ミクロに巡るマクロ

梅里遊櫃

ミクロに巡るマクロ

 陽の落ちた時間、私は夜を見つめていた。星は太陽と同じもので出来ているのから、私は上を向く。


 星々は夕暮れから夜にかけて薄ぼんやりとした空から、紫とも黒とも言えないその様子で輝きを取り戻している。夜にしか存在出来ない星々を私は可愛いと思った。



 星を見るようになる前の私。人には言えない昔の話、私は可哀想な女であった。フロイラインとして扱われ、正しさの果てを追求していたつもりが踏み外してしまった時間を思うとどうにも自分は悲しい存在であったとかんがえてしまう。


 知らない場所。私はそこに正しさを感じ、間違いがない場所と思っていた。きっと私は生まれた場所が道端でもコンクリートの隙間でも気づいていないのだろう。


 春の麗かなある日に私は地面を這い始めた。

 緩やかな時間を感じている人生のスタートは、とても明るいものだ。自分を発達させることは周りが笑顔になることであると思っていたし、それが違う現実もどこか見えているようで見えていなかった。

 幼い私は、ある日鋭く人に言ってしまったし、ある日あどけなさから人を和ませた。



 本来ならば、人から愛を感じるような時間に愛を感じられないようにも感じた。けれどそれは私のせいではないと思っていた。


 心を救えるのは自分でしかなかった。自分がどこにでもいてどこにもいなくて、実はみんなの中では死んでいるんじゃないかっていつもいつも不安だった。


 そんな不安に苛まれたある日だった。雷雨は私を打ち付けていた。でも少しでも私はしなやかに伸びようとしていた。


 それは生物の本能のようにも感じた。不満と不安ばかり募るこの場所で、何一つ変わらない外はまるで嵐と嵐が来なかった場所の隙間のような埋まらないもので出来ている。私はいつの間にかこれが終わらないようにも感じた。



 そんな最中に私は一つの誘惑に駆られる。誘惑はとりすぎると自分を枯らしてしまうような照らしつける太陽で、太陽の方ばかりを見ているとどこからか目が摩耗していくように私は私の視界を閉ざしていた。

 引き裂かれたその運命は、ようやっと見つけた私を現実へ引き戻す。



 現実は私を守ってくれはしない、そう思っていた。自分の憐憫をぶつけ続け、未来への希望を失っていた。


 空を見上げれば朝には太陽が上り、夜には星が上る。キラキラしたその世界は、新しい私の証だった。


 星と太陽は同じもので出来ている。夜になれば月が顔を出し、私を不安にさせるが、星々は煌めいて私を慰めてくれる。



 今日も私は太陽の方を向く、太陽は私を照らしていて、夜は星の方を向く。星も私を照らしている。新しい私のスタートにも思えた。



 陽の落ちた時間、私は夜を見つめていた。星は太陽と同じもので出来ているのから、私は上を向く。


 星々は夕暮れから夜にかけて薄ぼんやりとした空から、紫とも黒とも言えないその様子で輝きを取り戻している。夜にしか存在出来ない星々を私は可愛いと思った。



 私は可哀想な女ではない。私は私の人生を歩んでいて、その過程で落ち込んでいただけなのだ。どんなことも正しくなくて、全ての人が人であることを認めることは私の人生の糧となるだろう。

 私は今日も空を見る。巡る空は私の人生だ。

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