 ふぅ、よかった。


「あ、あぁ! 勿論! オタメガー! フィオナー! 俺達ちょっと出てくるからー」


「はい! お任せください!」


 フィオナはドンと胸を叩くがその横でオタメガが今にも吐きそうな顔していた。

 大丈夫かな? でもすまない。俺は今、お前を助けられないんだ。南無。


「じゃあ行こっか」


 心の中でオタメガに合掌しつつ、転移魔法を使うのだった。



「……あの、ここなに?」


 それから俺達はあいなが提案してくれた店に着いて、席に着いたのだが、最初の感想はそれだった。


 周りに座っているお客さんはカップルだらけなのだが、問題はその格好だ。

 何故か勇者の様な格好にお姫様の格好をしていたり、山賊の様な衣装とボロ切れみたいな服を着た人が向かい合って話しているのだ。


 かく言う俺も何故か魔王の様な格好をしていて、あいなは悪の女幹部みたいな際どい格好をしている。


「カフェだよ?」


 周りのテーブルを見ると確かにケーキやコーヒー。パンケーキなどが並んでいるが、そうじゃない!


「そういうことを言ってるんじゃなくて、なんでみんな変な格好してんの!?」


「あ〜。ここは最近できたコンセプトカフェで、男女じゃないと入店できないんだよ〜」


 だから男女ばかりなのかって、そうじゃない!


「コンセプトカフェって普通店員さんがコンセプトに沿った格好してるもんじゃないの!? なんで俺たちがコンセプト作っちゃってんの!?」


「それがこのお店の面白い所だよ! ここの店長さんがダンジョンに挑む冒険者を見て、昔はなりたい自分があったよなぁと考えて作ったお店なんだって!」


 な、なるほど? そういうものなのか?


「そ、それであいなのなりたい姿は悪の女幹部なのか?」


「と〜ぜんだよ! 太郎くんは魔王様だからね! 前はお姫様だったんだけど、変わっちゃった」


 魔王様と普通に言ったことで慌ててしまったが、よく考えればこのカフェならそこまで気にする事もないのか。

 因みにこの服はこの店に入店した時にあいなに勝手に決められた物だ。


「魔王様、幹部様! お食事は如何いたしますか?」


 そんな事を話しているといかにも下っ端っぽい人が水を持ってきた。


「私と魔王様は大事な話をしているの! 後にしなさい!」


 えぇ、あいなさん店員さんにそんな偉そうな……


「も、申し訳ございませんでした!」


 そして下っ端の格好をした店員さんはビクビクしながら帰っていた。


「今のは……」


「ここはコンセプトカフェだからね! 行き過ぎない範囲で楽しむことができるんだよ〜。むしろそれがこの店のマナーだね!」


 あっ、そういうことね。それにしてもあいなのやつノリノリだったなぁ。


「な、なるほど。なら俺も楽しまないとな」


 郷に行っては郷に従えだ。


「うん。それでこれがメニューだよ」


「へー。意外と普通のメニューが多いんだな」


 てっきり奇想天外な名前の食べ物ばかりだと思っていたがそんなことはなかった。

 それからメニューを決めた俺たちはピンポンを押した。


「魔王様! 幹部様! お呼びでしょうか!」


「あぁ。カルボナーラといちごケーキを頼む」


 なんか魔王モードで注文するって新鮮な気持ちになれるな。


「ひっ、か、かしこまりました」


 あっ、まだドリンク頼んでないのにどこ行くのー!?


「ま、前も思ったけど魔王様を演じる時の太郎くんは迫力が違うね……」


「え!? そんな演技上手いかった?」


「うん。変なオーラが出てたよ」


 オーラ? オタメガと言ってたよな?


「……店員さんに謝ってこようかな」


「ん〜。そこまで変な事もしてないしその必要はないんじゃない? 次来た時に私がドリンクは頼むよ」


「っすー。お願いします……」


「っぷ。その格好でお願いされると面白いね〜」


 そんなこんなで俺はちょっと変わったカフェであいなとの時間を楽しむのだった。

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