UFOを見る方法

マツダセイウチ

第1話

 小さい頃、父がよく夜の散歩に連れていってくれた。何故かは分からない。ただ、夜に町を歩くと野良猫に触れたり、母に内緒でジュースを買ってくれたりしたので幼い私は夜の散歩を楽しみにしていた。


 ある日の散歩中、偶然夜空に流れ星を目撃した。その綺麗さに感動し、もう一度見たくてしょうがなくなった。それ以来、私は散歩の時父の服のすそを掴んで夜空をずっと見ながら歩くことにした。父に「前を見て歩け」としょっちゅう怒られたが気にせず続行していた。


 私の住んでいた所はあまり沢山星が見れる地域ではない。流れ星は滅多に見られなかった。それでも流れ星ブームは加熱する一方で、私は暇さえあれば四六時中空の観察をするようになった。そのせいでよく転んだり壁や電信柱にぶつかっていたが、それでもずっと空を見続けていた。我ながら大した根気だと思う。


 ある日、私と弟は近所に住む祖母の家で晩御飯をご馳走になり、夜の道を2人で歩いて帰った。私は例によって夜空の観察に熱中していた。それを見た弟は「またやってる」と呆れていた。

 その道中、私は奇妙な星を見つけた。


 その星はやたら大きくて、小さな太陽のようにギラギラと輝いて一際目を惹いた。

 あんな星あったっけ、と不思議に思って凝視していると、その星は突然動き出した。ものすごいスピードでジグザクに飛びながら北の空の彼方へ消えて行った。私に見つかって焦って逃げていったようにも見えた。私は驚いて、弟に

「ねえ、今の星すごくない?」

 と興奮気味に言ったら、

「はあ?」

 と返された。弟は見ていなかったらしい。


 家に着き、父に今見た奇妙な星の事を話すと、

「それってUFOじゃない?」

 と言われた。その頃よくテレビで心霊映像や超常現象の特集をやっていて、私も好きでよく見ていた。UFOの映像も見たことがあるが、存在については半信半疑でいた。でも実際に見てしまっては信じないわけにはいかない。私は熱狂した。流れ星ブームに加えUFOブームも到来し、首の骨が悲鳴を上げるまで空を見上げ続けるおかしな子供として日々を送った。

 その努力のかいあってこんな空気の汚れた空でも沢山流れ星を見ることができたし、なんとUFOを2回も見ることができた。結果が出てさらに意欲を増し、天体ブームはしばらく続いた。


 あれからどれくらい経っただろうか。大人になって、流れ星もUFOもめっきり見なくなってしまった。でもそれはあの頃の純真さや探求心を失ってしまったからではない。単に空を見ていられる時間がなくなってしまったせいである。あの頃のようにずっと空を見ていられれば、また流れ星やUFOに会えるはずなのに、と私は残念に思っている。


 UFOを見たことがないという人も大勢いるだろう。そういう人はきっと地面ばっかり見ているに違いない。生憎ながら地を這うUFOは私もお目にかかったことがない。


 このように、世の中には不思議なことって結構起きているものなのである。そんなものない、という人はただ気が付いていないだけなのだと思う。嘘だと思うなら今から毎日、首を痛めるまで空を見上げてみて欲しい。もし貴方が良い大人なら、きっと不審者として周りから遠巻きにされることだろう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

UFOを見る方法 マツダセイウチ @seiuchi_m

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ