第27話 混乱

「ん? そういえばオタメガのやつ学校どうするつもりなんだ?」


 翌日学校についてからふとそんな疑問が湧いてきた。

 イメチェンとかそんなレベルではないのだ、性別が変わった状態で投稿してきても大丈夫なのか?そもそも制服とかも用意してないだろうし……


「おっはよ〜! 昨日は凄かったね〜」


 そんな事を考えているとあいなから声をかけらた。みーこもいるし、あまり直接的な事は言えないな。


「あの後、大丈夫だった?」


「うん! あの後、少し話をして終わったから」


「ちょっと、なんの話してんの?」


 みーこが話に割り込んできた。


「昨日の配信の話だよ〜。配信の後太郎くんが心配して電話してくれたんだけど、その後色々面倒な事があってね〜。その話だよ」


「へー、アンタあいなの連絡先教えてもらったんだ。ってあいなの感じからして教えてるか」


「ん? あいなの連絡先ってそんなにレアなのか?」


 なんか凄い物みたいな言い方だな。


「私以外で持ってるのアンタくらいなんじゃない? どうなの?」


「そうだよ〜。連絡先を交換すると色々と面倒な事に巻き込まれたりするからね〜。仕事用とプライベート用でスマホを2台持ってるの」


 と言ってあいなは2台のスマホを出した。片方は良く見る型だったが、もう片方は全く見た事がない。


「へー。それは喜んだ方がいいのか?」


「当たり前でしょ。あいながアンタに気を許してるって事なんだから」


「わ、わーいやったー」


「なんで棒読みなのよ……」


 うん。嬉しいんだけどね……素直に喜べないんだよ。


 そんな事を話していると廊下側が騒がしい。


「なにかったのかな〜?」


「さあ?」


 あいなも気になったのか、廊下の方を見ている。


「みーこさん確認してきてよ」


 みーこにお願いする。何があったのか気になるけど、俺が行っても人だかりに弾かれてしまいそうだ。

 あいなの場合はあいなも巻き込まれて帰ってこれなくなりそうだし、適任はみーこだと思う。


「みーこ言うな! 気になるアンタが行けばいいでしょ」


「や、だって人いっぱいいるし……」


「う〜ん。でも本当に何があったんだろうね?」


 そんな話をしているとどんどんと人だかりがこちら側に来ている。


「は、離してくだされ……せ、拙者はこの教室の……」


 聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「かわいいー!」


「この子小学生くらいなのになんで制服着てんの?」


「分かんないけど可愛いよねー」


 人混みの中からぴょこっと顔が出てきた。

 オタメガだ。しかもちゃんと髪の毛を整えてきているのか、左右対称のツインテールだ。

 そして目があった。


「あらら」


「小学生?」


 あいなは知っているからこそその反応なのだろうけど、みーこは困惑していた。


「た、太郎殿〜!」


 そして器用に人混みを抜けてオタメガが飛び込んできた。

 そしてちゃんと制服を着ていた。なんでピッタリサイズの制服持ってるの?


「うお!? 急に抱きつくな!」


 俺は引き剥がそうとするが中々引き剥がさない。小さい体の癖に中々パワーがある。


「えっ、なにアンタその子と知り合いなの?」


「みーこさんも知ってると思いますけどね!」


 引き剥がそうとさらに力を入れるが、ピクリとも動かない。


「みーこ言うな! って本当に誰なのよ」


「オタメガだよ」


 その瞬間確実に時が止まった。

 喋り方の一致と今まで銀髪ロリ美少女になると言うのを聞いていたので、みんなにも心当たり当たりがあるのだろう。


「……え?」


 誰かが絞り出すような声を出した。


「だからこいつは小田若葉だよ」


「えぇぇぇぇぇ!?」


 驚愕の声が聞こえてくる。

 そしてそれからしばらく混乱と質問で全く授業が始まらないのだった。


 

「うぅ、酷い目にあったでござる」


 ダンジョンにやってきてのオタメガの第一声はそれだった。

 

「小田くん、クラスのみんなから大人気だったもんね〜」


 あいなは笑いながら言った。


「拙者は陰に潜む者でござる。人にあそこまで囲まれると喋れないでござる」


 オタメガは今日クラスの全員から囲まれて質問されまくりだった。

 どうやってそんなに可愛くなったの? だとか遊ばないとか。特に女子からの人気が凄かった。

 みーこに聞いてみたら小動物みたいで可愛いからと言う事だった。


「確かに小田くんって人と話すの苦手そうだもんね〜」


「うっ……」


 オタメガは四つん這いになって深い傷を負ってしまったようだ。

 辛辣ぅ!? どうしたんだよあいな! もしかしてクラスのみんなが自分にかまってくれなかったからか!?


「学校で何かあったのですか?」


 事情を知らないフィオナは不思議そうにしている。


「いや、オタメガが女の子になったから色々あってな」


「あー、なるほど。性別が変われば確かに混乱しますね」


 伝わらないかなと思っていたが、伝わったみたいだ。


「うん。そういえば今日は何もなかった?」


 授業中、ちょくちょくダンジョンの様子を見ている感じだと問題なさそうだったけど……


「はい、殆どの冒険者は5層目まで辿り着けずに帰っていきました」


「そっか。渋谷ダンジョンのモンスター達の配置も決めないとな……」


 昨日は時間が無かったせいでそのまま帰ってしまったが、天下五剣が来るならちゃんと配置したほうがいいだろう。

 もしもう少し魔物を配置できそうならガチャを引くのもありだな。


「ん〜? 何してるの?」


 渋谷ダンジョンの魔物達をリストアップしているとあいなが声をかけてきた。


「魔物達の情報を見ようと思って、攻略した時は殆ど瞬殺だったから特徴が分からなくてさ」


 フィオナによってだがな。


「面白そうだね! それ、私もやってみていい?」


 冒険者のあいななら魔物達の得意不得意も分かっているだろう。

 

「おっ、マジで? 助かるよ。じゃああっちでやるか」


 会議用にZPを使って作った円卓の方に俺とあいなは向かうのだった。


「若葉、私達は特訓するぞ」


「かしこまったでござる」


 2人はどうやら訓練するそうだ。まあこの部屋は広いし問題ないだろう。


「じゃあまず一階だけど……」


 そんな2人を横目で見つつあいなと話し合いを始めるのだった。

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