第5話 イフリート、出会う、ネズミ


結果的に言うと俺たちが早く来すぎたせいで先方の準備が出来ていなかったそうだ。


そこで俺は庭の片隅の噴水の縁に腰掛けてた。


キゾーク達は別室に案内だがSPの俺はとりあえず外で待っていろとの事らしい。


そのとき、声をかけられた。


「そこの人」


ん?

キョロキョロ。


周りを見たけど人なんていない。


さっきからこの辺にいるの俺だけだからな。

近付いてくる奴もいなかったし。


「気のせいか」


そう思って寝ようかと思った時だった。


「気のせいじゃないっちゅ」


タッタッタッ。


何かが俺のタキシードを登ってきた。

それで肩のところでとまる。


横を見てみるとネズミだった。


「ご、ごめんちゅ!服を汚して」

「気にすんなよ。元々俺のじゃねぇし」


笑って続きを聞いてやることにした。


「そんなに慌ててどうしたんだよ。ネズ公」


そう言うとネズミは言った。


「助けて欲しいっちゅ。この家の奴は悪いやつっちゅ」

「悪いやつ?あー、俺さヒーローになるつもりなんてないんだわ。パスパス。よそ当たってくれ」


チラッ。


俺はネズミを見た。


「お前が嘘ついてるって可能性もなくはないしな。だがまぁ。言ってやると俺は金で動く人間だぜ?」

「いくら用意すれば動きまちゅか?」

「一日あたり1万でいいよ」

「払うっちゅ」

「どうやって1万用意すんだよお前」

「そんなもん決まってるっちゅ。お給料からっちゅ」


おいおいすげぇな異世界。

ネズミでも働けるんだなぁ。


「ネズミってなんの仕事してんの?」

「地下でランニングマシーンに乗って24時間休まずに発電してまちゅ〜死にまちゅ〜」

「おぉ、そいつぁブラックだな。同情するよ?」

「ネズミは働けないっちゅ。マウスジョークっちゅ」


ナイスジョークじゃねぇかよ。一瞬信じかけたわ。

イフリートジョークよりいい感じだったよ今のは。


そのとき、


「ちゅっ!」


俺のタキシードの襟からシャツの中に入ってったネズミ。


それと同時にカチャンカチャンって巨乳のアーマー女がこっちに近づいて来てた。


ブルン!

ブルン!


揺れてる。


おっぱいが。


巨乳アーマーは俺の前で止まって口を開いた。


「客室の準備が整いました。イフリート殿ご同行願えますか?」


ガリガリガリガリ。

背中にネズミが文字を書いてる。


(行くな、誤魔化せ……?入ったら出られない?)


「どうしました?イフリート殿」


俺を見てくる巨乳女。


「あ、いや」


やばい。

巨乳が目の前で揺れてて俺のあそこが反応してしまった。


このままではっ!


テントが張る!


「あ〜お〜……いえぇぇぇぇぇす……」

「?」


首を傾げる巨乳の前で俺は前屈みになっていった。


そういえば、近くにトイレあったよな。

駆け込むか?


「すいません。そこのトイレ行っていいですか?」

「家の中にあります。そちらの方が清潔です」


ネズミが衣服の中を駆け回る。


俺のシャツの内側からズボンの方へ移動してやがて股間まで移動したようだった。


(なにしてんだ?こいつ?)


俺の太ももに後ろ足を置いて前足は上へと突き上げるっ!


そして、ビン!



ネズミがテントを貼りやがった。



(なにしてんだぁぁぁぁあぁあぁぁあぁあ!!!!こいつ!!!!!)


同時にしゃがみこんで来た巨乳。


「どうしましたか?お調子が優れな……」


俺の顔から股間へ視線が動く。


「なっ……なんていう巨根」


見る見る顔が赤くなっていく。


俺の目からも悔しいような嬉しいような複雑な涙がポロポロ零れてくる。


「すいません。色んな意味で限界なんです。そっちのトイレ行っていいですか?」

「は、はい」


巨乳に言われるままゆっくり立ち上がって外にあるトイレへ向かっていった。


「はー、はー」


トイレの個室に入ってドアを閉めた。


「立派でしたっちゅイフリート殿」


チャックを開ける。

俺の股間にしがみついてたネズミが出てきた。


「お前俺にここまでの恥かかせたんだ。それに見合った事はするんだろうな?」

「あの出来事は決して無駄にはしないっちゅ!」


ガッツポーズ。


それから俺はネズミに聞いた。


「んでこっからどうするんだよ。外はあの巨乳の淫乱お姉ちゃんが見張ってるぞ。もうごまかせない。次家に入らなかった怪しまれるだろう」

「ちゅっちゅっちゅ」


ポーン。


ネズミから煙が出て次の瞬間その場には素っ裸の女がいた。


「お前もネズミになるっちゅ」

「どうやって」

「私に身を委ねるっちゅ♡」



気付けば俺はタキシード姿にサングラスのネズミになっていた!


「こっちっちゅ」


ネズミがトイレの扉の下の隙間から出ていった。


それについてく。

道無き道を隠れながら走っていく。


巨乳の女に見つからないようにネズミの姿で逃げ回るなんてゲームでもやったことがないシチュエーションだ。


だが、あっさりと家のそばにたどり着いた。


あの巨乳のお姉ちゃんの警備はガバガバだった。


「あの雨樋が見えまちゅか?あそこから家の中に侵入できまちゅ」

「へー。じゃあ行こうぜ」


ガッ。

俺の手を取ってきた。


「獣がいまちゅ。猛獣っちゅー」


前方を指さした。


指さした方向にはネコがいた。


日向で日向ぼっこしてた。


俺たちの進行方向に猛獣がいる!

まるで雨樋への侵入を守る番犬のよう!


「にゃ〜お」


プー!

プー!

プー!


俺の頭ん中で強敵が現れた時のあの警報音が鳴った。


【天】

【敵】

【出】

【現】


ダン!ダン!ダン!ダダーン!


俺の視界に【天敵出現】と文字が現れちまった。


Ohhh!!!!

Shittttttttttt!!!!!


「別の道探すか?」


俺がそう聞いた時だった。

巨乳のお姉ちゃんが動き出した。


「イフリート殿?大丈夫ですか?」


俺の入ってると思い込んでる個室に向かっていき話しかけ始めた。


「イフリート殿がいないことには直ぐに気づかれまちゅ。そうなればあの巨乳は通報を行うように教育されています。時間がないのでちゅ。正面突破しまちゅ」


「しかしあの猫が嫌らしいな」


俺は思い出した。


メイドのパンツを。


もちろん洗っていないようだったので少し臭う。


そして、猫は嗅覚が鋭いはずだ。


「くっくっく。やはりこれはキーアイテムだったようだな」


「そうなんっちゅか?」

「見ていろ」


胸ポケットからパンツを取りだして


「ちゅーーーー!!!!」


猫の視界の先へと投げつけた。


「んにゃーーーー!!!」


真っ先に飛びつく猫。


「猛獣がどいたっちゅ!これで進めるっちゅ!」


タッタッタッ!


俺たちは走り出した。


さらば、我がパンティ。

俺は敬礼をした後涙を流した。


だが、これは勝利の涙であるっ!


パンツ一等兵に敬礼っ!

殉職ごくろうっ!


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