短編「死後ノ夢見」(完)

不可世

一話完結

「誰もが夢の中では一人なんだ、死もそれと変わらないさ」

「では、夢はただの残像ではないと」

「ああ、最も死に近い体験さ」

「では夢を研究すれば、人は死の域を理解できる可能性があると、...言うこと!」

「その通りだ」

「夢、夢。。。しかしあまりに漠然としてます...」


「夢は第二人格なのさ」

「第二人格・・・?」

「君は眠りについた時、自己意識はあるか?」

「ありません、」

「無論、私もない。つまり第二の司令塔がいるという事だ」

「それは一体なんですか・・・?」

「本能だよ」

「まさか本能に意識があるのですか」


「君は前提条件を誤解してる」

「どういう事でしょう」

「人は生まれた途端から本能によって完成された姿なんだよ」

「では、私たちが身につけた術は・・・」

「そうだ、ただのお飾りさ、人はね、命の本質に触れる事は出来ないまま育ち、そして死ぬのさ」

「では私たちは何故生まれたのでしょう」


「分かっていないのか?」

「え?」

「私たちは主人公ではないんだ」

「それが意味することは・・・」

「そうさ、本能こそがこの命に抜擢された存在であり主人公さ」

「じゃあ私たちは・・・、」

「言ってしまえば、脇役、場を繋ぐだけの歯車であり、最後は知らされない」


「では本能は死後を知っているのですか?」

「死とはね予測限界のことだ、つまり知性ありしもの全てに生じるものだ」

「なるほど・・・」

「本能とは生命を司っている、心臓の動かし方、DNAへのアプローチ」

「はい。」

「つまり本能の機能に、予測できる知性があるという事だ」

「予測とは知性の証拠、そう言われれば、確かに第二人格があると信じてしまいますね」


「そうだね、人は知性がなくても生きてはいける、それが何よりの確証ともいえる」

「ありがとうございます、」

「いいさ、私たちは死で繋がれた同士、せいぜい生きてやろうじゃないか」

「はい!」

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