第20話 花は白く密は黒く二つは混ざる

外は雨。

天気予報は晴れだと言ってきたが外れた。

まぁそういう日もあるだろう。未来を予測するのだ。不確定要素もある。

自分用の傘ともう一本別に傘を用意しようとしたところで玄関のドアが開く。

「おっと…た、ただいま。」

「お、お帰り。」

「どしたの百合。玄関で出迎えなんて…あ」

「う、うん。駅まで迎えに行こうと思って…あー遅かったみたいだね。」

「うん。びしょびしょww 先に風呂入るわ。百合も入る?」

「ううん、私ご飯の準備しておくよ。はっちゃん先に入っていいよ。」


私、白花百合は黒蜜はちこと同棲を始めた。

それももう一年経つ。


×××


「着替えここに置いとくね。」

ドア越しにパジャマの用意を知らせる私。生返事をするはちこ。

「どうした?」とドアを開けて様子を見る。風邪をひいてるのかと心配になったからだ。ところが、はちこの様子はぴんぴんしてる。それどころか、ドアを開けた私を無理やり風呂の中へ引きずり込む。素早く服を脱がされて湯船に一緒に浸かる羽目になった。

「ふぅ、気持ちいい。」

「もー、料理冷めちゃうよ。」

「いいよ後でチンすれば。百合の作った料理は全部美味しいに決まってるからね。」

「この調子こいて!」

二人で対面になって湯船に浸かるので距離が近い。ちょっかい出すのもすぐできる。はちこのダイナマイトバストを揉みまくる。このこのっ。

「ちょwwwや、やめなってww んっ」

「何色っぽい声出してんだ。」

「も―弱点知ってるからって調子に乗んなよー」


そのうち冗談が本気になっちゃってキスやらもっとえっちな事もやっちゃう始末。

少し落ち着いたところでゆるーく風呂を過ごす。

冗談も言い合える仲。心も体も許し合う…心地いい時間。

私の心は幸せで満たされる。



風呂上がり。

私は出来ていた料理を温めなおす。

その間、はちこは片付け。


「ねぇ明日は金曜だしさどっか外食しない。」とはちこ。

「え、いいけど。」

「なんかデートっぽくさ待ち合わせとかしっちゃったりして。」

「いいね。やろうやろう。」

「プランはもちろん私に任せて。」

「任せます。」


同棲生活の基本的な収入源は、はちこにお任せしている。

彼女は今や社会人として働いているのだ。えらい。

私は大学に通いながらバイトをぼちぼちしているのではちこに甘えるのが上手になってしまった。反省しないといけないのだが、はちこは私にいいところを見せようと張り切って甘えさせようとしてくるのでなかなか断るのが難しいのだ。


ベッドはダブルベッドだ。シングルを二人で寝ようとしていたが、快眠には程遠い感じがしたので余裕をもってダブルにした。その代わり本棚だったり他の大きめの家具を買うことが出来なかった。そのまま買わずに一年過ごしたのでそろそろ収入スペースも確保したいところだ。


「今日も一日お疲れ様。」

「うん。まぁ仕事は大変だけどさ、こうして百合と一緒にいられるとなんていうか疲れが吹っ飛ぶって言うかさ。」

「照れる。まさかの栄養スキルもちだったとは。」

「違うよ。あれだよ…なんだっけ、えーとチーズみたいなやつ。」

「チートだ。」

「それ。百合はチート能力。私の全て。」

「なんかその言い方重い。」

「ひどい。めっちゃくちゃ私百合のこと想っているのに。」

「それはお互い様。私もはちこのこと好きだから。」

「知ってる。私も大好き。」


「おやすみ。」


寝る前のキス。

静かに就寝する私とはちこ。



×××


金曜日。

大学での講義を終えて、夜。

車や建物がライトを発して街が昼より騒がしくなる。

待ち合わせ場所に到着する。まだ三十分程時間がある。

「早すぎたか。」

スマホに目を通す。今や情報社会。私は現状の情報社会を嫌に思う。便利になったぶん不便というか恐怖も増えた。SNSでは男女の顔写真をアップする高校生の姿が散見される。リスクを理解してるのかなぁなんて意味のない心配をしてみたりする。その写真の返信コメントにはリア充爆発しろなんてコメントがあった。

前にも同じようなものを見た気がする。


デジャヴってやつ?


そのコメントは冗談のノリだと一発で分かるものでコメント欄は穏やかだった。

それにしてもなぁと考える私。それも以前考えたような気がして妙に笑えて来る。


遠くからはちこがやってくる。「おーい」なんて言いながらハイヒールなのに小走りで向かってくるのでひやひやした。捻挫しそうで怖い。

でもなんだかかわいいな。そんなはちこを見て私は思った。


想い人がいるって奇跡だよなぁ。


あれ、これも以前に考えたことあったような。

「お待たせ。」とはちこ。息が上がって黒髪が乱れてる。

アニメキャラみたいなアホ毛が出来上がっていておかしくなる。さっきのデジャヴのこともあって私の笑いの沸点は低くなっていた。


「ふふ。」

「な、なんか変? 走ったから髪が乱れてるとか…」

「ふふ何でもない。」

「なーにーきーにーなーるー」


私は笑った。

はちこといるときっとこの笑顔を絶やすことはないだろう。





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